1.はじめに
ダム工学会活性化推進小委員会中部・近畿ブロックでは、地域活動の一環として、平成23年度よりダムの広報イベント「with Dam ★ Night」を開催してきました。
10回目となる今回は、新型コロナウィルスの感染予防のため、初めてのリモートによる開催となりました。例年タイトルには開催地名をつけていましたが、今年は「wDN at HOME お家でダム」です。以下に、開催概要を報告致します。
図1.1 中部・近畿ブロックが過去に実施したwith Dam ★ Night
開催日 |
イベント名 |
開催コンセプト |
会場 |
H23.12.8 |
with Dam ☆ Night in Kansai |
土木学会主催の「どぼくカフェ」と共催 |
京都大学 |
H24.6.3 |
with Dam ☆ Night in Kyoto |
国際大ダム会議京都大会特別企画 |
京都駅ビル |
H25.11.18 |
with Dam ☆ Night in Nagoya |
土木の日企画 |
名古屋大学 |
H26.9.11 |
with Dam ☆ Night in Osaka |
土木学会全国大会(大阪大会)との同日企画 |
グランフロント大阪 |
H27.8.27 |
with Dam ☆ Night in Fukui |
水シンポジウムと同日企画 |
AOSSA
(JR福井駅東口再開発ビル) |
H28.11.16 |
with Dam ☆ Night in Kobe |
- |
兵庫県私学会館 |
H29.11.14 |
with Dam ☆ Night in BIWAKO |
- |
シティホテル
美濃加茂 |
H30.11.14 |
with Dam ☆ Night in Kizugawa |
- |
名張産業振興センター
アスピア |
R01.8.22 |
with Dam ★ Night in BIWAKO |
水シンポジウムと同日企画 |
ピアザ淡海 |
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with Dam ★ Night at HOME パンフレット
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2.with DAM ★ Night at HOME
開催概要は以下のとおりです。
●開催日時:令和2年11月3日(火) 19:00~21:00
●プログラム:
19:00~19:05:開会挨拶(ダム工学会 小長井 一男会長)
19:05~20:55:映像配信
20:55~21:00:閉会挨拶(京都大学 角 哲也教授)
●番組出演者
司会進行:夜雀さん
コメンテイター:
京都大学 角教授
中部地整木曽川上流河川事務所 髙𣘺 所長
大阪府安威川ダム建設事務所 江原所長
水資源機構 関西・吉野川支社 佐々原副支社長
ダムライター/ダム写真家 萩原様
●ツイキャスによるライブ配信
●チケット代:500円(手数料除く)
配信したコンテンツは、以下の動画2編、スライドによる講演2編の全4編としました。
・中部・近畿地区において施工中のダム現場の様子を事前録画し動画で紹介
川上ダム(水資源機構) 安威川ダム(大阪府)
・今年7月の豪雨の際のダムの活躍事例として木曽川水系のダム操作の紹介
・普段目にすることのない海外の排砂バイパスの事例を貴重な写真を交えて紹介
各コンテンツの合間には、コメンテイターにコメントをいただく形式をとりました。
また、視聴者の皆様にも番組に参加いただく方法として、配信中にチャットでコメントを寄せていただく方法を採用しました。コメントいただいた視聴者の方には、抽選で景品をプレゼントすることとしました(これは例年恒例となっているダムビンゴに変わるイベントです)。
リモート開催ということで、東京カルチャーカルチャーをキー局として以下の箇所からの5元中継となりました。
・小長井会長ご自宅(会長あいさつ)
・京都大学(角教授)
・中部地整 木曽川上流河川事務所(髙 所長)
・萩原様ご自宅(萩原コメンテイター)
・建設技術研究所大阪本社(夜雀さん、江原所長、佐々原副支社長)
以下に配信内容の概要を記載します。
演 目 |
講演者 |
水資源機構川上ダムの現場見学 |
現場リポーター︓dasheloさん
(ダムマイスター(⼀般) 01-032) |
令和2年7月豪雨における木曽川上流ダム群の洪水時操作 |
中部地方整備局 木曽川上流河川事務所
髙𣘺 裕輔 所長 |
大阪府安威川ダムの現場見学 |
