一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

平成28年度 ダム工学会 研究発表会・講習会の開催報告

 

ダム工学会 学術研究発表会小委員会
講習会小委員会

 平成28年11月24日(木)に都内、星陵会館において「平成28年度 ダム工学会 研究発表会・講習会」を開催しました。発表会には約100名の参加者を得て、午前の研究発表会では、4編の研究論文の発表と質疑応答が活発に行われました。午後の講習会では、3名の講師による講演を行いました。 

『研究発表会の部』

 研究発表会では、耐震3編、土木遺産登録への取り組み1編、計4編の発表が行われました。

 発表論文の概要は、以下のとおりです。

1.「ダムの振動特性の可視化による時系列変化の分析の試み

       国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部  小堀 俊秀

ダム堤体の健全性を把握するための指標として、地震動観測記録や常時微動計測から得られる振動特性(固有振動数等)に着目し、その微小な変化を含めた把握を容易にするため、伝達関数の時系列変化を視覚化する手法について事例分析を通じて検討した。


2.ダム門柱の耐震照査における3 次元ソリッドモデルの非線形動的解析手法の適用

          独立行政法人水資源機構 総合技術センター   佐藤 信光

レベル2地震動に対する詳細法によるダム門柱の耐震性能照査では、実耐力、実形状で耐震性を評価することが重要である。ここではダム門柱が有する課題に対処すべく、鉄筋コンクリートの損傷過程を再現できる3次元ソリッドモデルによる非線形動的解析をダム門柱の耐震性能照査に適用した。


3. アーチ式コンクリートダムにおける地震観測記録のNIOM解析

                埼玉大学理工学研究科  茂木 秀則

本研究はNOIM法を用いた地震波の伝播速度解析をコンクリートアーチダムの維持管理手法の一つとして展開することを目的に、矢木沢ダムにおける20113月までの地震波記録にNOIM法を適用して、堤体内のP波速度とS波速度の推移を検討した。


4. 鳴子ダムの選奨土木遺産登録に向けた取り組み

         国般財団法人水源地環境センター 研究第一部 徳岡 昭治

平成28年9月に鳴子ダムが土木遺産に認定されたが、ここでは平成18年に策定された鳴子ダムの水源地ビジョンのフォローアップの一環として、鳴子ダムの土木遺産登録に向けた取り組みについて発表を行った。

発表論文は、今後のダム施工における、耐震解析の検討や土木遺産の保存に寄与するものと期待されます。

当日の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会が会場内で開催され、慎重な審査の結果、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 小長井委員長より賞状ならびに副賞が発表者に対して授与されました。

【優秀発表賞】  

ダムの振動特性の可視化による時系列変化の分析の試み

国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部    小堀 俊秀

 論 文 発 表 風 景
会 場 風 景
 優 秀 発 表 賞 受 賞 風 景

『講習の部』

 講習会小委員会では、毎年、ダム工学だけでなく様々な分野の講師をお招きして講演を実施しています。本年も3名の講師を御招きし、管理ダムにおける技術的課題と今後の展望について、熊本地震における立野ダムの状況について、ダム技術に関する話題について講演して頂きました。

管理ダムにおける 技術的課題と今後の展望
            土木研究所 地質研究監       山口 嘉一

熊本地震における立野ダムの状況
   九州地方整備局立野ダム工事事務所 副所長   寺下 進一

ダム技術に関する話題
              ダム技術センター 理事       吉田  等

 山口 嘉一講師からは、我が国のダム事業及び技術の現況について、巡航RCD工法、台形CSGダム、ダム再生等の日本が世界に誇る技術を、これからのダム事業の中でさらに発展させていくことへの期待を冒頭にお話しいただきました。また今後の維持管理に関して、総合点検、長寿命化に関する取り組みや、海外長期供用ダムにおける技術的課題の実例、我が国における実例を交えて、管理ダムにおける課題を説明いただきました。ご講演の最後には、今後もダム事業に携わる関係者が、一丸となって課題解決へ向け頑張っていきましょうとのメッセージをいただきました。

寺下 進一講師からは、立野ダムの事業概要と工事進捗状況、熊本地震の発生状況について説明いただきました。特に熊本地震に関しては、もともと想定されていた断層帯が活動したこと、地震後における周辺の第四紀断層調査の概要や基礎岩盤調査、土砂の流入等も含めたダム機能の維持に関する調査結果について、技術委員会の資料をもとにお話しいただきました。特に検討にあたっては情報公開に努められていること、地域のニーズに寄り添った事業を進めていることを、立野ダムの技術的課題に対する協力のお願いとともにご講演いただきました。

吉田 等講師からは、ダム再生ビジョンの概要について、近年の地球温暖化に伴い雨の降り方が変化し「新たなステージ」に対応した防災・減災のあり方を導入すべきであると、「想定最大規模洪水」のキーワードとともに説明いただきました。また併せてダム堆砂問題についても、耳川や天竜川での取り組み事例をもとに、堆砂量の制限値の設定が必要であること、堆砂対策の技術開発が必要であることをお話しいただきました。最後にダム技術の展開について、熟練工不足への対応としてCSG海岸堤防や巡航RCD工法がヒントとなること、堆砂問題も含めたダム再生の対応として、DRY DAMがヒントとなることなど、将来のビジョンについてご講演いただきました。

今回の3名の講師のお話を通して、我々が従事している「ダム事業」の転換期が待ったなしの状況であること、これから実施するダム事業を通じその転換期の先にある、ダム事業の将来へ向けた課題の克服、技術の開発を力強く、効率的に進めていかなければならないと、より一層身の引き締まる思いをしました。またそのためにも、本会が情報や意見交換の場として活用されるように努めていくつもりです。


山口 嘉一 講師

寺下 進一 講師

吉田 等 講師

 
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