1.はじめに
ダム工学会活性化推進小委員会 中部・近畿ブロックでは、地域活動の一環として、福井市のAOSSA(JR福井駅東口再開発ビル)において、同日同ビルで開催された水シンポジウム(主催:第20回水シンポジウム2015 in ふくい 実行委員会)に合わせて、ダムの広報イベント(ダム情報公開広場、WDNF(with Dam☆Night in Fukui))を実施しました。
WDNについては、中部・近畿ブロックでは今回で5回目の開催となりますが、今年度実施したWDNFは、ダム工学会設立25周年事業の一環で企画したものです。
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AOSSA |
ダム情報公開広場のレイアウト |
表1 中部・近畿ブロックが過去に実施したWDN
開催日 |
イベント名称 |
開催コンセプト:会場 |
H23.12.8 |
with Dam ☆ Night in Kansai |
土木学会主催の「どぼくカフェ」と共催:
京都大学 |
H24.6.3 |
with Dam ☆ Night in Kyoto |
国際大ダム会議京都大会特別企画:
京都駅ビル |
H25.11.18 |
with Dam ☆ Night in Nagoya |
土木の日企画:名古屋大学 |
H26.9.11 |
with Dam ☆ Night in Osaka |
土木学会全国大会(大阪大会)との同日企画:グランフロント大阪 |
以下に、ダム広報イベントの実施結果を報告します。
2.ダム情報公開広場
福井市の周辺で、これから建設するダム、現在建設しているダム、長年に亘って管理・運用しているダム、発電しているダム等の情報を中心に、ダムの役割と魅力について、パンフレット・ダムカード・ダム写真・映像・書籍等で、詳しく説明しました。
■開催日時:平成27年8月27日(木)10:00~16:00(6時間)
■開催場所:AOSSA 1Fアトリウム
■公開内容:パンフレット、ダムカード、ダム写真、
映像放映、書籍など
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総合案内から見た
ダム情報公開広場の全景 |
足羽川ダム工事事務所のパネル |
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九頭竜川ダム統管のパネル |
福井県のパネル |
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電源開発のパネル |
北陸電力のパネル(左側手前) |
ダム情報公開広場の中央、写真等展示ゾーンでは、下記の団体から様々なダム情報を公開して頂きました。
・一般社団法人ダム工学会(総合案内)
・国土交通省近畿地方整備局 足羽川ダム工事事務所
・国土交通省近畿地方整備局 九頭竜川ダム統合管理事務所
(大野市からも資料提供あり)
・福井県土木部河川課
・福井県河内川ダム建設事務所
・西松建設株式会社(河内川ダム建設工事共同企業体より)
・電源開発株式会社
・北陸電力株式会社
また、 会場の奥にモニターを設置し、下記の映像を連続放映しました。
・九頭竜ダム(施工記録)
・私達の九頭竜川とダム
・福井豪雨映像アーカイブス(足羽川編・嶺北編・学術・ダイジェスト編)
・絶景 -ダムの空撮- (矢木沢ダム・奈良俣ダム・二瀬ダム)
・昨年実施したWDNOのニュース映像 等
会場となったAOSSAの1階アトリウムは、日常的に市民の憩いの場所となっているところで、当日の水シンポジウム参加者以外にも多くの市民が来場してくれました。かつて九頭竜川の発電所の建設に関わった経験のある方、東京から福井にUターンしてきたダムマニアの方など、ダムに関わりの深い方も多く、思い出話やダムへの思い・意見など、色々な話を伺いました。その中でも、平成16年7月の福井豪雨で友人や身内の方を亡くされた方々からは、足羽川ダムの早期建設を願う熱い期待の声が聞かれました。
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映像の連続放映 |
地域の方への説明 |
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資料を閲覧される来場者の方々 |
3.WDNF
夜の部のWDNFでは、食事をしながら、講演会、ダムビンゴゲーム等を楽しみました。
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WDNFのパンフレット |
■開催日時:平成27年8月27日(木)18:00~21:00(3時間)
■開催場所:AOSSA 3F 炭焼きステーキキッチン&バル
■プログラム:
18:00:開会挨拶(ダム工学会 濱口達男 会長)
18:10~:講演会(ダム四方山話 5題)
