一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

平成27年度 ダム工学会 研究発表会・講習会の開催報告

 

ダム工学会 学術研究発表会小委員会
講習会小委員会

 平成27年11月13日(金)に都内、星陵会館において「平成27年度 ダム工学会 研究発表会・講習会」を開催しました。発表会には約70名の参加者を得て、午前の研究発表会では、6編の研究論文の発表と質疑応答が活発に行われました。午後の講習会では、3名の講師による講演を行いました。 

『研究発表会の部』

 研究発表会では、施工中の環境保全、基礎岩盤評価各1編、耐震4編に関する計6編の発表が行われました。

発表論文の概要は、以下のとおりです。

 1「スマートデバイスを用いた動植物・環境モニタリングシ    ステムのダム建設工事への適用」

      鹿島建設技術研究所 地球環境バイオグループ  越川 義功

ダム建設工事において現場技術者が実施する動植物・環境モニタリングを支援するために開発した、タブレット専用アプリとクラウドサーバーとを連携させた「いきものNote」について、運用実績と環境保全に貢献する技術としての効果を検証した。


2.「打球探査法を用いた基礎岩盤面の岩級評価

          鹿島建設土木設計本部 地盤基礎設計部  尾口 佳丈

基礎岩盤面の評価において、ハンマの打音検査に加えて,岩盤の弾性係数を原位置で定量的かつ迅速に測定できる打球探査法を用いた岩級評価を実施した。同方法により得られた結果について評価し、その適用成果をとりまとめた。


3. 「渡邊・馬場CDCU法による2つのフィルダムの地震時沈    下から崩壊に至る極限解析と評価」

             芝浦工業大学土木工学科  岡本 敏郎

2008年岩手・宮城内陸地震、2011年東北地方太平洋沖地震によって、石淵ダム、藤沼ダムでは堤体に沈下が生じている。本研究では、動的応答解析にこれら2つのダムの地震挙動を求め,土の強度をパラメーターとする残留変形解析を行い、その適用性について検証した。


4. 「農業用フィルダム既設地震計の微小振動観測記録への地震   波干渉法の適用と地震波伝播特性の監視」

     国立研究開発法人 農研機構 農村工学研究所 黒田 清一郎

農業用フィルダムを対象とし、監査廊と堤体表面に設置した地震計の観測記録に対して地震波干渉法による時間領域の応答を抽出、その結果がダムの地震波伝播特性を表現するものであること、最大加速度数Gal程度の小規模地震、1Gal未満の非有感地震においても適用可能であること等について検証した。


5. 「ロックフィルダム堤体の地震波の伝播速度の検討

               埼玉大学理工学研究科 茂木 秀則

ロックフィルダムの試験湛水から現在までの12年間にわたる地震観測記録にNIOM法を適用し、堤体内の地震波の伝播速度の経時変化を検討した。強震動時における堤体の非線形挙動、およびその後の堤体の剛性の回復過程について検証した。


6.  「地震時におけるアーチダムの3次元挙動特性と再現解析
    
    
(独)水資源機構総合技術センター情報グループ  坂本 博紀

アーチダムの地震時の3次元挙動特性を解明するため、同時多点計測による常時微動記録、3次元配置した地震計の小地震計測記録、中越地震の最大余震時の地震記録を整理・分析し振動特性を解析した。また中越地震の最大余震時(M6.5)におけるダムの挙動特性を、基礎地盤・堤体・貯水池の連成方法を改善した3次元FEM解析により再現した。

 発表論文は、今後のダム施工における環境保全、基礎岩盤評価、耐震解析の検討に寄与するものと期待されます。
  当日の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会が会場内で開催され、慎重な審査の結果、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 柳川委員長より賞状ならびに副賞が発表者に対して授与されました。

【優秀発表賞】    

地震時におけるアーチダムの3次元挙動特性と再現解析

    (独)水資源機構総合技術センター情報グループ    坂本 博紀

 論 文 発 表 風 景
 
会 場 風 景
 優 秀 発 表 賞 受 賞 風 景


『講習会の部』

 講習会小委員会では、毎年、ダム工学だけでなく様々な分野の講師をお招きして講演を実施しています。今年は、3名の講師を御招きし、構造物としてのダム長寿命化について、長安口ダム改造事業について、滋賀県の流域治水条例について講演して頂きました。

構造物としてのダムの長寿命化を考える
   土木研究所水工研究グループ  総括主任研究員      金銅 将史

長安口ダム改造事業の検討経緯と計画について
   四国地方整備局那賀川河川事務所 開発工務課長     白川 豪人

滋賀県の流域治水条例について
                    ダム技術センター 理事     美濃部 博

 金銅 将史講師からは、構造物の寿命とはという問いかけに始まり、構造物の寿命の概念の整理、耐用年数の設定例について講演の冒頭に紹介いただくとともに、長期供用ダムの実情として海外のダムにおける調査・分析事例や国内の詳細な点検での報告事例をもとにした分析結果及び対策事例、長寿命化を実現する維持管理、技術的研究として最近の取り組み事例と課題についてご講演いただきました。

 白川 豪人講師からは、長安口ダム改造事業の検討経緯と計画について、那賀川流域の特徴や過去の洪水被害、ダムにおける洪水調節ルールの変遷、またそれらを背景としたダム改造計画の策定経緯といった事業の背景から、現在施工中である施設改造工事の手順、技術的特徴についてご講演いただきました。

 美濃部 博講師からは、滋賀県の流域治水条例について、全国に先駆けて制定された政策の根幹をなす「地先の安全度マップ」の概要と特徴、流域治水政策の具体的な取り組みである「ながす」「ためる」「とどめる」「そなえる」対策について、制定までの歩みとともに実際の洪水状況との比較検証結果を詳細にご講演いただきました。

 

今回の3名の講師のお話を通して、我々が従事している「治水事業」に求められる将来を見据えた継続性の重要さを実感するとともに、先見性、行動力を持ち続けてダム事業に従事しなければならないと、より一層身の引き締まる思いをしました。
 

金銅 将史 講師

白川 豪人 講師


美濃部 博 講師

 
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