一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

平成23年度 ダム工学会 研究発表会・講習会の開催報告

 

ダム工学会 学術研究発表会小委員会
講習会小委員会

 

 平成23年11月17日(木)に都内、星陵会館において平成23年度 ダム工学会 研究発表会・講習会を開催しました。発表会には77名の参加者を得て、午前部の研究発表会では、7編の研究論文の発表と質疑応答が活発に行われました。午後部の講習会では、3名の講師による講演を行いました。 



『研究発表会の部』

  発表論文は別紙に示したとおりで、基礎的研究関連2編、解析分野2編(地震関連1編、その他1編)、施工分野2編と幅広い分野からの研究発表が行われました。

  基礎研究では、天然の土コロイドを用いた凝集効果の室内実験により、@天然由来の凝集剤アロフェンが有効で、A超音波分散処理と攪拌処理を同時に行うことにより濁水を効果的に凝集できる等の結果が報告されました。この基礎研究は、貯水池の濁水長期化の対策に役立つ技術であり、実用化に向けたさらなる技術開発が望まれます。
  解析分野では、ダムの貯水と地震活動の関係について、ダムの貯水前後に発生した微小地震の長期間にわたる観測結果に基づき解析を行い、@時系列的な地震発生状況では貯水前後の地震発生数に大きな変化は見られなかったことやAb値による貯水前後での比較においても大きな変化が見られなかったことが報告されました。
  施工分野では、砂防ダムに使用される新粗石コンクリートの発熱特性の解析を行い、@使用する高流動コンクリートについて、発熱温度は温度が粗石に吸収されるため理論値より低くなり、粗石率に依存することやA発熱初期では粗石に発熱が吸収されるため遅く立ち上がり、後期は粗石や境界条件の影響を受けるため収束が早くなる等の結論が得られ、打設厚さ(リフト高)の増大に繋がることが期待されます。
  CSG工法では、施工中のCSG材の粒度分布が定められた範囲内にあることを確認して、合理的な施工管理を行うことが重要なります。そのため、飛躍的発展を遂げている画像解析技術に着目して、デジタルカメラで撮影したCSG材の画像解析による粒度分布の変動傾向を迅速に監視するシステムを開発し、当別ダムに導入を行い、成果を挙げていることが報告されました。
  また、基礎岩盤のグラウチング効果等に関する研究、堆砂対策工法の選定の体系化等、ダム施工やダム貯水池管理に役立つ技術についても発表されました。
  当日の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会が会場内で開催され、慎重な審査の結果、優秀発表賞として次の2編が選定され、優秀発表賞選考委員会田代委員長より賞状ならびに副賞が発表者に対して授与されました。

【優秀発表賞】    

「デジタルカメラ画像を用いたCSG材の粒度変動監視システム」

鹿島建設梶@技術研究所  藤崎 勝利

「徳山ダムにおける微小地震観測」

(独)水資源機構 総合技術センター
曽田 英揮

論文発表風景
会場風景
優秀発表賞 受賞風景



『講習の部』

  講習会小委員会では、毎年、若手技術者を対象として講演を実施しています。 今年は、3名の講師を御招きし、頻発する自然災害(東南アジアでの洪水に関して)、巡航RCD工法や「環境防災学」の構築について講演して頂きました。

『最近の世界の大洪水と構造物・非構造物対策の方向性 』

(独)国際協力機構 客員専門員
  竹谷 公男

『湯西川ダム本体工事における 「巡航RCD工法」 の適用』

国土交通省関東地方整備局 湯西川ダム工事事務所 所長
  高橋 政則

『環境防災学とは何か』

富士常葉大学 名誉教授
  竹林 征三

  竹谷 公男講師からは、頻発する近年の自然災害、2009年のマニラ首都圏の洪水、 2010年のパキスタンインダス川の洪水、2011年10月初めにタイ中部を中心に発生した タイ洪水の浸水被害状況、緊急対応のための提言などのお話でした。
 特にタイ洪水では、日系企業が多く入居するアユタヤ県の工業団地が冠水し、大きな 経済的影響が出ている所です。また、竹谷氏は日本政府の専門家による調査団に参画し、被害状況や復旧に向けた支援活動の状況、我が国による支援ニーズなど短期及び中・長期的観点からの講演でした。

 高橋 政則講師からは、湯西川ダム本体工事における「巡航RCD工法」の採用についての適用目的から、工法採用の経緯、工法採用検討、種々の施工効率化の課題克服事例、技術開発、「巡航RCD工法」の効果、同工法適用時の施工計画上、施工時、仮設備・施工 機械計画上での留意点等、詳しい細部技術や今後の課題のお話しでした。

 竹林 征三講師からは「環境防災学」の構築に向けてのテーマで、 9月初旬台風12号による発生した「天然ダム」を「土砂ダム」と間違った用語の使い方から始まり、「わざわい」とは何か、災害の分類とその概要、東洋と西洋の自然観から自然とは、「環境」の概念、環境とは四周に「つつみ」を築くこと。また、日本列島の過去からの種々の災害事例、我が国のエネルギー問題、日本文明の強靭性の根源、中国の政治家 范仲淹の「色即是空」等 学問的、博学多識のお話しでした。

 今回の3名の講師のお話を通して、「治水と灌漑(利水)」事業は我々の安定した生活を築くため、永遠の戦いであると思いました。

竹谷公男 講師 高橋政則 講師
竹林征三 講師

 

 

   

発表論文一覧

1.「砂防堰堤における新粗石コンクリートの発熱特性に関する研究」

◆岩田地崎建設(株) 技術部
  須藤 敦史

2.「デジタルカメラ画像を用いたCSG材の粒度変動監視システム」

◆鹿島建設(株) 技術研究所
  藤崎 勝利

3.「ダム基礎岩盤の熱水変質とグラウチング効果」

◆国土交通省 九州地方整備局大分川ダム工事事務所
  石戸 善明

4.「グラウチングによる岩盤の力学的改良効果に関する実験的研究」

◆(株)間組 土木事業本部土木設計部
  宇津木 慎司

5.「堆砂対策工法選定の体系化の試み」

◆(財)ダム水源地環境整備センター 研究第二部兼調査部
  太田 耕一

6.「貯水池濁水処理における土コロイドの凝集特性」

◆(独)土木研究所 水工研究グループ水理チーム
  海野  仁

7.「徳山ダムにおける微小地震観測」

◆(独)水資源機構 総合技術センター
  曽田 英揮

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