1.with Dam Night の経緯
「with Dam Night(ウィズダム・ナイト)」は、市民・ダムファン、技術者・研究者の交流を通してダムに関する科学的基礎知識や情報を社会に適切に伝え、さらには多くの方々がダム見学に出かけるため の「ダムへの架け橋」になることを目指すものです。
このようなダム工学会がダム関係の技術者・研究者以外の人との積極的な交流を目指した場作りを行
うようになった背景に、ダムファン(本文ではダムマニア、ダム愛好家とほぼ同義で使用)の存在があ ります。「with Dam Night」自体も、近年の活躍著しいダムファンに敬意をもって接し、シャイな人が 多い我々ダムエンジニアとの交流を求めて始まりました。with Dam Nightの最初は「ダム工学会20周年 特別企画」の一つとして2010年10月末と11月末の四夜にわたって多くの観客を集めて開催されました。 社会的に大きな反響を得たことから、その後は毎年開催されるようになっています。また、中部近畿地
区、九州地区など地域的な広がりを見せている状況です(表1参照)。ダム工学会として、地方に在住す る会員に対してもダム工学会の行事に参加できるようにすることは大事なことです。
このように普及してきたwith Dam Nightですが、その特徴は、「枠を超えた交流、ボランティア精神、
楽しむ、学ぶ」ことであり、講演の内容もダムファンが個人として話すことに対応して、技術者もポス トでなく個人の経験に基づいて話すというのがベースとなっています。
表1 ダム工学会 with Dam Night の開催経緯
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タイトル
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日時
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場所
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摘要
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with Dam Night(20 周年特別企画)第一夜:「ダム歴史的構造物」、第二夜:「水
力発電」、第三夜:「RCD Now, CSG Now」、第四夜:「利根川・荒川の治水と利水」
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2010 年
10月 25,26日と
11 月29,30 日
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東京都本郷;東京大学
階段教室
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23 講演、パネル展、web 中継
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with Dam Night 2011 「ダムの底力」
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2011 年
10 月 31 日
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東京都中央区;日本橋社会教育会館
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6 講演、web 中継
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with Dam Night 関西
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2011 年
12 月 8 日
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京都市吉田;京都大学講義室
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講演、トークショー
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with Dam Night, 2012 Kyoto(国際大ダム会議京都大会特別企画)
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2012 年
6 月 3 日
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京都市;京都駅イベントスペース
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講演、トークショー、パネル展
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with Dam Night 2013「ダムドリーム」
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2013 年6 月 28 日
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東京都中央区;日本橋社会教育会館
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6 講演、トークショー、web 中継
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with Dam Night in Nagoya
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2013 年
11 月 18 日
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名古屋市千種区名古屋大学
