【はじめに】
ダム工学会 若手の会は平成28年9月1日(木)から2日(金)に、八ッ場(やんば)ダムの建設現場、品木(しなき)ダム水質管理所において、ダム工学会若手の会「第3回ダムを知るための若手技術者勉強会」を開催しました。
若手技術者勉強会は、ダム見学とダムに関する講演を合わせて実施し、土木工学を勉強されている学生を対象にダムの魅力を知ってもらうことを目的に開催しています。
今年の勉強会では9大学・1高専から29名の学生に参加していただきました。当日は、天気にも恵まれ、大変有意義なものとなりました。開催内容について以下のとおり報告いたします。
【プログラム】
今回の若手技術者勉強会は以下のプログラムで開催しました。
日付 |
時刻 |
内容 |
備考 |
9/1
(木) |
8:30 |
池袋駅 集合 |
大型バスにて移動 |
10:40 |
高崎駅経由 |
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13:30〜
16:00 |
@八ッ場ダムの現場見学 |
・国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所
・八ッ場ダム本体建設JV |
17:00〜 |
A各大学の研究内容の発表会と意見交換会 |
宿泊:草津
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9/2
(金) |
9:00〜 10:00 |
B「ダムの基礎知識講座」 |
土木研究所 地質研究監山口 嘉一 氏 |
10:00〜10:30 |
C「CSG工法による防潮堤建設工事を見学」 |
若手の会 中野
朱美 氏 |
10:30〜11:30 |
D「ダムを取り巻く問題を考える」 |
岡山大学 名誉教授 阪田 憲次 氏 |
13:30〜14:30 |
E品木ダム水質管理所中和施設 |
・国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所 |
16:30 |
高崎駅経由 |
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18:30 |
池袋駅 解散 |
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1日目 9月1日(木)
【@ 八ッ場ダムの現場見学】
八ッ場ダムの建設現場は、堤体基礎掘削が粗方終わり堤体打設のための仮設備も一通り揃い、打設準備が着々と整いつつある状況でした。
はじめに堤体建設JVの事務所を訪れ、国土交通省八ッ場ダム工事事務所及び堤体建設JVの方に、八ッ場ダムのこれまでの経緯や役割、機能、そして、工事概要について説明していただきました。その後、バスで建設現場へ移動し、現場では堤体建設JVの方々より各所で説明と質疑応答をしていただきながら見学して回りました。
最初は、堤体左岸天端のバッチャープラントヤードよりコンクリート製造設備をはじめとするダムの施工設備を見学しました。ほとんどの学生は、ダムの施工設備を見るのは初めてでしたので、その規模の大きさに驚いていました。また、左岸天端からは堤体基礎掘削の状況を一望することができ、仮設通路上を歩いている現場作業員と堤体敷を比較してダムの高さや規模の大きさを改めて認識させられました。
次はバスで移動して骨材プラントヤードを訪れましたが、学生たちの目を引いたのが移動中の道路に延々と伸びている大きなベルトコンベヤでした。八ッ場ダムは骨材プラントヤードとコンクリート製造設備までの距離が長く、途中でトンネルを通らなければならないため、作業効率や環境面、安全面を考慮してベルトコンベヤで骨材を運搬します。
また、この長大なベルトコンベヤにも驚かされましたが、骨材プラントヤード設備の規模の大きさにも驚いていました。ここでは実際に原石山で採取して製造された骨材にも触らせてもらい、自身の手でその感触を確かめていました。
今回の見学ではダムの建設工事が地元や環境・安全に配慮しながら工事に取り組んでいる状況を見てもらうことができました。また、スケールの大きさとダムの魅力を肌で感じてもらうことができたと思います。次回訪れた時には堤体を打設しているところを見てみたいと思わせてくれる現場でした。
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ダム建設事業説明の様子 |
ダム本体掘削箇所の見学 |
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骨材製造設備の見学 |
JV事務所前での記念写真 |
【A 各大学の研究内容の発表会 と 意見交換会】
各大学・高専の学生が、研究室の紹介や研究内容について発表しました。どの研究室も真剣に研究に取り組んでおり、何十時間もかけて実験を行い、忍耐のいる研究をいている大学もありました。また、コンクリートカヌー大会や旅行などを通して大学生活を満喫している様子も伝わってきました。
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各大学の研究発表の後には、意見交換会を行い交流しました。 |
