研究発表会では、耐震3編、施工技術1編、施工品質管理1編、堆砂対策1編、計6編の発表が行われました。
発表論文の概要は以下のとおりです。
1. 「ロックフィルダムにおける着岩処理の合理化
−湿式吹付け(SHOTCLAY)工法による施工−」
鹿島建設株式会社 技術研究所 上席研究員 上本 勝広
ロックフィルダムでは従来の着岩材施工では、スラリーを着岩面に塗布した後に、凹部処理として着岩団子を木槌などで凹部の奥までしっかりと突き固め、この凹部処理後にエアタンパで所定の厚さまで締固めを行ってきた。しかし、人力による締固めでは非常に時間と労力を要すること、熟練技術者の確保が高齢化のため難しくなってきていることから、湿式吹付工法による岩着処理の合理化を進めてきた。本報告では、殿ダム、大分川ダムのダム建設工事における本工法の施工実績について発表された。
2. 「ダムゲートの耐震性能照査における耐荷力特性の検討」
独立行政法人水資源機構 総合技術センター情報グループ 冨田 尚樹
古いダムゲートの耐震性能照査において、大型供試体を用いて現行基準に不足するT桁の耐荷力実験を行うとともに、3次元シェルモデルによる非弾性有限変位解析により耐荷力実験の再現解析を行い、現行基準に不足する構造部材を有するプレートガーダ構造の限界状態特性の検討を行った。
3. 「コンクリートダムのクラック進展解析における
解析パラメータの影響に関する基礎的検討」
国土技術政策総合研究所 河川研究部 大規模河川構造物研究室 佐藤 弘行
大規模地震に対する非線形解析としてクラック進展解析を行う場合、各種解析パラメータを適切に設定する必要があるが、減衰定数や破壊エネルギーのように、その値を適切に設定するのが容易でないものもある。そこで、これらパラメータ設定上の留意点を把握する目的で、減衰定数と破壊エネルギーを対象にそれらがクラック進展解析結果に及ぼす影響について調べた。
4. 「ロックフィルダムにおける地震観測記録のNIOM解析」
埼玉大学 理工学研究科 田那部 直也
本研究では徳山ダムにおける地震観測記録にNIOM法を適用して堤体や基礎岩盤の物性について検討を行った。その結果、(1)堤体中央部上区間では試験湛水中の貯水位の増加に伴う伝播時間の増加がみられ、(2)下区間では試験湛水による貯水位の増加の影響が小さく、単調に伝播時間が減少していることを示した。(3)またNIOM解析で得られた基礎岩盤のS波速度が、PS検層による推定値に整合する値であることを示した。
5. 「CSGの品質管理合理化を目指した新しい
品質管理手法の提案」
静岡県浜松土木事務所沿岸整備課 寺田 知史
浜松防潮堤では施工中のCSG防潮堤において、新しい品質管理手法として画像処理、RI水分計を活用した表面水量管理の自動化の取組みを実施している。本発表では「自動化システム」は,材料の粒度および表面水量を良好に測定し,変動傾向を概ね把握できることが報告された。
6. 「潜行吸引式排砂管による小規模貯水池における排砂実証試験」
国立研究開発法人土木研究所 水工研究グループ水理チーム 宮川 仁
土木研究所では、ダム貯水池の堆砂対策およびダム下流の流砂環境の保全・改善のために、貯水池の上下流水位差によるエネルギーを活用したフレキシブル管を用いた排砂手法(通称:潜行吸引式排砂管)の開発を行っている。本発表では、実際の電力および農業用水取水で利用されている小規模貯水池(沈砂池)において、沈砂池内の土砂を無動力で貯水池外(下流)へ排砂可能とした実証試験の内容について報告された。
発表論文は、今後のダム施工技術、耐震解析の検討、堆砂対策に寄与するものと期待されます。
当日の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会が会場内で開催され、慎重な審査の結果、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 小長井委員長より賞状ならびに副賞が発表者に対して授与されました。
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