一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

 

 

 

行事報告

 

ダム工学会若手の会
「第8回 ダムを知るための若手技術者勉強会」の開催報告
開催報告

 
活性化推進小委員会

1.はじめに  

ダム工学会若手の会では、令和4年1月11日(火)にダムの魅力を知ってもらうため、土木工学を勉強している学生および若手技術者を対象に「第8回ダムを知るための若手技術者勉強会〜ダム建設最前線!Dam×Digital〜」を開催しました。

令和元年度では実際にダムの現場に行き、見学を通してダムの知識を深めていただいておりましたが、令和2年度に引き続き、今年度も新型コロナウィルスの流行により、オンライン上での実施となりました。「第8回ダムを知るための若手技術者勉強会」では「ダム建設最前線!Dam×Digital 」と題し、建設現場の皆様のご協力のもと、3つ(南摩ダム・成瀬ダム・川上ダム)の建設現場をWeb上でご紹介いたしました。

当日までの大学や企業、法人団体等からの参加登録者は98名を数え、大変有意義なものとなった若手技術者勉強会について以下に報告いたします。

勉強会実施状況

2.プログラム

 今回の若手技術者勉強会は下記のプログラムで開催しました。当日は、日本ダム協会の中野氏に司会進行を務めていただきました。


3.概要 

ダム工学会 若手の会では、ダム見学・講演を通して、ダム事業の目的や効果、ダムの構造や施工、管理の方法など、様々な視点からダムについて学ぶ場を提供しております。

令和3年度のダム工学会若手の会では、昨年令和2年度にはコロナ感染予防の観点より実施できなかったダム現場見学を、オンライン上で実施しました。これは、当委員会のダム現場見学をとおして、ダムに関わる仕事の魅力を知っていただきたいとの思いを、(独)水資源機構 思川開発建設所・国土交通省東北地方整備局 成瀬ダム工事事務所・(独)水資源機構 川上ダム建設所、並びに、本体工事に携わる工事関係者の皆様が汲みとって下さり、実現することが叶いました。

冒頭には、学生目線で理解しやすいよう、まず、ダムの基礎知識についてのご説明から入り、続いて、南摩ダム(導水路・送水路含む)、成瀬ダム、川上ダムの順で、事業の概要、現場の状況、現場で活用している技術等、様々な観点からご講演いただきました。

また、各講演の後には「質疑・応答」の時間を設けて、参加者から自由に質問を受け付け、これに答えることでより理解を深めてもらうようなプログラムで実施しました。

ドア1 ダムを知ろう

 プログラムの最初のテーマは「ダムを知ろう」でした。まず、各現場講演に入る前段として、ダムとは何かという基礎的な知識について当委員会の委員であるニュージェックの新家氏から講演いただきました。ここでは、今回現場を紹介する南摩ダム・成瀬ダム・川上ダムの3つのダムのダム型式の違いについても簡単に説明を行うことで、ダム初心者でも理解しやすいような構成としました。

ドア2 南摩ダム

2つ目のテーマは、「南摩ダム」でした。現在、栃木県鹿沼市で進められている思川開発事業は、南摩ダムが建設される南摩川流域のみならず、思川支川の黒川及び大芦川流域を導水路で結ぶことで水資源を融通するというダイナミックな開発事業であり、これによって新たな水道用水の確保及び既得取水の安定化と河川環境の保全が図られるとともに、異常渇水時における緊急水の補給の役割も有しています。また、南摩ダムの洪水調節による洪水被害の軽減が期待されています。ここでは、(独)水資源機構思川開発建設所の大谷氏、竹内氏、梶谷氏の3名から、「思川開発事業の概要」、「南摩ダム本体建設工事の状況」、「思川開発導水路建設工事、送水路建設工事の状況」と題して、国内では事例の少ないCFRD(コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム)型式である南摩ダムの特徴から、現在のダム本体・導水施設の施工状況まで、現場写真や掘削機械の実機の稼働映像など現地でも中々見学できない部分の動画も交えてご説明いただきました。

