一般社団法人ダム工学会
 
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第17回現地見学会 神流川発電所下部ダム

(上野ダム)見学記

 

 第17回ダム工学会現地見学会が下記のとおり実施され、私も参加する機会を得ました。


日時:平成11年10月13〜14日
 

見学ダム:東京電力(株)神流川水力発電所上部ダム、地下発電所、

      下部ダム
 

第1日目に見学した下部ダム(上野ダム)について、以下、報告致します。

  神流川水力発電所は長野県東部、信濃川水系南相木の最上流に上部ダム(中央土質遮水遮水壁型フィルダム)群馬県南西部利根川水系神流川の最上流部に下部ダム(コンクリート重力式ダム)を建設して上部および下部調整池とし、その間を約6 kmの水路で結び、有効落差653 mを得て、最大出力270万kW発電を行う純揚水式の発電所であり、この形式として
は世界最大級の規模を誇るものです。

 下部調整池となる上野ダムの諸元は表に示すとおりです。

 

表-1 上野ダム諸元

型 式 重力式コンクリートダム
堤 高 120.0 m
堤頂長 350.0 m
堤頂幅 7.5 m
堤体積 720,000 m3
天端標高 EL.846.50 m

 

 見学団一行は2台のバスに分乗し高崎駅より現地に向かい、途中下久保ダム(堤高129.0m、体積134.5万m3の重力式コンクリートダム)の見学もできるという嬉しいおまけもあり、高まる期待の内に建設所に到着しました。私自身現在2箇所目のRCD工法のダム現場に勤務しており、また10年以上前に揚水式発電所の上部ダムの建設に携わったこともあるので、自然と親近感が沸くと同時に施工技術などに新たな発見があるに違いないと考えていました。
 見学会の開会にあたり山住団長より「いろいろな経験を持ち、それぞれの立場でダムに携わっていることと思いますが、各自のレベルや立場に応じた視点・問題意識を持って見学していただきたい。」と貴重なアドバイスをいただき、「そうだ。新たな発見にしろ、自分の現場への応用にしろまず自分の問題意識をはっきりさせなければ。」と思いつつ現場へ向かうバスに乗りこんだものの、考えがまとまらないうちに現場到着。地中深く掘り進められた地下発電所の空洞の大きさに驚き、掘削で発生する良質な岩石がコンクリート用骨材に流用されると聞き、うらやましいと思いながら見学会の案内でVEについて触れられているのを思い出しました。
 掘削ずりの骨材への流用もVEの一環ということでしたが、その他にも内部コンクリートの単位結合材料の低減(最も少ない配合で100kg/m3 )、コンソリデーショングラウチングでの高所ボーリングマシンの使用による足場工の削減、堤内構造物のプレキャスト化など、列挙するだけで紙面が尽きてしまうほどコスト縮減や工程短縮に多種多様な取り組みをされており感心させられました。また、これらの取り組みはコスト面だけでなく、安全や品質の面でも得るものは少なくないだろうという印象があり、VE手法の活発化が施工技術や工法の発展に寄与していくということが多少なりとも実感できました。
 話は前後しますが、ダムサイトの特徴として右岸側に鞍部があり、左岸側から鞍部手前の尾根部にかかる主ダムに右岸側の脇ダム部が連続する形状となっています。チャート岩塊主体の基礎岩盤は基礎掘削後の保護モルタルが不要なほどに堅硬で、V字状をなす形状とあわせ、良好なダムサイトであるとの印象を受けました。コンクリート打設工法は主ダム部がRCD工法、脇ダム部はELCMとなっています。
 見学当日は、河床部のRCD施工を見ることができました。施工機械や作業人員の動きは一見、見慣れたものですが、整然と、かつ丁寧に作業が進んでいくことに加えてRCDコンクリート先行(21cmラ5層)による1mリフトの施工という積極的な取り組みにも感心させられました。その他、現場での作業形態には大きな変化は無いのかもしれませんが、単位結合材料の低減とか、フライアッシュ混合率の変更(夏期は発熱低減のため30→40%に変更)などの取り組みもあり、新しい課題に積極的にチャレンジしていく建設所全体の雰囲気が打設現場においても良い意味での緊張感を生んでいる。そんなことを強く感じました。ひとつひとつの技術だけでなく、プロジェクト全体をバランス良くマネージメントしていくことの重要性を実感し、大変良い刺激を受けました。
 出発前は上部ダムと下部ダムを2日間で見学するということで、ゆっくり見学ができると思い、実際、概要説明や質疑応答の時間もあり、現場内もくまなく案内していただき、見学者全員それぞれに有意義な会であったと思います。しかしながら、いざ現場を後にするとなると、もっといろいろ見てみたい、聞いてみたい、そんな思いも少し残りました。
それだけ盛りだくさんで内容が充実していたということでしょう。
 そんな中で今回は学生会員の姿が見られませんでした、若い人達に現場を実際に見てもらうことは大変意義のあることと思います。楽しい雰囲気の見学会で、とにかく勉強になるので是非積極的な参加を期待致します。
 最後に、ご多忙の中ご案内いただいた、東京電力(株)神流川水力建設所の皆様、下部ダム、発電所並びに上部ダムの各共同企業体の皆様、的確なアドバイスと有意義なお話で一行をリードしていただいた山住団長、企画・実施に尽力された現地見学会小委員会の皆様に改めてお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

[(株)青木建設 餅田 庄一]

 

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