一般社団法人ダム工学会
 
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 令和6年度「ダムとダム周辺農業の関わり
 ―ダム×周辺農業 交流会 ―」開催報告



活性化推進小委員会 東北地区幹事


東北ブロックでは、ダム啓発活動の一環として、「令和6年度 ダムとダム周辺農業の関わり ―ダム×周辺農業 交流会―」を浅瀬石ダムおよび平川市農地にて、10月18日(金)、19日(土)に開催しましたので、報告いたします。

1.開催目的

本イベントは、①ダムの役割やダムの存在意義などを学生や地域住民に適切に情報発信すること、②農作業を手伝うことにより、高齢化や人手不足など労働力不足に悩む農業の人手不足を解消することの2つを目的とし、開催しております。

2.参加者およびプログラム

参加対象は、将来のダム技術者候補の大学生、大学院生とし、プログラムは、1日目にダム講義およびダム見学、2日目に農作業を体験するというプログラムで実施しました。

3.開催状況

【1日目:ダム講義及びダム見学】        

 まず、講義1として、国土交通省 東北地方整備局 岩木川ダム統合管理事務所 浅瀬石川ダム管理事務所所長の熊谷様より、浅瀬石川ダムの概要、施設について説明いただきました。次に、講義2として、ダム工学会活性化小委員会東北地区ブロックの丹羽委員よりダム概論として、学生に向けたダムの役割や構造などについて分かり易く説明いただきました。最後の講義3では、弘前大学農学生命科学部地域環境工学科 森洋先生から、ロックフィルダムの耐震性能照査方法について説明いただくとともに、2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)時の荒戸沢ダムの解析事例について、紹介いただきました。  
 これら講義により、学生だけでなく、日常、ダムに関する仕事をしている私たち技術者にとっても非常に有益な時間となりました。
 講義に引き続き、所長の熊谷様にダム天端、監査廊内をご案内いただきました。ダム天端の見学時に、ゲート点検の様子を見学することができ、学生達は、このような仕事もあるのかと驚いておりました。また、監査廊内では、計測機器やエレベータなどの付属設備の珍しさだけでなく、実際に放流している状況を間近で見て、その迫力に驚きの声を上げておりました。

【懇親会】

 1日目の夜は、学生と大学先生、ダム工学会委員で、懇親会を開催し、日ごろのダムに関する仕事等について、ざっくばらんに話合い、親交を深めました。
 懇親会終了時は、昨年に引き続き、ダム式万歳やダムLOVEポーズなどもお披露目し、昨年も本イベントに参加された学生は慣れた様子で万歳をしておりました。


【2日目:農作業手伝い】

 2日目の農作業手伝いでは、リンゴの葉取り作業の手伝いをさせていただきました。これは、リンゴの実がきれいに色着くように、日当たりの邪魔をする葉を取り除く作業です。この作業はリンゴの収穫のように成果が分かり易い作業ではないですが、リンゴを育て、販売するためには重要な作業となります。学生だけでなく、先生、実行委員も、黙々と集中して作業を実施しておりました。
 途中、天候が悪化してしまい、短時間の作業でしたが、1人で実施すると、2、3日かかるとのことで、大変感謝されました。青森の膨大なリンゴの木の量を想像すると、いかにこの作業が大変であるかは容易に想像ができました。また、機械やロボット等ができる作業でもなく、高齢化が進む農家にとっては、かなりの重労働であるだろうと感じました。

 その後、場所を室内に移し、リンゴ農家の収穫スケジュールや作業内容について教えていただきました。リンゴは一番手間がかかる果物であり、休みなく作業しないといけない割に値段も上がらず大変な農作物であるとのことでした。学生含め、知らない情報が多く非常に勉強になりました。  終了時は、参加した学生達から一言ずつ感想をいただき、学生にとって良い経験をする場を与えることができたと感じました。また、各先生からは次年度もぜひ開催してほしいと依頼もあり、今年度も成功だったと思います。

 最後に、梅田委員から、本イベントの振り返りや御礼を含めた閉会挨拶がされ、本イベントは終了しました。


4.まとめ

 今回の交流会は、将来のダム技術者候補である6名の学生および2名の農業従事者に参加をいただき、無事終了することができました。参加者からいただいた感想文は本報文の最後に掲載いたします。
       
 今回、ダム見学、農作業体験を通じて、学生に日常では経験できない経験をしてもらうことができました。
 1日目のダム見学ではダム天端や、ダム堤体内において、設置されている機器類やゲートを身近で見てもらうことができ、これまで机上でしか学んでいなかった部分を補完することができたと思います。
 2日目の農作業体験が大雨により限られた時間の実施となってしまいました。少ない時間でしたが、通常1人で実施した場合、2、3日かかる作業を2時間程度で完了させることができ、農家さんから大変助かったと感謝の言葉をいただきました。
       