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講演、トークショー、パネル展
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with Dam Night 2014「Dams be AMBITIOUS」
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2014 年
7 月 14 日
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東京都中央区;日本橋社会教育会館
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6 講演、トークショー、web 中継
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with Dam Night in Osaka
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2014 年
9 月 11 日
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CAFÉ Lab.(大阪駅 グランフロント大阪北館 1F)
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講演、スライドショー、ビンゴ
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with Dam Night 九州
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2014 年12 月 12 日
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福岡市早良区;九州大学西新プラザ
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講演、トークショー
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2.ダム工学会 25 周年と地方拡大開催
ダム工学会 20 周年記念事業として開始された
with Dam Night ですが、2015 年度は、ダム工学会 25周年記念事業として、東京、北海道、東北、中部・近畿、中国・四国、九州 の6地区で開催することを計画しています(表2参照)。この 25 周年記念事業の with Dam Night は、全体テーマとして「ダム好 学の夜」と銘打ち、全体テーマの下で、各地区の状況に応じてサブテーマを設定することを考えています。さらに、ダム工学会から、日本大ダム会議広報連絡会に参加しているダム関係団体各位に、この特別拡大版である 2015 年度 with Dam Night への参加を共催または協賛という形で呼びかけています。
With Dam
Night 2015 の地区別の今後スケジュールは、今回の東京地区を皮切りに以下の通りです。
表2 with Dam Night2015「ダム好学の夜」の各地区開催日程
6 月 26
日(金): 東京地区、中央区、サブテーマ「世界のダム」
8 月 27
日(木): 中部・近畿地区、福井市、「ダム四方山話」
10 月 23 日(金): 北海道地区、札幌市、「北海道」
11 月 6 日(金): 中国・四国地区、広島市(広島工業大学)
11 月 7 日(土): 九州地区、福岡市(天神ビル)
11 月(未定): 東北地区、仙台市(東北大学)
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各地区開催の詳細情報については、ダム工学会ホームページをチェックしていただくか、メールアド レス dam_eng@jdec.or.jp にご確認いただければ幸いです。
3."with Dam Night 2015"東京地区の概要
今回は、2011年以降続く日本橋社会教育会館において6月26日(金曜)に開催され、サブテーマ“世界のダム”にあるようにダムのグローバルな魅力を知ってもらうことを意図しました(図1参照)。
図1 with Dam Night 2015 のチラシ
表3は当日プログラムですが、世界のダムシーン
をダムファンと専門家の視点から様々な角度でも って語ってもらい、最後のトークショーでは、二人のゲストを中心にダムファンとともに世界のダムを語りあいました。
なお、開演の頃に折悪しく雨が 強くなり、出足をくじかれた形となりましたが、会 場の状況は、前回同様に和気あいあいとしたもので あり、ダムを楽しむという雰囲気が満ちていること を実感できました。
前回同様にインターネット中継も為されました が、こちらの方も大いに盛りあがっていました。
(http://www.ustream.tv/channel/wdn)
ただし、前回と違った点として、会場の都合で開会前の待ち時間でのサロン(飲み物 or 軽食付き) の語らいが無くなってしまい、この点は残念ですが、
専門家とダムファンの出会いを増やすためにも、サ ロン復活に努めたいと思います。ちなみに、当会場 は東京都中央区の公共施設としての制約はあるが、 使いやすく経済的であり、都心にして最寄り駅から
近いので、上記以外はほぼ満点の施設ではあります。
表3 with Dam Night 2015 東京地区のプログラム
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地区テーマ:「世界のダム」 全体テーマ:「ダム好学の夜」
日時:2015 年6月26日(金) PM 18:10~21:00 (開場 17:50) 場所:日本橋社会教育会館8Fホール(東京都中央区)
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主催:ダム工学会、
