一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

 

 

   
 

行事報告

 
ダム工学会20周年記念シンポジウム

パネルディスカッション
「ダム工学の今後の発展と市民の期待」

質疑

          

○質問者
 戸田建設の水木と申します。今日は貴重なご講演あるいはパネルディスカッションでのご意見をお聞かせ頂きまして、どうもありがとうございました。
 私は、施工者なんですけれども、最近一年前に政権交代があって、私どもダム技術者として、ダムの必要性みたいなものをやはり情報発信していかなければいけないと常々思っておりまして、個人的にはいろんな面でいろんな人と会った時に、例えば先程、入江会長からありましたけれども、1000年ダム構想と言いますか千数百年前のダムが今でも使われているという様な事を言って、ダムの重要性みたいなものをアピールしたり、あるいは情報発信していこうと心がけております。
 一方、プライベートの話なんですが、つい最近家の近所の散髪屋に行ったら、散髪屋の主人と八ッ場ダムの話題になりました。利根川の問題って八ッ場ダムを一個作れば済むのかという話になって、私もダム技術者ですからわかったように、“基本高水”だ“計画高水”がこうだとか言ったんですけれども、実際問題、本当に八ッ場ダムが解決するというだけで、利根川の問題が解決するのかという事は説明しきれませんでした。
 基本高水だとか計画高水という話は今日も佐野先生から話がありました。有識者会議の中では、基本高水の見直しというか、もっと言い方を変えれば、河川整備基本方針、河川整備計画という話がさきほど佐野先生の方からありましたけれども、もう何十年と学者の方なり、あるいは行政の方が研究されたり、実績に基づいてなされてきたこの河川の計画というもの、例えば100年あるいは200年に一回の洪水に対処するというものが、ひょっとしたら50年に一回とか、70年に一回とか、そういうふうにしても良いんじゃないかという議論がされてるように思われます。つまり、国にお金が無いから河川の計画の基本的な所を変えていこうとされているのではないかということなのですか、その辺の考え方について、出来れば教えて頂きたい。もう一点、例えば外国ではそういった河川の計画が、どういうような取り組みをされているのか、もしお教え頂ければ教えて頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

○パネラー(中央大学 教授 山田 正)
 終わりの方からの質問から言いますと、オランダの高潮対策は1/10,000、つまり10,000年計画、テムズ川が1,000年計画です。それに対して現在マスコミを賑わしている八ッ場ダム絡みの総合的な治水計画は、30年ぐらいの計画です。これが全然国民に伝わらないという事ですね。つまり安全度から言うと日本は全然安全な国家じゃないということです。そうは言ってもいろんな制約があるので議論しなきゃいけないんですけど、例えば基本高水をもう一回見直すかというのを有識者会議で随分議論しましたけれども、基本的には、どこも見直さない。ここで有識者会議で議論したのは、河川整備計画に、ダムが入るか入らないかの、そういうものの見方、決め方のルールを明確にしようという事です。
 ただ利根川だけはちょっと例外でして、そこが話をややこしくしているんです。利根川も今、基本高水の計算をやっています。それは、私も昔の方に色々聞くと、はっきり言って昔はタイガー計算機の時代なんですね。河川の洪水流量を計算するためにいろんなパラメーターありますが、これらのパラメーターを変えたら、いつ終わるかわかんない永遠の計算になってしまうんですね。今ならすぐにできますよ。だからあの当時は、貯留関数法というので計算してるんですけど、5つパラメーターがあり、一つを自由に動かして、後は大体常識的な値で止めてるんですね。あとは調整して、それで流量を見積もっているんです。そのころはまだ、物理水文学という概念なんてどこにも無い時代ですね。一つの概念としてのモデルなんです。あまりにも水の出方が複雑ですから貯留関数法、つまり流量と貯留量の間にある関係を、ある流域ごとに見つけて、それから洪水の流量を出す、というやり方なんです。ところが、流域の物理特性によく慣れた今の目で見ると、そこに使われているパラメーターは、少し違うじゃないかということになってきた。昔は、物理性があるんなんて事、そこまで要求していない時代ですよ、例えばタイガー計算機の時代ですから、本当の流量は、貯留量の0.6325乗かもしれないけど、そんな難しい計算、簡単には出来ませんから、2/3乘にしておこうかとか、そうしなければ計算出来ない時代だったんですよ。私、よく覚えているのは、昭和49年に学部を卒業していますけど、ちょうど私ぐらいが、電卓を大学で割と気楽に使えれる環境が整い始めた時期で、昭和48年にシャープの電卓が出て、足したり引いたり掛けたり割ったりだけする電卓が登場しはじめた時代なんですね。だからそれ以前に作られた計画は、そういう目で見ざるをえない、それが利根川だった。だけど今なら、もういろんな計算が出来るから基本的には、同じようなモデルなんだけど、より現実に即して再計算してみようというのが今の現状です。ただそれ以外の所は、比較的最近に計画が出来ていますので、ダムを計画するときに新しい知見を加えられる。基本高水というのは、地域の安全度のインデックスです。それは動かせない。だけど現実の議論をするのは、河川整備計画で30年計画ですから、基本方針レベルの治水対策の議論をしている訳じゃないんで、そこがいつも、こんがらがられる。僅か30年ぐらいしかもたない計画を今議論している訳で、テムズ川の1,000年計画、オランダの10,000年計画、全くスケールが違う話だと言う事を国民が理解しないとまずいと思います。
 ついでに、2週間ほど前にオランダの政府の方が日本の荒川沿いのスーパー堤防を見に来ていました。彼らと会いましたけれども、スーパー堤防をジャパンダイクと名前を付けて、オランダでやってみようとって事になってます。日本の技術がオランダで使われて、一方日本ではやめるという時代に入ってきている。不思議な事になっています。

○コーディネーター(京都大学 教授 角 哲也)
  どうもありがとうございました。他はいかがでしょうか?

○パネラー(一般社団法人ダム工学会 会長 入江 洋樹)
 先程、米田先生が水力発電の話をされたのですが、実は、"with Dam☆Night"で竹村さんという我々の仲間ですけれども、水力発電でCO2を減らす計算をされておりまして、それで説明されたんですが、今、日本でダムで発電していけばほとんどCO2問題が解決する。その時に会場から「どうしてやらないんですか?」という質問が出て、竹村さんの答えが「私がこれを発表した時に、ある電力会社の方が来て、電力会社は原子力発電に取り組んでいるところなのに余計な事を言わないでくれ」と言ったそうなんです。今の電力会社の経営者は、要するに今日とか、今年とか、来年の経営が成り立つことが最大の関心事で、そんな先の事を含めて事業をやっていく視点が無いんですね、物凄い単視眼的なんです。今が黒字になるか赤字になるか大変で、今CO2のための水力発電をすると、おそらく赤字になるんでしょうね。
 しかし、CO2の問題に対しては良いんだと思うんです。だけれども、そういう事を言ってなかなか踏み込んでいけない訳なんでしょうね。ここの所は、やはり全般的に盛り上げていかないと、今実際に電力を供給してる電力会社だけだと決してそういう事になっていかないという時代になっているんだと思うんですね。そういうことで、全ての面で、先程先生が言われたように非常に単視眼的で物事が進んでるので、本当に大事なことはなかなか進まないっていう時代になっているんではないでしょうか。

 

 

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