1.【はじめに】
ダム工学会若手の会は、令和元年9月9日(月)から9月10日(火)にダムの魅力を知ってもらうため、土木工学を勉強している学生および若手技術者を対象に「第6回ダムを知るための若手技術者勉強会」を開催しました。
若手技術者勉強会は建設中と管理中のダム見学、グループワーク、ダムに関する講演を実施しており、ダム見学は三重県で建設中の「川上ダムの建設現場」および「比奈知ダム」、「青蓮寺ダム」を見学しました。
今回の勉強会では7大学と2社の企業、1自治体から17名が参加しました。大変有意義なものとなった若手技術者勉強会について以下に報告いたします。
2.【プログラム】
今回の若手技術者勉強会は下記のプログラムで開催しました。
日付 |
時刻 |
内容 |
備考 |
9/9
(月) |
10:00 |
新大阪駅集合 |
バスにて移動 |
13:30〜
16:30 |
@川上ダムの現場見学 |
・独立行政法人水資源機構
川上ダム建設所 |
17:45〜 |
Aグループワークと意見交換会 |
宿泊:伊賀市
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9/10
(火) |
9:00〜
10:00 |
グループワーク発表 |
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10:00〜
11:30 |
B講座
「木津川における土砂および河床地形管理」 |
講師:京都大学
教授 角 哲也氏 |
14:00〜
15:40 |
C比奈知ダムと青蓮寺ダムの見学 |
・独立行政法人水資源機構
比奈知ダム管理所
青蓮寺ダム管理所 |
17:30 |
新大阪駅解散 |
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1日目 9月9日(月)
【@ 川上ダムの現場見学】
最初に、川上ダムの建設現場を見学しました。現場見学に訪れた際には、本体基礎掘削が終わり、これから堤体コンクリートを打設する直前(減勢工コンクリートは一部打設開始)という状況でした。
大型バスにて水資源機構川上ダム建設所を訪れ、ここで水資源機構の担当職員の方々より川上ダム建設事業の経緯やダムの役割・機能について説明していただきました。次に工事の概要として施工概要と進捗状況の説明をしていただきました。
川上ダムでは、独自の取組としてCIM(Construction Information Modeling)を設計段階から取り組み、施工に反映されている説明を聞きました。説明の後、参加者一人ずつ簡易式のVRキットを配布し、スマートフォンで完成後のダムの状況を疑似体験しました。また本格的なVR体験設備を用いて完成後のダム通廊を歩く体験をしました。
この後、バスに乗りダムの右岸天端にある展望台へ行き、そこでは施工中の現場を一望することができました。堤体コンクリート打設間近ということもあり、クローラクレーンやコンクリート製造設備などの配置などを見たり、減勢工では現地作業が小さく映っておりダムの大きさを実感したりすることができました。右岸側から左岸天端へ移動し、大型の濁水処理設備を見学しました。
今回の見学では、堤体コンクリート打設を見ることができず残念でしたが、ダム工事が地元や環境・流域の安全に配慮されながら取り組まれていることを知れたことや、実際に現地に立つことでスケールの大きさとダムの魅力を肌で感じることができてよかったと思いました。
木津川水系で最後となる川上ダムの建設が始まる時を共有できた良い機会となり、水を湛える日が待ち遠しくなる見学会でした。
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ダム建設事業説明の様子 |
VR体験の様子 |
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左岸天端より現地見学の様子 |
右岸展望台にて記念撮影 |
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ダムサイト上流仮締切付近の広場より全景を望む |
【A グループワークと意見交換会】
グループワークでは学生同士の交流を深めることを目的に、川上ダムの現場見学を踏まえ、@ダムの長寿命化の考え方とそのための方策、A観光資源としての巨大構造物の活用、Bダム完成後の新たな活用についての3つの項目について検討し、発表してもらいました。
グループワークを通して様々な意見を共有し、まとめていく中でダムへの知識が深まり、興味を持っていただけるきっかけになったのではないかと思います。