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意見交換会の様子 |
2日目 9月2日(金)
【B 講演「ダムの基礎知識講座」】
2日目は「ダムの基礎知識講座」という題目で国立研究開発法人土木研究所の山口嘉一様より発表をいただきました。発表内容は、はじめに、台風や集中豪雨により洪水が生じやすい我が国の自然条件や地形的特徴について、また、そのような環境条件においてダムは洪水時河川流量を調節し、下流域の洪水被害の軽減のために必要不可欠な治水構造物であることを紹介されていました。続いて、ダムが持つ他の役割(都市用水、かんがい用水、発電、渇水時における流水補給等)についての説明がありました。発表後半では、ダムの豆知識やコンクリートダムのできるまでの過程、ダムの健康診断(総合点検)等について紹介がありました。コンクリートダムが完成するまでには、計画・調査からはじまり、ダムの基礎掘削、基礎岩盤の検査と改良、骨材・コンクリート製造、ダムコンクリートの打設、ダムの安全と貯水池を管理する設備、試験湛水に至るまでの種々のプロセスが必要であることを紹介されていました。ダムの基礎全般について紹介いただき、参加した学生にとっては、ダム工学がまさに総合工学と呼ばれる所以を学習できた良い機会となったのではないかと思います。
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土木研究所 地質研究監 山口様 |
講演の様子 |
【C 講演「CSG工法による防潮堤建設工事を見学」】
次に、若手の会の中野朱美委員より、「CSG工法による防潮堤建設工事を見学」のレポートの紹介がありました。東日本大震災以降、想定される南海トラフ巨大地震への減災対策として、浜松市の防災計画の防潮堤には、ダム建設において開発されたCSG工法が採用されています。砂浜に防潮堤を築造するのに、現地発生砂をCSG材に活用することや地元企業が施工に携わることによってコスト縮減や工期短縮に繋がっています。さらに、コアとなるCSG材を盛土で覆うことによって、工事完了後も海岸防災林の再生維持が可能となります。このように、現地の環境に調和した取組みが行われており、地域と連携して防災事業が進められていると紹介がありました。
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若手の会 中野委員 |
講演の様子 |
【D 講演「ダムを取り巻く問題を考える」】
講演最後のプログラムとして岡山大学名誉教授の阪田憲次先生より「ダムを取り巻く問題を考える」というタイトルのもと、少子高齢化、地球温暖化とそれに伴う異常気象と災害の巨大化、インフラの老朽化の問題、そして原発の事故といった、これから若手技術者が担っていくことになる社会が直面する問題について、ご自身の経験を交えながらお話しいただきました。これからの社会の中核をなすのは、今日のような消費による豊かさではなく、足るを知る心の豊かさ、環境との共生であり、ダム事業はより重要なインフラとなるであろうとのことでした。先生の示されたこれからの土木技術者としての在り方は、未来への道標としてこれからを担う学生の皆さんの心に刻まれたのではないでしょうか。
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岡山大学 名誉教授 阪田様 |
講演の様子 |
【E 品木ダム水質管理所 中和施設】
管理ダムの見学では、国土交通省品木ダム水質管理所へ伺いました。酸性河川の中和事業説明を受け、中和工場の内部を見学しました。石灰ビンから絶えず攪拌水を生成し、河川へ放流し河川水の色が一気に変わる状況を確認することが出来ました。ダムの中でも水質改善を目的に設置された珍しいダムについて見学することができ、また、環境体験アミューズメントについても興味深く、時間が足らないことが残念なほどでした。
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中和事業説明の様子 |
中和施設の見学 |
【アンケート結果】
参加した学生にこの勉強会についてのアンケートを実施し、「全体を通して満足したか」という質問では、全員が「満足した」と回答しました。しかし、「ダム工学を知っていましたか」という質問では、約7割が「知らなかった」という結果でした。今回は学生を中心とした企画を実施し、参加者満足度の高い会となりましたが、今後もダム工学会の普及啓発に努めると共に、今以上に様々な世代、職種の方々にダムの魅力を知ってもらえるよう広報等のあり方を考えていく必要があります。
【終わりに】
参加の学生はダムの基礎知識を学ぶ共に、実際のダム建設現場を見学することで、そのスケール大きさを感じたと思います。また、日頃、接点のない方々と交流することができ、大変、有意義な2日間となったのではないでしょうか。
最後になりますが、国土交通省関東地方整備局 八ッ場ダム工事事務所、品木ダム水質管理所、八ッ場ダム本体建設JVの職員の方々をはじめ、協力いただいた皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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