1.【はじめに】
ダム工学会若手の会は、平成29年8月31日(木)から9月1日(金)に土木工学を勉強している学生および若手技術者を対象にダムの魅力を知ってもらうことを目的に「第4回ダムを知るための若手技術者勉強会」を開催しました。
若手技術者勉強会はダム見学とダムに関する講演を併せて実施しており、ダム見学は「八ッ場ダムの建設現場」および「品木ダム水質管理所」において実施しました。
今回の勉強会では7大学と2社の企業から29名が参加しました。大変有意義なものとなった若手技術者勉強会について以下に報告いたします。
2.【プログラム】
今回の若手技術者勉強会は以下のプログラムで開催しました。
日付 |
時刻 |
内容 |
備考 |
8/31
(木) |
8:30 |
池袋駅集合 |
大型バスにて移動 |
10:40 |
高崎駅経由 |
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13:30〜
16:00 |
@八ッ場ダムの現場見学 |
・国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所
・八ッ場ダム本体建設JV |
17:00〜 |
A各大学の研究内容の発表会と意見交換会 |
宿泊:草津市
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9/1
(金) |
9:00〜 11:00 |
B「ダムの基礎知識講座」 |
講師:ダム技術センター 安田 成夫 氏
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13:00〜14:30 |
C品木ダム水質管理所(中和施設)と品木ダム |
・国土交通省関東地方整備局品木ダム水質管理所 |
16:30 |
高崎駅経由 |
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19:00 |
池袋駅解散 |
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1日目 8月31日(木)
【@ 八ッ場ダムの現場見学】
昨年に引き続き八ッ場ダムの建設現場に伺い、現場見学を実施しました。昨年の見学時には堤体基礎掘削がほぼ完了している状況でしたが、今回は堤体打設が本格化しており、上流側では大型のクレーンを用いて放流管を構築している状況を見学しました。
はじめに本体建設JV の事務所を訪れ、国土交通省八ッ場ダム工事事務所及び本体建設JVの方に、八ッ場ダムのこれまでの経緯や役割、機能、そして、工事概要、高速施工方法である「巡航RCD工法」等について説明していただきました。その後、バスで現場へ移動し、本体建設JV
の方々より各所で説明と質疑応答をしていただきながら見学して回りました。
最初は堤体右岸天端のヤードに移動した後、対岸のコンクリート製造設備をはじめ、堤体の施工設備や施工状況について説明を受けました。残念ながら当日堤体打設の状況を見ることはできませんでしたが、多くの学生がダム施工現場のスケールの大きさに驚いていました。また現地での説明と実際の設備を見ることで、ダムの建設の過程や堤体打設の流れ、工夫点、品質・安全管理の仕方等がより具体的に感じられたのではないかと思います。
次はバスで移動して骨材プラントヤードを訪れましたが、堤体から骨材プラントまで続く骨材運搬用のベルトコンベヤに、多くの学生たちが関心を示していました。見学時には骨材が絶えることなく運搬されており、その能力や管理上の配慮点について説明を受けました。骨材プラントヤードは当日あいにく霧のため、設備全体を見通すことはできませんでしたが、原石が絶えず大型のダンプで運ばれて投入される様子に多くの学生が驚いていました。また実際に目にした原石から、見学施設におかれたダムコンクリートの骨材がどのように製造されるか説明をいただくことで、ダムができる工程のうちでも目に見えないが非常に重要な過程であることが実感できたと思います。
今回の見学で、ダムの建設の過程や施工管理だけでなく、周辺環境の整備や保全についていかに取り組んでいるかといったことが実感できたのではないかと思います。今回見学された参加者の皆様が、ダム完成後に再度八ッ場ダムを訪れた際、今回の視察の状況を思い出していただき、より一層感慨深く、また、ダム事業をより深く理解していただけたら幸いです。
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ダム建設事業説明の様子 |
ダム本体の施工状況の見学 |
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骨材プラントヤードの見学 |
八ッ場ダム本体建設JV事務所前での記念撮影 |
【A 各大学の研究内容の発表会 と 意見交換会】
各大学の学生が、自身の研究室を紹介し、また、各々の研究内容について発表しました。研究室紹介では、多くの学生が自らイベントを企画し、学生同士で交流を深める活動をしており、学生生活を楽しんでいる様子が伝わってきました。
また、研究内容の発表会では、ダムやコンクリートに関わる研究をしている学生が多く、有意義な情報交換の場になったのではないかと思います。
各大学の研究内容の発表後、意見交換会を行い交流しました。
2日目 9月1日(金)
【B 講演「ダムの基礎知識講座」】
2日目は、「ダムの基礎知識講座」という題目で、(一財)ダム技術センター技術第一部長の安田成夫氏に発表して頂きました。まずはフィルダム(アース、ロック)、コンクリートダム(重力式、中空重力、アーチ、曲線重力、バットレス)、台形CSGダムといったダム型式の特徴紹介からスタートしました。続いて実際のダム事業の進め方について、湯西川ダム建設工事事務所長としての経験を話されました。用地交渉は本体工事よりも時間がかかるため住民とのコミュニケーションが重要と紹介されました。後半では、歴史的な松原・下筌ダムでの反対運動(蜂の巣城)の経緯と対応の是非について話され、ダム建設では本体工事の大変さ以外にも水没者の生活再建をも実現するため、誰とでも話せる多様な引出しを持っていることが大事で、読書で疑似体験をする機会を持つことが有用というヒントを頂きました。参加した学生にとっては、ダムへの理解を深めるとともにダム事業全体についても学習できる良い機会になったのではと思います。
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(一財)ダム技術センター 安田氏 |
講演の様子 |
【C 品木ダム水質管理所(中和施設)と品木ダム】
管理ダムの見学では、国土交通省品木ダム水質管理所へ伺いました。酸性河川の中和事業説明を受け、中和施設の内部を見学しました。石灰ビンから絶えず攪拌水を生成し、河川へ放流し河川水の色が一気に変わる状況を確認することができました。中和施設を見学した後に、品木ダムへ移動し、ダム湖において堆積した沈殿生成物の浚渫作業風景を見学しました。モスグリーン色に映るダム湖からの放流水(発電施設を経由して放流)は透明できれいな状態であり、品木ダムによる貯水・浚渫効果が一目でわかりました。
八ッ場ダムの建設風景の後の管理ダムとして見学したため、参加した学生はダムの管理や堆砂の状況などを興味深く質問していました。
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中和施設の見学 |
品木ダムの浚渫作業の見学 |
3.【終わりに】
勉強会後に実施したアンケートにおいて、「生活を守るための不断の努力を垣間見ることができました」という回答をいただきました。この2日間の勉強会を通して、参加者の皆様には、ダムの役割やダム事業には多くの方が関わっていることを知っていただけたのではないかと思います。何事においても、ニュースやインターネットで観たりするだけでなく、実際に現場に行き、肌で感じることでわかることもあるのだと改めて思いました。
今後も現場見学を含めた勉強会を継続したいと考えておりますが、さらに、ダム工学会の学生会員が社会人になる時に、できるだけ多くの学生が正会員になってくれるような仕組み・取組みを提案していくことが重要であると考えております。
最後になりますが、国土交通省関東地方整備局 八ッ場ダム工事事務所、品木ダム水質管理所、八ッ場ダム本体建設JVの職員の方々をはじめ、協力いただいた皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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