現場リポーター︓夜雀さん
(ダムマイスター(⼀般) 01-003) |
世界のダム堆砂対策巡り
スイスの排砂バイパストンネルから台湾/中国の土砂管理 |
京都大学防災研究所
角 哲也 教授 |
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ダム工学会小長井会長より、開会の挨拶がありました。
挨拶の中では、最近の激甚災害、特に豪雨災害がキーワードであること、(中略) ダムを自然と人工構造物に言い換えると、日本語では人工構造物は硬いイメージになるが、人工を英語で表すとartificialになり、アート、芸術、美術といった言葉が含まれ、今日の話の中で、そういった側面が覗けるかと期待を持って楽しみにしています。
といった内容の話がありました。 |
写真2.1 開会挨拶 ダム工学会 会長 小長井 一男氏 |
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写真 2.2 司会者 ダムマイスター
夜雀氏 |
写真2.3 ダムライター/ダム写真家
萩原 雅紀氏 |
① 水資源機構川上ダムの現場見学~
現場リポーター dashelo様
水資源機構が建設する川上ダムの工事状況について紹介をいただきました。現場映像では、UAVによる空撮、自動スライド型枠や利水放流管周りの打設状況の早巻き映像、タワークレーン操作室からの眺め、堤体コンクリート10万m3打設完了式等。
ダムマイスターdashelo様の現場リポートとして、骨材の貯蔵・運搬設備、バッチャープラント内部の中央制御室、建設時しか立ち入れない減勢池内等に加え、地震防災で有名な大村神社や川上ダムカレーについても紹介をいただきました。
映像終了後、佐々原副支社長様より、メモリアルストーン(骨材にお名前を書いていただいたものが堤体のどの位置に入ったかが確認できる)、「河の記憶」モニュメント(青山ハーモニーフォレストにて、川上川・前深瀬川の形を石で再現)の紹介をいただきました。
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写真2.4 川上ダム現場映像 |
写真2.5 現場リポーター dashelo氏 |
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写真 2.6 水資源機構 関西・吉野川支社
副支社長 佐々原 秀史氏 |
② 令和2年7月豪雨における木曽川上流ダム群の洪水時操作~ 中部地方整備局
木曽川上流河川事務所 髙𣘺 裕輔様
中部地整木曽川上流河川事務所の高 所長様より、令和2年7月豪雨における木曽川上流ダム群の洪水時操作についてご説明をいただきました。
まず、木曽川水系流域の概要、木曽川上流河川事務所とダムとの関わりやダムの統合管理、令和2年5月29日に締結された木曽川水系治水協定、木曽川水系の洪水調節機能の強化についての説明がありました。
次に、令和2年7月豪雨の概要として気象状況や河川水位、ダムからの放流状況、ダムの洪水時操作として、洪水調節容量を持つ多目的ダムや一時的に治水に活用できる容量を確保した利水ダムの洪水時操作により、下流の被害軽減に相当の効果があったことを説明いただきました。
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写真 2.7 中部地方整備局 髙𣘺 裕輔氏 |
③ 大阪府安威川ダムの現場見学 現場リポーター
夜雀 様
大阪府が建設する安威川ダムの最新の工事状況について紹介をいただきました。
現場映像では、材料の仮置き、大型重機による盛立材料の運搬、撒き出し、盛立といった一連の工事状況、洪水吐きの打設状況、バルブ室、転流工、特にバックホウによるリップラップ施工の妙技については、視聴者の皆さんから感嘆のコメントが数多く寄せられました。また、安威川ダムJVによるICT施工としてマシンガイダンス、転圧管理、最後に、超高層ビルあべのハルカスから安威川ダムが見えるといった驚きの紹介もありました。
映像終了後、安威川ダム建設事務所江原所長様よりリップラップ施工として、捨石張工、置石工といった安威川ダム特有のこだわりについての説明をいただきました。
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写真2.8 安威川ダム現場映像 |
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写真2.9 安威川ダムリップラップ試験施工 |