共催:日本大ダム会議、
後援:日本ダム協会、
建設コンサルタント協会、
電力土木技術協会、
ダム工事総括管理技術者会
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18:10 開会挨拶 ダム工学会会長
浜口達男
(夜噺1)18:15 「世界のダムいろいろ」
松本徳久(日本大ダム会議専務理事)
(夜噺2)19:15 「世界のダム紙幣と経済」 takane(ダム紙幣収集家) 19:05
休憩 10 分
(夜噺3)18:40 「タスマニアダム紀行」
中村靖治(ダムマイスター)
(夜噺4)19:40 「海外のすごいダム」
萩原雅紀(ダムライター/写真家)
20:05 休憩 10 分
(夜噺5)20:15 トークショー 「そうだったのか、世界のダム」
司会:川崎秀明(活性化小委員会)
出演者: 勝濱良博(土木学会)、染谷健司(水機構)、萩原さん、takane さん
21:05 閉会
総合司会:中野朱美 (ダム工学会 若手の会)
実行グループ:チーフ 北川正男(ダム協会)、チラシ 尾山玲(ドーコン)、担当;木元敏徳(三井住友 建設)、佐藤公治(戸田建設)、平川潤一(東急建設)、牛久儀紀(ダム技術センター)、水野哲(同左)、
川原瑞基(同左)、菅野侑大(同左)、衣川哲平(建技)、川口秀一(建技)、西村香保里(日本工営)
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4.各講演内容の紹介
最初に開会の挨拶として、ダム工学会 浜口達男会長から「with Dam Night の主旨、ダム工学会 25周年、with Dam Night 全国 6 地区拡大開催等」の簡潔な話を頂きました(写真2)。 開会後の会場の様子を写真3~4に示しますが、with Dam Night も6年目となり、会場には笑顔や熱気がごく自然にあふれていました。
(夜噺1)「世界のダムいろいろ」松本徳久 講師 (写真5)
松本講師は世界大ダム会議でも副会長を歴任する等、世界のマツモトで知られています。今回は共催
の日本大ダム会議の立場も兼ねて、広いご見識から、世界ダム台帳から見た世界のダム状況、過去のダム事故(ロシア、フランス、中国等)の状況と原因メカニズム、ノルウェイのロックフィルダムにおけ る越水実験、狭山池など日本の古いダム等の話を頂きました。
(夜噺2)「世界のダム紙幣と経済」 takane 講師
(写真6)
昨年のトークショーでの短時間ながら余りの面白さに驚きましたが、今回はさらにパワーアップして「ダム紙幣発行 50 カ国の各事情と特徴、起源に大英帝国の影、ジンバブエのハイパーインフレとダムの
図柄変更、ダム建設と紙幣経済の関係」等、ダム紙幣を画面に見せながら難しい経済テーマを絡めて講 演して頂き、会場は大いに沸きました。takane 様には、インターネット中継も担当して頂きました。
(夜噺3)「タスマニアダム紀行」 中村靖治 講師 (写真7)
中村講師は、歯に衣着せぬ技術者姿勢からダムマイスターの王様みたいな方ですが、元建設省エンジ
ニアです。今回は、水力発電ダムの宝庫であるタスマニアの 15 ダムを御三方で苦労してレンタカーで周った時の話であり、フィルダム、CFRD、アーチダム等の構造の話も加えながら、各ダムの技術ポイント
や日本の設計との違い等を分かり易く話をして頂きました。
(夜噺4)「海外のすごいダム」 萩原雅紀 講師 (写真8)
萩原講師は、草分け的活動からダムマニアの王様みたいな方ですが、ダムライター/写真家としてい
くつかの書籍も出されています。画像の美しさとネタの面白さに多くの観客がぐっと引き付けられ、やばい(=凄い?)ダムがいくつも出て驚きの連続でした。今回のために幾日も深夜まで(自らハマッタ 状態で)勉強されたようですが、ダム工学的にもレベルの高いものばかりで、さすがだと感激しました。
(画面は隠します) どうしたらこのように面 白いネタを探せるのでしょうか?
(夜噺5)トークショー 「そうだったのか、世界のダム」(写真9)
冒頭に全体進行の中野さんからパネラーの 4 人が順次紹介され、一人ずつ壇上に上がりました。なお、 勝濱さんは土木学会事務局・前日本工営海外戦略担当・インドネシア経験者、染谷さんは水機構本社・前水資源機構海外戦略担当・イラン経験者であり、二人とも今が旬のエンジニアであり、前職は海外戦略担当でもありました。あとの二人は、takane さんと萩原さんであり、講師で紹介済みです。
45 分の時間の進め方は、「最も世界遺産にふさわしい歴史ダム→ 最も活躍しているダム→ 最も野心的なダム→ 最も考えさせるダム」で勝濱さんと染谷さんのそう思うダムをパワーポイントで挙げて もらい、それに対して司会の小生と takane さんと萩原さんから質問と意見を言うというスタイルで進め、 最後に
4 人から「いつか行きたい憧れのダム(戦場や疫病で渡航注意の地域も多いけど)」を挙げてもら いました。勝濱さんと染谷さんの話は大変魅力的でなるほどと思わせるもので、まさに「
そうだったのか、世界のダム 」とすることができました。
5.まとめ
今年も with Dam
Night の会場には笑顔と和気藹々の雰囲気が満ちており、この楽しいひとときこそがwith Dam Night の真髄です。冒頭に書いたように今年は「ダム工学会 25 周年」であり、with Dam Night 特別版として全国拡大開催されます。活性化小委員会としては、今後も一般市民との最前線に立つ
ダム工学会イベントとして with Dam Night の一層の工夫を図りたいと考えています。
最後に、講師、パネラー各位と団体各位(日本大ダム会議、日本ダム協会、ダム技術センター、建設 コンサルタンツ協会、電力土木技術協会、ダム工事総括管理技術者会等)の協力に大いに感謝するとと
もに、各種段取りを担当頂いた皆様およびご支援頂いた関係各位に対して心からの謝意を表します。
表2 翌日の関連新聞記事
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