 開催にあたりましては、国土交通省 東北地方整備局 岩木川ダム統合管理事務所、浅瀬石川ダム管理支所の皆様および、岩手大学農学部食料生産環境学科 山本清仁先生、弘前大学農学生命科学部地域環境工学科 森洋先生、農業生産法人㈱グリーンファーム農家蔵 乗田和耶氏、駒井優子氏には、ご多忙にもかかわらず、事前準備から当日の説明や案内など多大なご協力とご配慮をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

5.概要

<令和6年度「ダムとダム周辺農業の関わり
       ―ダム×周辺農業 交流会―」>


(1).開催日:令和6年10月18日(金)、19日(土)
(2).場所:ダム見学「浅瀬石川ダム」
       農業体験「青森県平川市」
(3).参加者:
   大学関係:8名(引率教員2名、学生6名)
   農業従事者:2名
   ダム工学会:5名
   その他:1名

4. 行程
(4).プログラム


項 目 時 刻 内 容 備 考
 1日目:令和6年 10 月 18 日(金)
集合

13:30

浅瀬石川ダム管理事務所
開会挨拶

13:30-13:35

開会挨拶 丹羽 尚人 氏
(活性化小委員会 委員)
講義1

13:35-13:55

浅瀬石川ダム概要説明など 熊谷 信朗 氏
浅瀬石川ダム
管理事務所 所長
講義2 13:55-14:15 ダム概論 丹羽 尚人 氏
(活性化小委員会 委員)
講義3

14:15-14:25

ロックフィルダムの動的弾塑性有限要素解析 森 洋 氏
弘前大学農学生命科学部
地域環境工学科
ダム見学

14:35-16:35

浅瀬石川ダム見学
移動

16:45-17:30

弘前市内宿泊場所に移動  
懇親会

18:30-20:30

   
 2日目:令和6年 10 月 19 日(土)
集合 8:00 グリーンファーム蔵
駐車場 集合
 
移動 8:00-8:30 平川市内農地に移動  
農業体験 8:30-10:30 農作業手伝い  
移動 10:30-11:00    
講義 11:00-11:45    
感想 11:45-11:55    
閉会挨拶 11:55-12:00   梅田 信 氏
日本大学工学部
土木工学科
解散 12:00

6.写真

 

講義状況 浅瀬石川ダム見学状況1 
浅瀬石川ダム見学状況2  浅瀬石川ダムでの集合写真 
懇親会でのダム式万歳 農作業手伝い1
農作業手伝い2 農家の方との集合写真

7.参加者による感想文

●岩手大学 3年 小岩史苑

2日間にわたるダム見学会並びに、農業体験の企画・運営をしていただき、ありがとうございます。ダム・周辺農業の交流会に参加して、とても有意義な時間を過ごすことができたと感じています。1日目では、浅瀬石川ダムにて、ダムに関する講義と堤体内の見学を行いました。ダムに関する講義では、難しく、わからない部分が多かったのですが、その後の堤体内の見学を行うことによって講義で説明されたことの理解が深まるとともに、プラムラインなど普通では見る機会のないダムのたわみを計測する設備などを見ることができて、とても貴重な体験をしたと思いました。農業体験では、弘前のグリーンファーム蔵のリンゴ樹園のお手伝いをさせていただきました。

 果物の中でも、リンゴが一番手間のかかるものだという話を聞いてとても驚いたのを覚えています。また、この活動の中で、農家さんがダムの専門家の方々との交流を通じて改めてダムが周辺の農業に与える影響や、大雨による洪水の被害を軽減していることを知る場面があり、私たち学生だけではなく、農家さんにとっても有意義な時間を過ごせたのではないかと思いました。
 今回の見学会、交流会で学べたことは、必ず将来役に立つことになると思いました。この度は貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。
   

●岩手大学 4年 千葉一輝

 今回のダム見学会では浅瀬石川ダムに訪れ、代表的な重力式ダムの構造や仕組みについて学ぶことができました。私は過去に岩手県内の御所ダム、山王海ダム、岩洞ダム、四十四田ダム、胆沢ダムを訪れたことがあり、いずれもフィルダムや複合したコンバイン式ダムであったため重力式コンクリートダムに訪れるのは初めての体験となりました。

 今回の見学会を通してこれまでに訪れたダムとの構造の違いや目的などを比較することができ、よりダムに対する関心を深めることができたと思います。始めに浅瀬石川ダムの概要説明やダム概論の講義を受けたことで、学んだダムの概要と実際に見たものを照らし合わせることができ、内容の理解が深まりました。また実際にダム提体の見学をしている際、監査路内でお酒の保存をしている様子を見ることができ、温度条件が変わりにくいことを更に上手く活用できないか考えるきっかけともなりました。二日目の行程ではリンゴ農園での農作業を体験させていただきました。農家の方からのお話を聞き、ダムが下流とそれに付随する農業に及ぼす恩恵について身をもって知ることができ、良い経験となりました。
        
 今回のダム見学会によってダムの知識を深め、私たちにもたらす利益を実感することができました。今後就職を機にダムに触れる機会が増えると思いますので、そのたびに知識を深め受益地に貢献できれば良いと思います。


