一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

令和5年度 ダム工学会
研究発表会、特別講演会、講習会の開催報告


『研究発表会の部』

ダム工学会学術研究発表会小委員会

  令和5年11月16日(木)に「令和5年度 ダム工学会 研究発表会」を開催しました。
 本年度の研究発表会は、令和2年度以降の開催形式を踏襲し、特別講演会と同日に、研究発表会の発表、審査、聴講をいずれもオンラインで開催しました。発表者は6名、参加者は90名でした。

 研究発表会では、コンクリートの非破壊調査に関する研究、ダム安全管理におけるAI活用に関する研究、基礎岩盤評価の定量化に関する研究、アンサンブル降雨予測の洪水調節への適用に関する研究、ダム湖魚類相調査における環境DNA活用に関する研究、CGS材の品質管理技術に関する研究と、多彩な分野にわたり計6編の発表がありました。

 発表論文の概要は以下のとおりです(敬称略)。

1.「スラストブロックを対象とした赤外線サーモグラフィ法と衝撃弾性波法によるコンクリート調査に関する一考察」

東京都立大学 准教授
大野 健太郎

赤外線サーモグラフィ法および衝撃弾性波法によるコンクリートの損傷検出の適用性について、供用中のスラストブロック下流面を対象とし現地計測を実施した。その結果、可視画像および赤外線サーモグラフィ法による表面性状の分類、衝撃弾性波法による変状の有無や進展状況の評価、さらに弾性波の開口合成処理によるコンクリート内部の反射源の可視化やダム内部欠陥探査への適用の可能性が示された。

2.「AIを用いたダム安全管理用判断支援ツールの活用」

   国土交通省国土技術政策総合研究所 河川研究部 大規模河川構造物研究室 主任研究官  小堀 俊秀

ダムの漏水量、変形(変位)量、揚圧力等様々な計測データの変動からAIを活用して異常有無の判断を支援する「ダム安全管理用判断支援ツール」を開発した。判断支援ツールには、再帰型ニューラルネットワークのアルゴリズムの一つであるLSTM(Long Short Term Memory)を用いた。このツールはAI技術の専門的知識がなくても活用でき、経験が浅いダム管理者でも時系列データの分析から異常有無の判断を容易に行うことが可能である。

3.「川内沢ダムの堤体基礎掘削時における定量的な岩盤評価手法の適用」

西松建設(株) 北日本支社 川内沢ダム出張所 副所長
小野 雄司

マルチスペクトルカメラとシュミットロックハンマー等の現場計測の併用による定量的かつ簡易的な基礎岩盤評価手法を構築し、堤体基礎掘削に適用した。この手法により、従来地質技術者の専門知識が必要であった岩級区分評価を定量化し迅速に評価することが可能である。また、得られたデータはクラウドサービスを活用して共有でき、施工関係者等の間で迅速に岩盤状況を確認、協議等を行うことも可能である。

4.「アンサンブル降雨予測を利用した洪水調節操作の最適化に関する基礎的検討」

   京都大学大学院工学研究科
岡本 悠希

長時間アンサンブル降雨予測を用いて洪水調節操作の最適化を行い、特にダムの最大放流量を最小化する洪水調節操作について検討した。ケーススタディから、洪水調節開始流量がダムの最大放流量に大きな影響を与えること、一定量放流方式の最適化では予測雨量の上位〜中位メンバーを用いることにより最大放流量を小さくすることができること、洪水が近づくにつれ最適値の取り得る範囲が狭まり予測の信頼度が向上することが示された。

5.「ダム湖魚類相調査における環境DNA定量メタバーコーディングの有効性」

   山口大学大学院創成科学研究科 准教授(特命)
中尾 遼平

環境DNA分析の一つである定量メタバーコーディング法を用いて魚類相を明らかにし、ダム湖魚類相調査における有効性を検討した。本手法により、全国の24ダム湖に生息する魚類を網羅的に明らかにすることができた。また、四国の4ダム湖で河川水辺の国勢調査結果との比較を行い、環境DNA濃度から魚類の量的な推定が可能であることが示された。本手法はダム湖における魚類相調査のための有効なツールとなり得ると考えられる。

6.「成瀬ダムにおけるCSG材の表面水量の全量管理技術」

   鹿島建設(株) 技術研究所 土質・地盤グループ 副主任研究員
田中 恵祐

施工中のCSGダム堤体打設工事において、近赤外線水分計による含水率管理技術とAI画像粒度モニタリングによる粒度管理技術を導入し、CSG材の表面水量の連続評価を試行した。その結果、当ダムのCSG単位水量管理幅±15kg/m3以内に対し、本システムの測定結果と試験室配合結果はほぼ同等の値を示し、本システムによりCSG製造管理に必要な精度で表面水量を測定できることが示された。

これらの発表論文は、今後、ダムの調査・設計・施工・管理の各段階における品質管理や安全管理の高度化や合理化に寄与するものと期待されます。

6編の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会による審査が行われ、優秀発表賞として次の1編が選定され、表彰式が行われました。表彰式では、優秀発表賞選考委員会 乗京委員長より各研究発表に対する講評および審査結果の発表がなされ、ダム工学会 川崎会長より受賞者に賞状ならびに副賞が授与されました。