ドア3 成瀬ダム

3つ目のテーマは、「成瀬ダム」でした。成瀬ダムは秋田県東成瀬村に建設中のダムですが、ここでは、国土交通省東北地方整備局成瀬ダム工事事務所の小山内氏から、「成瀬ダムの事業概要」と題して、現在の雪に覆われた成瀬ダムの美しい風景から始まり、事業の目的や成瀬ダムで採用されている台形CSGダムというダム型式の特徴等の基本的な話題から、SNSやバーチャル見学会等を通した広報活動の状況についてもご説明いただきました。次に、成瀬ダムJV工事事務所の神戸氏から、「成瀬ダムにおける自動化施工の取り組みについて」と題し、独自制作された動画を使用し、成瀬ダム施工現場のご説明、施工管理・品質管理における取り組みについてのご説明、また、採用されている最新技術の一つであるA4CSEL(クワッドアクセル)の開発の背景から使用状況等についてもご説明をいただきました。最後に、当委員会の委員である前田建設工業(株)の長友氏より、「画像粒度解析技術を用いたCSG材の粒度管理システム」と題して、成瀬ダムでも品質管理の手法として採用されておりますCSG材における画像解析技術について、稼働状況の動画を交え、ご説明いただきました。質疑応答では、無人の建設重機についての質問が複数寄せられ、参加者の皆様の関心の高さが覗えました。

ドア4 川上ダム

最後のテーマは、「川上ダム」でした。川上ダムは三重県伊賀市で建設中の重力式コンクリートダムですが、ここでは、(独)水資源機構川上ダム建設所の津久井氏から、「川上ダム建設の概要と今」と題して、事業の概要をご説明いただくとともに、現在試験湛水を実施している川上ダムの下流から上流にかけての空撮映像を使用し、仮設備や斜面対策工事などダム建設中の貯水池の利用状況を振り返りつつ徐々に水が貯まっていく様子をご紹介いただきました。次に、川上ダムJV工事事務所の小俣氏から、「デジタルを用いた現場の変革」と題して、川上ダム建設現場における高速施工やDXの取組みについてご紹介いただきました。タワークレーンのAIによる自律運転は、CIMや自動車に利用される障害物感知技術などを組み合わされることにより実現されておりますが、ドローン映像とデジタルツイン化した管理画面との比較によってその様子をわかりやすくご説明いただきました。

4.おわりに

プログラムの最後には、東京大学特任教授の川崎氏から勉強会の総括として、今回ご紹介いただいた3つのダム建設現場について振り返っていただきました。また、ご自身の研究でも高精度な降雨量・流入量等の気象・水文予測データを利用したダム操作の最適化について取り組んでいることにも触れつつ、ダム事業にはまだDXの余地があり、これによって、今後より一層求められるSDGsやカーボンニュートラルに貢献していくことができるが、そのためには産学官だけでなく一般市民も巻き込んで取り組んでいくことが重要であるとお言葉をいただきました。

勉強会の様子

勉強会後に実施したアンケートでは、テーマ・講演内容について「大変面白かった・勉強になった」、「良かった」との回答が多く寄せられ、勉強会を通してダムの魅力を感じていただけたのではないかと思います。また、オンライン開催により地方からでも参加しやすいといった感想もいただくなど、オンライン見学会のメリットについても実感しました。

若手の会では、今後もダムの最新の動向に着目し、まずは現場見学の可能性を模索しつつ、今回のようなオンライン上での勉強会という方法も含め、できるだけ多くの皆様にダムについて興味を持っていただけるような活動を継続していきたいと考えております。

最後になりますが、今回ご講演いただいた南摩ダム・成瀬ダム・川上ダムの皆様、若手の会実行委員の皆様、ご協力いただいた皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 
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