研究発表会では、施工中の環境保全、基礎岩盤評価各1編、耐震4編に関する計6編の発表が行われました。
発表論文の概要は、以下のとおりです。
1. 「スマートデバイスを用いた動植物・環境モニタリングシ ステムのダム建設工事への適用」
鹿島建設技術研究所 地球環境バイオグループ 越川 義功
ダム建設工事において現場技術者が実施する動植物・環境モニタリングを支援するために開発した、タブレット専用アプリとクラウドサーバーとを連携させた「いきものNote」について、運用実績と環境保全に貢献する技術としての効果を検証した。
2.「打球探査法を用いた基礎岩盤面の岩級評価」
鹿島建設土木設計本部 地盤基礎設計部 尾口 佳丈
基礎岩盤面の評価において、ハンマの打音検査に加えて,岩盤の弾性係数を原位置で定量的かつ迅速に測定できる打球探査法を用いた岩級評価を実施した。同方法により得られた結果について評価し、その適用成果をとりまとめた。
3. 「渡邊・馬場CD・CU法による2つのフィルダムの地震時沈 下から崩壊に至る極限解析と評価」
芝浦工業大学土木工学科 岡本 敏郎
2008年岩手・宮城内陸地震、2011年東北地方太平洋沖地震によって、石淵ダム、藤沼ダムでは堤体に沈下が生じている。本研究では、動的応答解析にこれら2つのダムの地震挙動を求め,土の強度をパラメーターとする残留変形解析を行い、その適用性について検証した。
4. 「農業用フィルダム既設地震計の微小振動観測記録への地震 波干渉法の適用と地震波伝播特性の監視」
国立研究開発法人 農研機構 農村工学研究所 黒田 清一郎
農業用フィルダムを対象とし、監査廊と堤体表面に設置した地震計の観測記録に対して地震波干渉法による時間領域の応答を抽出、その結果がダムの地震波伝播特性を表現するものであること、最大加速度数Gal程度の小規模地震、1Gal未満の非有感地震においても適用可能であること等について検証した。
5. 「ロックフィルダム堤体の地震波の伝播速度の検討」
埼玉大学理工学研究科 茂木 秀則
ロックフィルダムの試験湛水から現在までの12年間にわたる地震観測記録にNIOM法を適用し、堤体内の地震波の伝播速度の経時変化を検討した。強震動時における堤体の非線形挙動、およびその後の堤体の剛性の回復過程について検証した。
6. 「地震時におけるアーチダムの3次元挙動特性と再現解析」
(独)水資源機構総合技術センター情報グループ 坂本 博紀
アーチダムの地震時の3次元挙動特性を解明するため、同時多点計測による常時微動記録、3次元配置した地震計の小地震計測記録、中越地震の最大余震時の地震記録を整理・分析し振動特性を解析した。また中越地震の最大余震時(M6.5)におけるダムの挙動特性を、基礎地盤・堤体・貯水池の連成方法を改善した3次元FEM解析により再現した。
発表論文は、今後のダム施工における環境保全、基礎岩盤評価、耐震解析の検討に寄与するものと期待されます。
当日の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会が会場内で開催され、慎重な審査の結果、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 柳川委員長より賞状ならびに副賞が発表者に対して授与されました。
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