1.開催の概要
「with Dam Night(ウィズダム・ナイト)」は、市民・ダムファン、技術者・研究者の交流を通してダムに関する科学的基礎知識や情報を社会に適切に伝え、さらには多くの方々がダム見学に出かけるための「ダムへの架け橋」になることを目指すものである。
その最初は、ダム工学会20周年特別企画の一つとして2010年10月末と11月末の四夜(23講演)にわたって東京大学階段教室(東京都本郷)で延べ400人以上の観客を集めて開催された。大きな反響を得たことから、2011年10月31日(月曜)にはwith
Dam Night 2011(テーマは「ダムの底力」)が会場を変えて東京都中央区の日本橋社会教育会館において開催され、東日本大震災後の国難の中でのダムの真の実力をいかに発揮させるかの熱い様々な知恵が披露された。
また、関西版が2011年12月8日に京都大学講義室(京都市吉田)で土木学会との共催によって実施されて地域的な広がりを見せるとともに、2012年6月3日には国際大ダム会議京都大会に合わせて特別版が京都駅イベントスペースで開催され国際的に好評を得た。
今回のwith Dam Night 2013は、東京開催としては2年ぶりであり、6月28日(金曜)に2011年と同じ日本橋社会教育会館において「ダムドリーム」をテーマに開催した。
図-1 with Dam Night2013の宣伝用パンフレット
2.各講演内容の紹介
表-1に全体プログラムを示す。with Dam Night 2013では、ダムファン3人と専門家3人の計6講演のプログラムによって3時間にわたって実施された。今回のテーマである「ダムドリーム」は親しみやすいテーマであったこともあり、各講演はユーモアと情熱に満ちたものとなり、笑顔や熱気にあふれていた。
各講演内容を以下に簡単に紹介する。
@「Dam Prism −ダムプリズム−」(琉 講師):
当講師は、若いダムファン層からダム王子と親しまれているビジュアル系ダムマニアであり、会場には女性ファンも多く詰めかけた。内容は、ダム好きの情熱があふれており、全国各地のダムの迫力ある姿をプリズムのように切り取り、鋭い批評を加えながら浪漫ある夢を語る内容であった。(今後とも若い層へダムの魅力をぜひともお伝え下さい。)
A「地元とともに−感動・情熱・メッセージ−」(水野 講師):
山形県の留山川ダムにおける地元との交流を中心に映像を交えて心温く語る内容であり、現地の長い経験に基づく判りやすい説明に会場も終始和やかであった。(熱心さのあまり時間が足りなくなり、途中で切り上げて頂き申し訳ありませんでした。)
B「ダムのみる夢」(夜雀 講師):
女性マニアとして全国的に名を馳せる夜雀さんには、前回、前々回に続いての講演をして頂いた。出だしの佐久間ダムになりきっての語り始めに聴衆は最初驚いたが、その迫力に次第に飲み込まれた。内容は佐久間ダムの貴重な当時写真を交えながら建設の経緯と現実の問題を的確に語るもので、毎回ながらその勉強ぶりには頭が下がった。(さすがの迫力でした。体調悪い中、誠にありがとうございました。)
C「新たなダムの楽しみ方」(廣池講師):
ダム日本等の編集者でもある当講師は、ダムをいかに楽しむかについて、美しい映像と巧みな話術で、ダムファンの興味を一挙に引き付けた。ダムファン初心者から熟練者までカバーする高度に濃縮された内容であった。(プロの中ではファンの心情を最も理解している方だと思います。)
D「ダムでこんなことできたらいいな」(萩原講師):
ダムマニアの草分けとして大活躍中の当講師からは、できたらよいなという夢を多く語って頂いたが、数々の提案は実に説得力があり、なるほどと思えるものばかりだった。例えばダムサイトに携帯の中継基地があれば平時も非常時も大変役に立つ。(これからも多くのダムドリームを実現して、より多くの人に夢を与えて下さい。)
E「ダムと景観」(柏木講師):
最後の講演として、当講師からは、エンジニアらしい誠実な語り口で日吉ダムの経験を中心にダムと景観の素晴らしい関わりについて語って頂いた。(職場を変わられて間もない出番でしたが、大変お疲れ様でした。)
3.実施の結果
会場の盛況、円滑な進行、充実した内容等、結果としてほぼ満足するものとなり、当イベントが着実に定着しつつあることを実感できた。以下に開催結果について項目別に簡単に記す。
(1) 開催日時: 今回開催はイベントのまだ少ない6月期の週末の金曜日とした。仕事帰りの方が参加できる18時〜21時までという時間帯や、軽食・ドリンクサービス付き、参加無料の一般公開シンポジウムという点は2011年と同じである。6月開催は、ダム工学会の年度体制が実質6月からであることを考えると難しい面はあるが、開催場所や方法が同じであったことから余り無理をせずに準備ができた。夏場がダムを最も訪れるシーズンであることから、直前である6月開催の意義は高い。
