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第18回現地見学会 滝沢ダム見学記

 

 ダム工学会主催の第18回ダム現地見学会が6月29日、30日に開催されました。今回の見学対象ダムは滝沢ダム、浦山ダム、山口貯水池堤体でした。

 開催日が梅雨時でもあり天候が心配でならなかったのですが、見学会当日は前日からの雨もすっかり上がり、青空さえも顔を覗かせる絶好の日和となりました。

 原田讓二(財)ダム水源地環境整備センター理事をコーディネーターに、私たち見学者は2台のバスに分乗し、西武秩父駅を後に国道140号線を一路西に向かいました。出発後間もなく秩父市を抜け荒川村に入ったところで、車窓から左手に威容を誇る浦山ダムの堤体が垣間見え、見学者一同は感嘆の声をあげていました。以後バスは一路滝沢ダムを目指して細く曲がりくねった道路を40分位走り、ようやく現地に到着しました。最初に驚いたのは、付替国道としてダム下流に建設されたループ橋でした。狭隘な谷間に高くそびえ立つピアに支えられたPC橋は非常にスリムで、これまでの景色とは全く異なるものでした。この雷電廿六木橋は、平成10年度土木学会田中賞、プレストレストコンクリート技術協会賞、日本コンクリート工事協会賞の3つの賞を受賞したそうです。

 滝沢ダムは、荒川の左支川中津川に建設される多目的ダムで、荒川水系総合開発の一環をなすものです。ダム及び貯水池の諸元は次のとおりです。

 

<ダム及び貯水池諸元>

位  置 埼玉県秩父郡大滝村大字大滝
形  式 重力式コンクリートダム
堤  高 140.0m
堤 頂 長 424.0m
堤 体 積 約180万m3
ダム天端標高 EL. 568.00m
集 水 面 積 108.6km2
総貯水容量 6,300万m3
有効貯水容量 5,800万m3


ダム標準断面図

 

 見学会は、ダムサイト右岸天端道路脇に建設された案内施設「こまどり荘」で開催されました。最初に、原田コーディネーターのご挨拶があり、水資源開発公団滝沢ダム建設所の大藪勝美所長、小寺幸男副所長より計画の概要についてご説明いただきました。
 滝沢ダムは、昭和44年4月1日に実施計画調査に入って以来、平成11年3月2日の本体建設一期工事着手まで、実に30年近い年月をかけてようやく本体工事にこぎ着けたとのことです。ダムサイトの地質は中生代四万十帯輝緑凝灰岩、粘板岩、砂岩、チャート等で、総掘削量約158万m3、進捗状況は堤体中腹部から河床部へかけての基礎掘削の施工中でした。ダムサイトは急峻な地形のため、掘削によって発生した法面の保護工として、左岸側はフリーフレーム主体、右岸側は十字ブロックを使用したアンカー工を主体とした工法を採用しており、現場の方々は地山の安定確保にご苦労されている様子が窺えました。原石山は、ダムサイト左岸方向約1km地点、標高差約500mの高所に位置し、H=8.0mのベンチカット工法で採取します。しかし、あまりにも標高差が大きいため、原石の運搬は場内立坑(φ≒4.7m、H=192m)とトンネル(L=305m)を利用するそうです。このような位置を原石山として採用した理由は、石灰岩は採鉱予定地となっており、チャートは硬過ぎるために砂岩を求めていった結果だそうです。

 滝沢ダム貯水池周辺には多くの地滑り地形が分布しており、それらの対策工事の中でも特に興味を惹かれたのが、今回の見学会におけるメインテーマの一つの、滝ノ沢地区押え盛土工事です。本工事はダム上流1〜2km付近に施工されたもので、押え盛土量約130万m3、その根固めを兼ねたCSGによる開水路延長約920m、CSG施工量約12万m3の規模のものです。現地で直接観察したCSGは単位セメント量60kg/m3で、RCDコンクリートより表面が粗いものの、天端では堤体掘削岩で盛立てられた部分との境界が殆ど見分けが付かないものでした。しかし、コア採取された孔を観察することが出来まして、その締固めの良さに感心致しました。練混ぜ方法は安定した品質確保の面からMy-BOXというプラントを使用し、撒き出し厚さや仕上り厚さを種々組み合わせて、試験施工的なことも十分に行ったということでした。

 次に興味を惹かれたのは本ダムサイトには、全くといってよいほど平坦な土地がないのに、これほど大規模なダムを建設するための仮設備をどのように設計・施工するのかということでした。広大な面積を必要とする骨材プラントは、建設発生土処分地を利用し、設備の重要度によって、地山上に構築するもの、基礎杭を打設するもの、等沈下を許すものなどに分けてレイアウトしているとの説明を頂き納得することが出来ました。

 今回始めてダム工学会の見学会に参加させていただき、自社の現場だけでは得ることの出来ない多くの技術を学び、様々な人と話す機会を持つことが出来たことは、非常に有意義な2日間だったと思います。

 最後に、多忙な折り、ご説明とご案内を頂きました水資源開発公団滝沢ダム建設所の皆様、滝沢ダム本体建設工事JVの方々、原田コーディネーター、企画・開催にご尽力された現地見学小委員会の皆様に改めてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

                            [樺|中土木 森田 英仁]

 


滝沢ダム 上流より撮影

 

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