一般社団法人ダム工学会
 
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ダム工学会"with Dam☆Night"開催報告

             川崎秀明(正会員 山口大学工学部)
            北川正男(正会員 日本ダム協会)

1.開催の概要
 「with Dam Night(ウィズダム・ナイト)」は、昨年度にダム工学会20周年特別企画の一つとして企画され、2010年10月末と11月末の四夜わたって開催され大変な好評を得た自由参加型イベントであった。
 今回は、ワンモアリクエストに答えて、会場も変えて1回限りのイベントとして10月31日(月曜)に東京都中央区の日本橋社会教育会館において開催された。
 なお、with Dam Nightの主旨は、市民・ダムファン、技術者・研究者の交流を通してダムに関する科学的基礎知識や情報を社会に適切に伝え、さらには多くの方々がダム見学に出かけるための「ダムへの架け橋」になることを目指すものである。
 今年のテーマは「ダムの底力」としたが、その背景として、東日本大震災の大被害や原発事故の未曾有の国難の中、ダムという重要かつ多目的なインフラを通してより良い日本の将来に向けて少しでも貢献しようという狙いがある。従って、水力、再開発、耐震、治水など多岐にわたって含むものである。
 開催日時は予定の立てやすい週初めの月曜日で仕事帰りの方が気軽に参加できる18時15分〜21時15分までの3時間とした。軽食・ドリンクサービス付き、参加無料の一般公開シンポジウムという点も昨年と同様である。
 また、会場は設備が整っている東京都中央区管理の日本橋社会教育会館ホール(収容定員200名)で行うことができた。なお、遠隔地で参加できない方のためにリアルタイムのWEB中継を昨年と同様にダムファンtakane氏の好意により実施した。一部はインターネット動画サイト「USTREAM」に掲載されている。
 実施体制については、まず企画・構想を本稿著者2名が行い、ダム工学会活性化小委員会に立案し23年度予算を確保した上で、実行チーム(著者2名+糠谷勝彦氏)で事前準備を進め、本番に当たってはダム工学会・関係団体の約十名の支援を得て実施した。


図-1 with Dam Night2011の宣伝用パンフレット


2.各講演内容の紹介

  表−1に全体プログラムを示すが、専門家4人とダムファン2人の計6名の講師陣によって3時間にわたって熱気あふれる講演が実施された。今回のテーマである「ダムの底力」は、未曾有の国難の中で、ダムの機能の総力を持って世の中に訴えるというものであり、各講演の内容も多岐にわたるものとなった。
 各講演内容を以下に簡単に紹介するが、柳川副会長の挨拶に受けて、まずは鈴木講師の「水力発電の底力」から始まった。鈴木講師は通産省の水力課長もされた水力発電の専門家であり、84歳とご高齢だがお元気であり現在もNPOとして水力発電の啓発に努められている。講演内容は、鈴木講師の長年の研究成果を反映したもので、水力発電がコスト的かつCO2排出的に非常に有利であるにも拘らず不当に低い評価にあることを訴えるとともに、今後も水力発電の開発余地は多くあることを示すものであった。
 2番目の吉田講師は、土木研究所のダム部長等をされた研究・行政面の専門家であり、現在はダム技術センターで現場の技術支援等をされている。「ダムをリメイクする」と題した講演内容は、再開発などダムリメイクの全国での実施事例や流水ダム(米国のDry dam)の現状を国内外で紹介するもので、最後に吉田講師のダムへの熱い夢を会場に語りかけるものであった。
 3番目のTakane講師は、昨年、今年のwith Dam Nightでインターネット中継をボランティアで実施してくれた恩人で、ホームページ「ダム日和」の主宰者としても有名である。「『思いのかけら』を集めよう」と題した講演内容は、ダムにおける一般に気づかれない諸発見が実にみんなの共感をうまく呼ぶものであり、最後の締めの「コンクリートから人に『伝わる思い』」では満場の拍手が起こった。
 4番目のふかちゃん講師は、全国1360ダム以上を訪問した猛者であり、マニア中のマニアと言える人で、ホームページ「Dam’s Room」の主宰者としても有名である。「様々な障害を乗り越えて」と題した講演内容は、今回テーマの「ダムの底力」にふさわしく、洪水、地震、社会情勢などダムがいろいろな困難を乗り越えて、治水・利水・発電機能を果たしている現実を示した。
 5番目の岡本講師は、建設コンサルタントで長年活躍されたダム設計の重鎮であり、ダム工学会副会長でもある。「水力の宝庫、ダム」と題した講演内容は、JAPICの水循環委員会メンバーで数年間研究されてきた成果をまとめたものであり、水力発電の開発可能性を全国の地域ごとに細かく積み上げることで、水力優先の開発可能性として原子力発電所の11基分の電力確保が容易であることを示した。
 最後の竹林講師は、国土交通省や土木研究所の幹部として活躍後に、富士常葉大学教授を10年以上務められ、現在はNPO法人「風土工学研究所」を主催されている。「“つつみ”と文明」と題した講演内容は、今年出版の話題の2著「環境防災学」と「ダムと堤防」を主材料に最新の研究も加えたもので、文明を語ることから始まり、環境、防災、水力、経済政策など多岐にわたる話題を新鮮な切り口で示した。