20:30~:ダムビンゴゲーム
20:50:閉会挨拶(京都大学 角哲也 教授)
■入場料:2,000円(軽食、フリードリンク込、学生半額)
■参加人数:99名(一般:95名、学生:4名)
(1)講演会
ダム四方山話と題して、福井県で、現在、計画しているダム、建設しているダム、管理・運用しているダム、発電しているダムについて、5題の講演を行いました。
①計画しているダムの話
~日本最大級の「流水型ダム」足羽川ダムについて~
国土交通省近畿地方整備局
足羽川ダム工事事務所 人見 剛
九頭竜川水系足羽川に計画されている足羽川ダムについて、事業の目的、ダムの概要、今後のスケジュールなどについて紹介がありました。まず、本事業の背景となった過去の福井市内の洪水被害、特に記憶に新しい洪水として、平成16年7月の福井豪雨の被害状況が説明され、次に、治水対策として建設される足羽川ダムの特徴として、平常時には水を貯留しない流水型ダムであること、間接流域からの洪水分水が行われることが説明されました。流水型ダムとしては、国内最大級であり、ダム高、洪水調節容量、湛水面積が日本一である足羽川ダムは、
現在、付替道路の工事が進められており、平成 38 年度末の完成を目指しているとのことでした。
②建設しているダムのはなし
~河内川ダムの現状について~
福井県
河内川ダム建設事務所 辻岡 孝彦
建設中のダムのはなしとして、福井県北川水系河内川に建設中の河内川ダムについて、建設現場の状況について紹介がありました。本ダムは、平成 24 年に着工し平成 25 年 9 月に掘削開始、平成26 年 10 月より打設を開始し、平成 30 年度の完成を目指し現在打設を継続中とのこと。ダム工事全体の施工の流れや転流の方法などについてフロー図や現場の写真を使ってわかりやすく説明されたほか、掘削やコンクリート打設に使用する建設機械なども写真により紹介され、ダム建設現場の臨場感が伝わる報告がありました。
③管理しているダムのはなし
~真名川ダムにおける弾力的操作について~
国土交通省近畿地方整備局
九頭竜川ダム統合管理事務所 村上 智文
ダム完成後 30 年を経過する真名川ダムについて、ダム下流の河川環境を多様化・向上させるための取り組みとして、弾力的管理を実施している内容について説明がありました。弾力的操作の方法や、弾力放流の効果を高めるために、水際をほぐしたり、置土を実施していることが紹介され、取り組みの結果、魚類の種類の増加や澪筋の固定化の解消など、効果が確認されたことについて報告がありました。
④発電しているダムのはなし
~河川維持流量を利用した仏原ダム発電所の概要~
北陸電力株式会社
福井支店大野電力部 吉池 朋洋
発電用ダムである仏原ダムが、河川維持流量を放流するために工夫した内容として、放流設備としてサイフォン管を採用したこと、この維持流量の放流水を活用した発電所を新設したこと、また、維持流量の確保と発電流量の調整方法についても説明がありました。これにより、仏原ダムでは新たに
220kw の発電が可能との報告がありました。最後に、仏原ダムの他に、北陸電力が保有する維持流量を活用した発電所について紹介されました。
⑤発電しているダムのはなし
~再生可能エネルギーにおける水力エネルギーの重要性について~
電源開発株式会社
九頭竜電力所 三谷 司郎
冒頭に電力需要における水力発電の役割や特徴、水車発電機の構造図を用いた水力発電のしくみについて説明が行われました。次に、九頭竜川水系における電源開発が保有する水力発電設備の概要と水系内の各ダム間の取水・発電の系統について説明が行われ、その中の一つである長野発電所について、設備の特徴や建設当時の工事状況が詳しく紹介されました。最後に、新たな水力開発として、現在施工中の「このき谷発電所」の概要について報告がありました。
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濱口会長 開会挨拶 |
国土交通省 人見氏 |
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福井県 辻岡氏 |
国土交通省 村上氏 |
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北陸電力 吉池氏 |
電源開発 三谷氏 |
(2)ダムビンゴゲーム
講演会に続いて、中部・近畿ブロックではお馴染みとなったダムビンゴゲームを行いました。
司会とダムの説明はダム愛好家の夜雀さんに、ダムの引き当ては京都大学の角教授にお願いしました。
【ダムビンゴゲームの手順】
・ビンゴゲーム開始前に、参加者にビンゴカードと 75 基のダム名のシールを配布。
・好きなダムを選び、そのダムのシールをビンゴカードに貼り付け、各自がマイダムビンゴカードを作成。
・通常のビンゴゲームの要領で、順にダムを引き当てる。
