一般社団法人ダム工学会 企画運営委員会
活性化推進小委員会 中国・四国ブロック 事務局
「平成23年度 中国・四国地区現場見学会・講演会」において、下記のとおり無事開催・終了いたしましたので、ご報告いたします。
1.開催期日 : 平成23年11月18日(金)
2.見学場所 : 香川県 新内海ダム(内海ダム再開発,建設中)
香川県 内海ダム(既設)
3.講 演 : 「コンクリートとサステナビリティ」
講 師 : 香川大学工学部 堺 孝司 教授
4.参加人数 : 43名
5.行程
08:00 |
集合@JR岡山駅 |
08:00〜10:00 |
JR岡山駅〜高松港
集合A高松港 |
10:00〜11:50 |
高松港〜土庄港
集合B土庄港 |
11:50〜13:10 |
昼食 |
13:10〜15:30 |
現場見学
新内海ダム→内海ダム
ダムサイト西側展望台にて現場一望、概要説明。
コンクリート製造設備、堤体コンクリート打設現場見学。
既設内海ダム見学。 |
15:30〜17:00 |
講演会
「コンクリートとサステナビリティ」
香川大学 堺教授 |
17:00〜18:35
17:00〜19:00 |
解散B土庄港
土庄港〜高松行きフェリー乗船〜高松港(18:35解散A)
土庄港〜岡山行きフェリー乗船〜JR岡山駅(19:00解散@) |
6.ダム概要
項 目 |
内海ダム(既設) |
新内海ダム(再開発) |
形式 |
コンクリート土石混成堤 |
重力式コンクリート |
堤高 |
21.0m |
43.0m |
堤頂長 |
143.0m |
423.0m |
堤体積 |
30,200m3 |
152,000m3 |
集水面積 |
3.7km2 |
4.8km2 |
湛水面積 |
0.01km2 |
0.08km2 |
総貯水容量 |
140,000m3 |
1,060,000m3 |
有効貯水容量 |
125,000m3 |
915,000m3 |
出展:「当別川総合開発事業 内海ダム再開発パンフレット平成23年版 香川県」より
7.見学会・講演会 開催報告
晴れの日が多いと言われる小豆島ですが、見学会当日は、時折雨が降るどんよりとした曇り空の1日となりました。
今回伺った新内海ダムは、香川県と小豆島町が、当別川総合開発事業の一環として、洪水調節、生活様式の変化(トイレの水洗化等)にともなう新規水道用水の開発と、流水の正常な機能維持を目的とする、多目的ダムです。
現在の内海ダムは、小豆島町(旧内海町)が昭和31年に完成させた水道専用ダムを、香川県が治水機能を併せもつ多目的ダムとして昭和34年に改築したもので、元々あった重力式コンクリートダムの堤体を嵩上げし、下流面に盛土をした後、表面に石張りのリップラップを施す「コンクリートと土石の混成堤」という、珍しい構造をしています。
出展:「当別川総合開発事業 内海ダム再開発パンフレット平成23年版 香川県」より
また、集水面積に比べ、洪水調節容量が非常に小さいこと、「コンクリートと土石の混成堤」は、越水に対して非常に脆弱なものであること、十分な非常用洪水吐が設置されていなかったことから、昭和36年の台風17号では、内海ダムの天端から越流し、堤体盛土の一部が洗掘される被害が発生しました。さらに昭和49年の台風8号でも、ダム天端からもう少しで越流する状況が発生しており、抜本的な治水対策が急務となっているのだそうです。
見学会では、そのような背景もご説明いただきながら、新内海ダム完成後は水没してしまう、歴史あるダムに思いを馳せながら、見学しました。
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【内海ダム貯水池】
天端から瀬戸内海が一望できる。
最低水位まで撤去し、新内海ダム完成後は水没する。 |
【内海ダム下流側、石張りのリップラップ部分】
奥に見えるコンクリートの堤体は、建設中の新内海ダム。 |
瀬戸内式気候で降水量が少ない小豆島町では、たびたび深刻な水不足に見舞われており、吉田ダム完成(平成9年)後もたびたび渇水に見舞われ、渇水対策本部の設置・節水に努めるなど、依然として厳しい状況が続いています。このように、治水・利水の両面から、ダム機能を増強すべく、新内海ダムの建設が進められているとの事でした。
新内海ダムでは、まずダムサイト西側に設置された展望台から、ダム建設現場を一望し、概要の説明をいただきました。
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【新内海ダム建設現場】
展望台より一望。左に見えるのが内海ダム。 |
【新内海ダム建設現場】
コンクリートを投入、バイブレータで閉め固める様子。 |
コンクリート製造設備は、自然の中にあっても目立たないように、との配慮で、濃いグレーに着色されているそうです。骨材プラントは、コンピューターで迅速、かつ正確に管理されているそうです。
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【コンクリート製造設備】
環境に配慮し、濃いグレーに着色されている。 |
【骨材プラント】
冷風で骨材を冷やし、7℃の冷水でコンクリートを練っている。 |
また、打設中の堤体にも立ち入らせていただきました。コンクリート打設工法はELCMで、下流に配置したクローラクレーンで打設されていました。工事の様子を間近に見せていただき、貴重な体験ができました。
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【コンクリート打設中の堤体】
監査廊を埋め込みつつ打設。ボーリング試験も行われていた。 |
【記念写真】
コンクリート打設中の堤体をバックに、記念撮影。 |
現場見学の後は、小豆島ふるさと村に移動し、香川大学:堺教授によるご講演「コンクリートとサステナビリティ」をいただきました。ダムのみならず、私たちの生活を支えてくれているコンクリート。コンクリート無くしては、現代の便利な生活は成り立ちません。 ところで、皆さんは「サステナビリティ」の意味、分かりますか?こたえは、「持続可能性」だそうです。コンクリートの材料も、地球の資源。乱用はせず、持続できるよう大事に使うことが大切だということを学びました。 工事において、環境への配慮は欠かせない項目。新内海ダムでは、積極的に景観に取り組まれており、周辺環境との調和のために、できるだけコンクリート部分が見えないよう、堤体下流側の修景盛土による緑化を行う予定だそうです。
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【堺教授によるご講演】
「コンクリートとサステナビリティ」 熱心に聴講する参加者の皆さん。 |
【修景盛土を実施した完成予想イメージ】
出典:「当別川総合開発事業 内海ダム再開発 パンフレット平成23年版 香川県」より |
最後になりましたが、今回の見学会開催にあたり、お忙しい中、貴重な時間を割いて見学会の案内・説明・質疑応答に対応していただいた「香川県小豆総合事務所」の皆様、「新内海ダム本体建設工事共同企業体」の皆様、貴重なお話を聞かせていただきました「香川大学」堺教授、ご後援をいただいた「日本コンクリート工学会四国支部」の皆様、その他ご協力をいただいた皆様に、心より厚く御礼申し上げます。
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