写真 2.10 安威川ダム建設事務所 所長
江原 竜二氏 |
④ 海外の排砂バイパス事例紹介
京都大学防災研究所 角 哲也様
京都大学防災研究所の角教授より、世界のダム堆砂対策巡りと題して、スイスの排砂バイパストンネルから台湾・中国の土砂管理についてご説明をいただきました。
まず、スイスの排砂バイパストンネルとして、スイス国鉄・SBBが保有しているPfaffensprungダムについて、トンネルの摩耗と花崗岩ブロックによる補修対策、Palagnedraダムについて、トンネルの摩耗と高強度コンクリートによる補修、クレスト部分の流木閉塞による、天端橋梁の架け替えといった珍しい事例の紹介がありました。
また、日本国内では見られない事例紹介として、Solisダム排砂バイパスにおける貯水池中央付近の呑口部構造、Mauvoisinダムにおけるアーチダムの嵩上げ、流水型のOrdenダムでは、貯水池内の上流部で牛が放牧されている状況の説明をいただきました。
次に、台湾の土砂管理として、曾文ダムの排砂バイパストンネル事例として、象の鼻と呼ばれる、貯水面から流入管が顔を出している大変珍しい写真の紹介、石門ダムではストックヤードとトンネルの連携についての説明をいただきました。
最後に、中国の土砂管理として、黄河流域のスケールの壮大さ、黄河におけるダム群の密度流排出、排砂方法の工夫の一つとして、小浪底ダム貯水池末端部での堆砂土砂に対する高圧水ジェット攪乱の説明をいただきました。
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写真 2.11 京都大学防災研究所 角 哲也氏 |
(2) チャットコメント
講演中は、140名の視聴者から数多くのコメント(コメント数:663)をいただくことができました。
ここで、コメントの一部を下記に紹介します。※画面右にコメントが流れます。
「川上ダムカレーの再現度高い!」
「木曽川水系の洪水調節に利用可能な容量が治水協定によって約2倍に増強!」
「(リップラップ施工)すごい!自分の手みたいに操れるんですねえ~」
「あのリップラップの施工動画は重要。あれを見たら自分もできるようになりたいと思う少年が出てくる!」
「アーチダムで堤体を越流させるのかー。」
「土砂のブレンディング技術ですね!」
「ダム、超々初心者ですが、とても勉強になりました。今日はありがとうございました。」
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写真 2.12 チャットコメントの様子 |
また、いただいたコメントの中から、抽選の上、8名の方に表2.2に示す景品をプレゼントさせていただくことになりました。
表 2.2 景品一覧 |
景品内容 |
数量 |
提供機関 |
今こそ問う 水力発電の価値 |
1 冊 |
ダム工学会 |
ダムの科学(改訂版) |
1 冊 |
ダム工学会 |
川上ダム美しいコア |
2 個 |
水資源機構
川上ダム建設所 |
丸山ダム
佳オリジナル
クリアファイルポストカードセット |
1 枚 |
佳 様
ダムマイスター(一般)03-046 |
安威川ダムカード
建設中 Ver.1~Ver.3
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3 枚 |
大阪府
安威川ダム建設事務所 |
3.さいごに
今回のwith Dam Nightは、初めてのリモート開催となりました。お住まいの場所に関係なく気軽に参加できるということで、より多くの方々に参加いただき(チケット購入者数151名)、広くダムの魅力を発信できたと思います。With
Dam Nightのひとつのかたちになったのではないでしょうか。
今後も、これまでの活動にとらわれず、様々な形でダム工学会の広報活動を行っていきたいと思っております。新型コロナウイルスの状況が落ち着けば、また現場見学会や会場でのトークショーなど、直接肌で感じることのできるイベントを開催したいと思います。
最後に、このイベントにご協力いただいた京都大学角教授、中部地方整備局木曽川上流河川事務所、大阪府安威川ダム建設事務所、水資源機構関西・吉野川支社および川上ダム建設所、大林組安威川ダムJVおよび川上ダムJV、萩原様、夜雀様、dashelo様、佳様等の関係者の皆様に対し、心からお礼を申し上げます。
開催報告PDF ダウンロード |
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