・引き当てられたダムの写真を、プロジェクタで示し、ダムの概要を説明。
・ビンゴを達成した方に、ダムに関連した賞品をプレゼント。 |
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参加者全員が楽しみにしていたダムビンゴゲームには、今年度も関係団体から多数の楽しい、美味しい、珍しい賞品の提供があり、大いに盛り上がりました。特に、ダムマニアなら一度は入ってみたいダムの横坑調査券は今回の目玉賞品でした。
ゲームが進む中、なかなかビンゴ決定者の数が増えませんでしたが、角教授が地元の九頭竜ダムを引き当てた瞬間、多くのビンゴ達成者が出て、ゲームは無事終了しました。
今回も、引き当てられたそれぞれのダムの説明は夜雀さんにお願いしました。原稿なしで瞬時に引き当てられたダムの詳しい情報を紹介してくれる夜雀さんのダム愛には、いつものように脱帽でした。
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ダムビンゴゲーム開始 |
ダムビンゴゲームに
盛り上がる会場 |
表2 ダムビンゴゲーム賞品
賞 |
商品内容 |
数量 |
九頭竜川賞 |
・サマーフェスタTシャツ |
1 |
・サマーフェスタキャップ |
3 |
・大野市伊藤順和堂の銘菓・いもきんつば |
5 |
足羽川賞 |
・横坑調査券、岩盤別岩片セット |
3 |
福井県賞 |
・河内川ダムJV作成ダムカードセット |
3 |
北陸電力賞 |
・タオル + ボールペン |
10 |
電源開発賞 |
・シャーペン + メモ帳 + クリアファイル |
3 |
日立建機賞 |
・建設機械のミニチュア模型(0.7m3級 BH 1/50) |
1 |
夜雀賞 |
・大野市南部酒造の銘酒・花垣 |
1 |
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九頭竜川賞
サマーフェスタTシャツ&キャップ |
九頭竜川賞
銘菓いもきんつば |
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足羽川賞
横坑調査券、岩盤別岩片セット |
福井県賞
河内川ダムJV作成
ダムカードセット |
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北陸電力賞
タオル + ボールペン |
電源開発賞
シャーペン + メモ帳 +
クリアファイル |
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日立建機賞
建設機械のミニチュア模型 |
夜雀賞
南部酒造の銘酒・花垣 |
(3)展示物等
講演会、ダムビンゴゲームを行った会場の奥では、各種ポスターや書籍の展示も合わせて実施しましたが、特に本邦初の「基礎地盤 きき石体験」を足羽川ダム工事事務所のご協力で実施しました。足羽川ダムの基礎岩盤で岩種と岩級が異なる岩塊を会場に持ち込み、岩検ハンマーで叩きそれぞれの音を体験してもらう試みでした。一般のダムマニアの方にとって聞いたことのない岩盤の音を、多くの方々に経験して頂きました。
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基礎岩盤 きき石体験 |
岩検ハンマー体験 |
また、ある意味定番となってきたダムカレーですが、今回のイベントでも、会場となったお店のご厚意で、オリジナルダムカレーが提供されました。
なお、参加者全員に九頭竜川ダム統管より、ダム紹介日本手ぬぐいが参加賞として送られました。
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オリジナルダムカレー |
参加賞(ダム紹介日本手ぬぐい) |
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京都大学 角教授 閉会挨拶 |
4.さいごに
今回のダム広報イベントは、初めて地方都市での開催となりましたが、水シンポジウムの開催に合わせたこと、開催地である福井市が色々な意味でダムに深い関わりのある都市であったこと等の理由で、多くの方々に参加して頂くことができました。ダム情報公開広場とWDNFを通じて、身近で楽しいダム情報から、最新の高度なダム情報まで、幅広く参加者の皆様に提供できたことを非常に嬉しく思っています。中部・近畿ブロックでは、今後も、さらにダム工学会の活性化に繋がる様々なイベントを積極的に企画して行きたいと考えています。
最後に、このイベントにご協力頂いた京都大学角教授、国土交通省近畿地方整備局、福井県、大野市、電源開発、北陸電力、西松建設、日立建機、夜雀さん等の関係者に対し、心からお礼を申し上げます。
以 上
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