意見交換会では各大学の学生が、自身の研究室や指導教員の紹介、各々の研究内容について発表しました。研究室紹介では、多くの学生が自らイベントを企画し、学生同士で交流を深める活動をしており、学生生活を楽しんでいる様子が伝わってきました。
また、研究内容の発表会では、ダムやコンクリートに関わる研究をしている学生が多く、有意義な情報交換の場になったのではないかと思います。
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グループワーク発表の様子 |
グループワーク発表の様子 |
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研究室紹介の様子 |
ダム式万歳 |
2日目 9月10日(火)
【B 講座「木津川における土砂および河床地形管理」】
2日目は、「木津川における土砂および河床地形管理」という題目で、京都大学教授の角 哲也氏に発表していただきました。基礎編として、流砂系総合土砂管理とダムの堆砂問題、ダム貯水池土砂管理の手法、ダム下流への土砂供給の必要性からスタートしました。ダムに土砂が貯まることで起こる問題や、現在進められている改善方策やダム堆砂対策の最前線の内容について講義していただきました。
続いて応用編として木津川の河道環境の変遷、河道環境にとって必要な土砂供給量の推定、ダムの長寿命化とのマッチング、川上ダムを含めた木津川ダム群の長寿命化について話していただきました。
参加した学生にとっては、ダム建設だけでなく、河川の総合土砂管理や環境面についても学習できる良い機会になったのではと思います。
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講演の様子 |
講演の様子 |
【C 比奈地ダムと青蓮寺ダムの見学】
1日目に見学した川上ダムと同じ流域内の木津川ダム群(高山ダム、青蓮寺ダム、室生ダム、布目ダム、比奈知ダム:愛称「木津川ゴレンダム」)のうち、比奈知ダムと青蓮寺ダムを見学しました。両ダムは建設した時代は違うものの建設当時の記録映像があり、管理者の水資源機構から提供を受け、1日目のバスの中で上映しました。
見学は比奈知ダムから行いました。比奈知ダムでは概要説明を受けた後、普段は一般者が立ち入ることができない操作室を見学させてもらいました(ただし撮影はNG)。滅多に見られないダムの中枢部を見学できるとあって参加者は操作卓等に興味津々でした。その後、比奈知ダムの特徴である天端側水路を見学し、非日常の空間や天端側水路に通じる扉が潜水艦の扉のような水密構造でこれもまた興味津々でした。
次に青蓮寺ダムを見学しました。はじめに管理所の屋上で概要説明を受け、青蓮寺ダムの特徴である薄肉アーチ形状やキャタピラゲート等の構造を丁寧に説明していただき、その後、管理所内で放流状況のビデオ上映や実際にアーチ形状を肌で感じていただくため、キャットウォークの一部を歩いてみるなど、時間がない中で管理所の職員ほぼ総動員で対応していただきました。
両ダムの見学時においては、木津川ダム群を統括する木津川ダム総合管理所の所長及び管理課長が最初から最後まで随行され、所々で木津川ダム群の重要性や地域振興などの情報を提供していただくなど、非常に残暑厳しい中、木津川ダム総合管理所には限られた時間の中で最大限の現地対応をしていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
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比奈知ダムの天端側水路にて |
青蓮寺ダムでの概要説明 |
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参加女子皆さんで記念撮影(青蓮寺ダム) |
3.【終わりに】
勉強会後に実施したアンケートでは、「建設中のダムを見学できて貴重な経験となった」という回答をいただきました。参加者の皆様には、この2日間の勉強会を通してダムについて学び、実際に現場へ行き、ダムのスケールを肌で感じることができたのではないかと思います。
若手の会では、今後も現場見学を含めた勉強会を継続し、できるだけ多くの学生にダムについて興味を持っていただけるよう活動していきたいと考えております。
最後になりますが、独立行政法人水資源機構 川上ダム建設所、比奈知ダム管理所、青蓮寺ダム管理所の職員の方々をはじめ、協力いただいた皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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