一般社団法人ダム工学会
 
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第19回現地見学会 永平寺川ダム・枡谷ダム見学記

 

 ダム工学会主催の第19回ダム現地見学会が11月1日、2日にかけて石川県・九谷ダム、福井県・永平寺川ダム、北陸農政局・桝谷ダムで開催されました。開催日は両日ともあいにくの雨模様でしたが、財団法人土木研究センタ−風土工学研究所の竹林征三所長以下参加者31名で、稔り多い見学会でした。以下、第2日目に見学した永平寺川ダムと桝谷ダムについて報告します。
 朝8時に永平寺の宿泊先を出発し、程近い作業事務所に立ち寄り永平寺川ダムの計画概要の説明を受け、何よりも驚いたことは、建設採択を受けてから10年程で本体打設を完了したことです。竹林団長の「永平寺のための永平寺川ダム」との言葉のとおり、地元と自治体が一体となって事業に取り組めばこのような短い工期で完成させることが可能なのだということを知らされました。事務所を後にしバスで10分ほどで、山水画のようなうっすらとモヤのかかったできたての永平寺川ダムが見えてきました。バスを降り、天端より下流を見渡すと、大本山永平寺より約1kmと近いことから、堤体は地元住民や観光客の視線を配慮した曲線の柔らかさで表現されてあり、周辺の景観との調和が図られていました。また、新たな観光名所としてのルートの確保やダム天端よりの眺望の場としてのバルコニーなども設置されていました。
 施工に際してはダム本体及び工事用道路の掘削により発生する残土のうち、岩石は福井県骨材工業組合と協定書を締結して、骨材工業組合で砕石、砂利として有効利用するなど、リサイクルにも積極的に取り組んでおり、まさに地域に密着したダムだということが感じられました。

 

<ダムの諸元>

型 式: 重力式コンクリートダム
堤 高: 55m
堤 頂 長: 177m
堤 体 積: 118,600m3
越流部標高: EL319.7m
非越流部標高: EL328.0m
基礎岩盤標高: EL273.0m
上流面勾配: 鉛直(フィレット1:0.2)
下流面勾配: 1:0.74

 

 

 永平寺川ダムを見学後、桝谷ダムへ移動しました。桝谷ダムは国営灌漑排水事業日野川地区の基幹事業として農林水産省が建設するダムですが、併せて武生市他1市4町の生活用水及び武生市他1市1町の工業用水を開発・供給する都市用水事業と、日野川沿川地域の水害を防止する治水事業の共同事業で進められている多目的ダムです。
桝谷ダムは中央遮水ゾーン型ロックフィルダムを採用しています。桝谷川流域内の標高は400〜600mが約60%を占め、山腹斜面は急勾配となっていますが、崩壊が非常に少ない状態です。桝谷川流域の地質は砂岩、粘板岩、チャートなどの互層となっています。地表付近の砂岩は褐色で非常に硬いが亀裂が多く細粒化しています。粘板岩は黒い暗灰色の緻密な岩石です。チャートは青緑〜茶褐色の非常に堅硬な岩石で5〜20cmの間隔で亀裂が入り、細粒径にブロック化しています。このことや自然環境に与える影響をできるだけ少なくなるようにコンクリートダムではなくロックフィルダムを採用したようです。

 現場では資料館を見学し、資料館屋上より施工現場の見学及び施工状況の説明を受けました。また施工現場に降り、監査廊の設置状況を見学しました。桝谷ダムでは監査廊のプレキャスト化を行っています。監査廊の施工は型枠の設置、配筋、支保工の設置、コンクリート打設、型枠の解体という一連の作業を大変狭隘な空間で実施しなければならず、ダム施工を合理化する上で大きな課題を有しています。コンクリートダムでは監査廊のプレキャスト化を導入してその解決が図られ、ロックフィルダムでもプレキャスト部材を埋設型枠として取り扱っておりますが、現状では監査廊本体構造の一部とはみなしていない。このためさらなる施工の省力化と工程短縮を図るために、プレキャスト部材を本体の一部とみなし施工を積極的に推進する必要があるようです。桝谷ダムにおけるプレキャスト工法は、コスト面では従来工法とほぼ同程度であり、安全性が向上し、鉄筋組みをユニット化したことで作業員の手待ちが少なくなり、作業の平準化が容易となり、1ブロックあたりの施工サイクルを4日短縮できたそうです。

 

 

 今回初めてダム工学会の見学会に参加させていただき、施工現場の方々の苦労や技術を学ぶことができて、非常に有意義な2日間でした。
最後にお忙しい中、ご説明とご案内を頂きました九谷ダム建設事務所、永平寺川ダム作業所、桝谷ダム作業所の方々、竹林団長、現地見学会幹事の皆様に改めて深くお礼を申し上げます。

( 潟Aイ・エヌ・エー 深澤正敏)

 

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