●岩手大学 4年 伊藤大朔

 前回に続いて2回目の参加をさせていただきありがとございました。前回同様に非常に有意義な時間を過ごすことができたのではないかと感じています。浅瀬石川ダムの見学では、基本的な構造をはじめ、重力式ダムの規模の大きさと地域特有の気候に合わせたダム作りとその工夫について学ぶことができました。雪解けによる融雪出水の管理等についてはダムとしての防災の役割以外にも発電など利水補給による地域への還元はとても大きく、近年のエネルギー問題の解決へと繋がるのではないかと感じました。

 2日目の農業体験は体調不良のため、体験ができなかったのですが、生産者の方の生の声を聞くことの大切さや、りんご農家としての商品の見方などを聞くことができました。二日間ありがとうございました。

●弘前大学 4年 阿部陸

 先ずは、ダム×農業交流会を開催していただき、学びの機会を与えて下さった皆様には感謝申し上げたいと思います。ダムの内部構造を自分の目で見て、そして農業体験を行いましたが、この経験は私にとってダムの役割を深く理解するとともに、ダムが我々の生活や食の面でどれほど重要であるかを実感する機会となりました。

 今まで、浅瀬石川ダムを代表するような多目的ダムとしての治水や利水機能、その他数々の役割があること、また、ダムを建設する上での力学的関係等は大学で学んできました。しかし、これは机上の学びでしかなく、私の中での具体的なイメージがわかなかったです。そして、実際にダムを見てその大きさや放流量に圧倒され、よりダムに興味を持つようになりました。

 また、浅瀬石川ダム職員の維持管理に対する考え方は、すごく勉強になりました。なぜなら、ダムは造ったら終わりではなく、周辺環境の変化等様々な角度から問題がないかを検討している姿勢が見えたからです。今回のダム見学会を通して、多角的な視点から物事を捉える重要性を教えられたような気がしました。ありがとうございました。


●弘前大学 4年 佐藤亜彩名

 今回、ダム×周辺農業交流会に参加して、普段立ち入らないような場所を見学したり、他大学の方々やダム工学会の方々、農家の方々と交流することができて、大変貴重な経験ができました。特に浅瀬石川ダムでは、監査廊内を詳しく説明していただきながら見学し、漏水や地震計、放流の様子を間近で見ることができたのがとても印象に残っています。ダムに限らず、構造物は継続的に維持管理が行われているということは勉強していても、その具体的な内容や様子をイメージするのは難しいと感じていたため、実際に点検や計測が行われている場所を見ることで、より理解が深まったように思います。卒業後は水利構造物に関わる仕事に就くため、今回の経験を活かしていこうと思いました。

 2日目の農業体験は残念ながら悪天候であまり作業をすることができませんでしたが、リンゴの葉取りではつい集中してしまって楽しかったです。大学の講義でも農業実習はありますが、ダム見学をした後に農業体験をして農家の方の話を聞くことで、ダムの役割の一つである農業用水確保に関わる働きを実感できて良かったです。また、偶然ではありますが、農家の方と自分に共通の知人がいると分かり、どこにどんな縁があるか分からないため、人との関わりを大切にしたいと感じました。そのため、今回のように様々な方々と交流できる機会に参加できたことを嬉しく思います。ありがとうございました。
        

●弘前大学 3年 平岡修造

 最初の浅瀬石川ダムの概要説明では、浅瀬石川ダムのことについて知らないことばかりであったので、詳しく知ることができて良かったです。その説明の中で黒石市のみならず、青森市や弘前市といった青森県主要部分の上水道供給も図っていると聞き、とても印象に残っています。さらに、多目的ダムとして生活用水や工業用水、農業用水、水力発電など様々な役割を果たしており、青森県にはなくてはならない重要なダムであることを知ることができたと同時に、改めてダムの重要性を知ることができました。

 また、丹羽さんからのダムについての説明では、ダムの基本的な知識から詳細なことまで教えていただき、より一層ダムに関心を持つ良い機会であったと思いました。実際にダムの監査廊に入った時は、ダムの中にエレベータがあることにとても驚きました。他にも監査廊の中でお酒を熟成しており、ダムにはそういった役割もあるのかと興味深かったです。夜の懇親会では、その日に聞くことができなかった普段の仕事の事についてなど、就職活動中の私にとっては大変ためになるお話を聞くことができ、それらを今後の就職活動に活かしたいと思いました。2日目のリンゴの農作業体験では悪天候のため、長時間の作業はできなかったがそれでもリンゴ農家の仕事の大変さというものを知ることができた良い経験でした。

 最後に、今回のダム×農業交流会はダムに興味を持つことができるとても良い機会であるとともに、普段あまり関わることがない方々と交流することができる楽しい機会であったので、来年も開催されるのであれば是非参加したいと思いました。2日間、大変お世話になりました。ありがとうございました。

        

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