(2) 参加者: 会場受付で記名いただいた参加者数は合計130名であった。この数は会場定員にほぼ等しく、2011年と比べて人数はほぼ同じであるが、前回と比べて一般市民である若い年代や女性がより多かった。
(3) 周知方法: 周知は前回と同様に、区民施設や公共機関へのチラシ配布が主な手段であり、約1か月という短い周知期間であったが、最終的には参加者数が伸びた。その理由として、イベントとしての定着化もあるが、「ダムファンによるツイッターなどのソーシャルネットワーク使った呼びかけや宣伝」の効果が大きかった。
(4) 会場: 中央区社会教育会館の7階全てを貸し切り、ホール前のロビーは、受付・広報チラシ配布、参加者の歓談・軽食の場などとして活用した。前回同様に「交通の便が良かった、雰囲気が良かった」という声が多く聞かれた。
(5) 経費: 各方面の協力を得て経費をかなり切り詰めることができ、前回同様に費用対効果の非常に高いイベントになった。
(6) 当日運営: 関係スタッフの献身的なボランティアによってより円滑な開催を行うことができた。また、社会教育会館側の協力もあり、音響・照明など機器トラブルも無く非常にうまく行った。時間的にも、講師陣の協力もあり、予定時間内にほぼ正確に収まった。
(7) 実況動画: 遠隔地で参加できない方のためにリアルタイムのWEB中継を2011年と同様にダムファンtakane氏の好意により実施した。
動画中継(http://www.ustream.tv/channel/wdn)は今回も好評であった。なお、with Dam Nightへの累計アクセス(1回から今回まで)は2700であり、今回開催時刻における視聴者は約50であった。
4.まとめ
写真にもあるように会場に笑顔がたくさん咲いており、和気藹々の雰囲気が満ちていた。これはみんなのwith Dam Nightへの想いが相乗効果となって結実したと思われる。この雰囲気は、3年前の初回with
Dam Nightの時のダムファンと専門家の間の"まるで人種が違うような埋め難い溝"があった頃と比較すると、考えられないほどの進展である。また、with
Dam Nightは、年に一度のダムファンと専門家の再会の場として確実に懸け橋としての役割を果たしていることも実感できた。活性化小委員会としては、今後も一般市民との最前線に立つダム工学会イベントとしてwith
Dam Nightの一層の工夫を図りたいと考える。
最後に、講師各位と団体各位(日本ダム協会、ダム技術センター、建設コンサルタンツ協会、電力土木技術協会、ダム工事総括管理技術者会等)の協力に大いに感謝するとともに、各種段取りを担当頂いた皆様およびご支援頂いた活性化小委員会各位に対して心からの謝意を表する。
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写真−1 開演前の懇談と受付
非常に和やかな雰囲気である。。 |
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写真−2 琉 講師
ダム王子の魅惑の講演からスタート |
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写真−3 水野 講師
ひげ所長の心温かさ |
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写真−4 夜雀 講師
ダムになった夜雀さん |
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写真−5 廣池 講師
写真の秘術を語る廣池さん。
舞台下でWEB中継をしているTakaneさん |
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写真−6 萩原 講師
スイスの世界最高峰ダム登頂の萩原さん |
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写真−7 柏木 講師
建築学会賞を受賞した唯一のダム、日吉ダム |
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写真−8 講師と司会によるトークショー |
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写真−9 会場全体
プログラム最後のトークショーの状況 |
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写真−10 会場風景
会場に咲く笑顔 |
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