研究発表会では、堤体調査1編、交渉手法1編、環境モニタリング調査1編、堤体安全分析1編の計4編の発表がありました。
発表論文の概要は以下のとおりです。
1. 「比抵抗探査に適したフィルダム堤体内のひび割れ深さ調査用注入 材料の検討 」
国土技術政策総合研究所 河川研究部 大規模河川構造物研究室 主任研究官 小堀 俊秀
フィルダムでは地震発生等により堤頂等にひび割れが生じた場合、貯水機能への影響を確認するため、ひび割れの分布範囲とともにその深度の効率的な把握が求められる。本研究では、フィルダム堤体に生じたひび割れの深度を非破壊で効率的に把握する手法として比抵抗探査の利用を考え、ひび割れ内への注入材料として適する材料について試験により検討した。
2. 「交渉ゲームによる事前放流補償交渉の構造化」
東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 西原 克哉
本研究では、多くの水力発電ダムを有する流域における事前放流補償の交渉を、交渉ゲーム理論の一種であるドラマ理論の枠組を応用してその構造化を試みた。交渉の参加者を河川管理者、発電事業者、流域住民の3者と仮定し、情報公開度と洪水発生前後で4つのシナリオを作成し、各々の状況下で最終的に得られる交渉結果を導出し、各参加者の利潤の差を定量的に評価した。
3. 「長良川河口堰におけるAIを活用したアユ遡上数自動計数システム の構築」
独立行政法人水資源機構 長良川河口堰管理所 環境課 主査 田中 幹大
長良川河口堰の魚道を遡上する稚アユの計数方法について、これまでの人の目視による手動計数を自動計数化するために、AIによる画像認識技術を用いた「アユ遡上数自動計数システム」を構築した。令和2年度の本システム試行運用において実用化レベルでの有効性が確認できたため、本システムの構築とその本格運用に向けたこれまでの取組みを報告した。
4. 「ロックフィルダム堤体の地震波の伝播速度の検討」
埼玉大学 理工学研究科 准教授 茂木 秀則
本研究では川上らによるNIOM法を用いた地震波の伝播速度解析をフィルダムの維持管理手法の一つとして展開することを目的に、奈良俣ダムにおける地震観測記録に同手法を適用して、堤体内のS波とP波の伝播速度を分析するとともに、2004年新潟県中越地震における伝播速度の経時変化に基づき堤体への影響を検討した。
発表論文は、今後、ダムの安全管理、洪水調節、環境モニタリング等に寄与するものと期 待されます。
4編の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会による審査が行われ、優秀発表賞として次の1編が選定され、優秀発表賞選考委員会 乗京委員長より発表されました。受賞者には、後日、賞状ならびに副賞が郵送されました。
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