.実施の結果
 今回は、昨年度のノウハウを生かしつつ改善する形で進められたため、昨年と比べると非常にスムーズな運営となった。実施の結果を下記に簡単にまとめる。
(1) 会場: 会場は7階すべてを貸し切るものであり、ホール前のロビーは、受付・広報チラシ配布、参加者の歓談・軽食の場などとしても有効であった。また、社会教育会館側の協力もあり、音響・照明など機器トラブルも無く非常にうまく行った。「交通の便が良かった、雰囲気が良かった」という声が多く聞かれた。
(2) 経費: 各方面の協力を得て経費をかなり切り詰めることができ、費用対効果の非常に高いイベントになった。ちなみに、社会教育会館の使用料等は「4時間で27,900円」であった。
(3) 時間帯: 6時過ぎから9時過ぎという時間帯は、「時間的に参加しやすかった」等の意見が多く、概ね好評であった。また、昨年の経験から時間オーバーを懸念したが、講師陣のご協力とタイムキーパーの配置により、予定時間内にほぼ正確に収まった。
(4) 参加者: 当日参加者総数は131名であった。会場の余裕も必要であったのでほぼ適切な人数であったと言える。ダムファンも大勢詰めかけ、会員外の一般参加が70%、女性が20%近くを占めた。専門性の高いイベントではあるが、親しみやすい企画・運営により、一般公開シンポジウムとしてのwith Dam Nightは所期の目的を達成することが出来た。


4.まとめ
 昨年と今年の開催を通じて、外に向けての迎合ではなく、高い質と面白さを保って発信するためにwith Dam Nightなる手法が非常に有効であり、手法が定まればより合理的な実施が可能で関係スタッフの負担はかなり限定されることが判った。と言っても、マンネリ化を避けて新鮮味を保つことも重要であり、今後はダム工学会内の担当を新たにして、一層発展させることを期待したい。with Dam Nightはダム工学会で最も先鋭的なイベントであることを忘れてはならない。

 最後に、講師各位と団体各位(日本ダム協会、ダム技術センター、建設コンサルタンツ協会、電力土木技術協会、ダム工事総括管理技術者会等)の協力に大いに感謝するとともに、会場段取りを担当頂いた皆様およびご支援頂いた活性化小委員会各位に対して心からの謝意を表する。



 

写真−1 開演前の談笑風景、女性も多く参加した、夕食前に駆け付けた参加者のために軽食としてお茶類とサンドウィッチを用意した。
写真−2 開演時、ほぼ満席に近い状態となった、期待と緊張の様子が聴衆各位の表情に見られる。
写真−3 柳川副会長の挨拶でwith Dam Nightは幕を開けた。
写真−4 鈴木講師の「水力の底力」、写真はご高齢を感じさせないチャレンジングな内容を締める総まとめ
写真−5 吉田講師の「ダムをリメイクする」、写真は吉田講師の夢のダムの一つである米国の”Taylorsville Dam”
写真−6 takane講師の「思いのかけらを集めよう」、この後に心の琴線に触れる宝石のようなダム小話が続く
写真−7 人気随一ダムマニアである萩原氏による休憩時を利用した相模湖で今月19〜21日に開催予定のダムマニア展の紹介
写真−8 ふかちゃん講師による「様々な障害を乗り越えて」、よくぞ集めたという貴重な写真の数々であり、さすがマニア中のマニア
写真−9 岡本講師による「水力の宝庫、ダム」、写真は合理的かつ綿密な積み上げによる水力発電の今後開発可能性(原発11基分)を示した図
写真−10 竹林講師による「“つつみ”と文明」、写真はそもそも論から始まる文明論の始まり、この後、話は治水論、国家経営論、エネルギー論へと発展して行く
 

 

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