【優秀発表賞】

「アンサンブル降雨予測を利用した洪水調節操作の最適化に関する基礎的検討」

京都大学大学院工学研究科
岡本 悠希

ダム工学会 川崎会長 開会挨拶 東京都立大学 大野氏による発表
国土技術政策総合研究所 小堀氏による発表 西松建設 小野氏による発表
京都大学 岡本氏による発表 山口大学 中尾氏による発表
鹿島建設 田中氏による発表 優秀発表賞選考委員会
乗京委員長による
優秀発表賞の発表
ダム工学会 川崎会長による
優秀発表賞の授与
研究発表会開催報告
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『特別講演会の部』

ダム工学会学術研究発表会小委員会

 令和5年11月16日(木)に「令和5年度 ダム工学会 特別講演会」を開催しました。
 特別講演会は、令和元年度までは5月の通常総会後に開催していましたが、令和2年度以降は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため11月の研究発表会と同日の午後にオンラインでの開催としており、今年度もその形式を踏襲して実施しました。聴講者は90名でした。
 今回の講師は、(一社)岩の力学連合会理事長であられる京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻 岸田潔教授にお願いしました。

 岸田教授のご専門は、岩盤工学・地盤工学で、地表から地下深部に至るまでの地盤・岩盤および地下水の力学的・水理学的特性の解明の研究に携われています。
  また、ダム基礎、斜面安定、トンネル・地下空洞掘削などの実現場に即した研究にも取り組まれるとともに、「ダム総合点検」の専門家として多くの管理ダムへの指導助言も行われています。 今回は、「岩盤割れ目の流れとグラウチング」と題してご講演頂きました。

京都大学 岸田教授
「岩盤割れ目の流れとグラウチング」

1.岩盤割れ目の流れ

 ・Cubic Law (3乗則)/水理学的開口幅と力学的開口幅/光学的手法による開口幅の計測と透水試験/不均質な開口分布を有する割れ目の流体解析

2.岩盤割れ目のグラウト挙動

 ・低アルカリのグラウト材の開発/実験時に見られる注入圧の時間変化/フラクチャー壁面形状(ラフネス)の影響

3.グラウチング工法

 ・カーテングラウチングとは/グラウチング工法の考え方/GIN工法/μX線CTによる割れ目内のグラウトの可視化と注入の評価/CT結果のオープンデータ化/CT画像に対する機械学習による材料識別

4.割れ目の流れ:新たな取組

 ・花崗岩割れ目の透水試験/割れ目の透水性が変化するメカニズム/4連成シミュレータの開発と実装: iPSACC/Pressure solution within generated fractures/Structure evolution of created fracture/掘削に伴う割れ目の生成と長期透水性の検討/Description of numerical analysis/Results of excavation analysis/Permeability distribution (Long-term prediction)

5. まとめ

 ・カーテングラウチングとは/グラウチング工法の考え方/GIN工法/μX線CTによる割れ目内のグラウトの可視化と注入の評価/CT結果のオープンデータ化/CT画像に対する機械学習による材料識別
 岸田教授には、グラウチングに関連する幅広い話題を、丁寧にかつユーモアも交えてお話し頂きました。ダムに関わる技術者にとって大変有意義な講演であったと思います。

 ご多忙な中、資料を準備し講演して頂いた岸田教授に深く感謝いたします。
京都大学 岸田教授による講演
特別講演会開催報告
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『講習会の部』

ダム工学会講習会小委員会

 講習会小委員会では、毎年ダム工学だけでなく様々な分野の講師をお招きして講演を実施しています。本年は1名の講師を御招きし、ダムコンクリート圧縮強度試験の合理化について講演していただきました。

『ダムコンクリート圧縮強度試験の合理化』

一般社団法人 ダム技術センター ダム技術研究所 所長
吉田 等様

 吉田 等講師からは、施工研究部会での検討内容をコンクリート標準示方書ダムコンクリート編への反映させることを目的とした活動内容の説明がありました。まず問題意識として、圧縮強度の頻度や方法は永年変更されていないが、骨材設備やコンクリート製造設備の計量精度や連続監視技術の導入等技術が進歩していること、打設現場においても面的、連続的な施工管理が導入されており、コンクリート硬化後の点の管理から、フレッシュコンクリートの連続管理へシフトしている状況を鑑み、現状に即した圧縮強度試験への転換を目指したことが紹介されました。

具体的には過去のデータの整理により、示方書には「材齢91日における圧縮強度が十分に安定化した後は、フレッシュ性状が適切に管理されている状態では、早期材齢の圧縮強度試験の頻度を合理的に見直してもよい。」と反映されたことを紹介いただきました。また圧縮強度試験方法においても、従来のφ150oの供試体に対し、Φ125oの供試体の使用例が増えていること、遠隔臨場や録画による事後確認、公的試験機関での試験指定除外の提案等も紹介いただきました。

 また働き方改革への対応、熟練労働者減少への対応、カーボンニュートラルへの対応など、ダムコンクリートにかかわる課題と、あそれを解決するための取り組み事例についても紹介いただきました。

 今回の講師のお話を通して、ダムコンクリートの品質管理に関する最新の話題を知る良い機会となったとともに、産官学が連携して合理的な管理へ取り組むことの重要性について学ぶよい機会となりました。このような機会をより多くの皆様に提供するためにも、産官学が参加するダム工学会の本会が、情報や意見交換の場として活用されるよう努めていくつもりです。

吉田講師による講義
講習会開催報告
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