行事報告
ダム工学会主催の第20回ダム現地見学会が7月12日、13日にかけて東北の摺上川ダム(東北地方整備局)、綱木川ダム(山形県)、長井ダム(東北地方整備局)で開催されました。下村
周
日特建設株式会社常務取締役をコーディネータとし、総勢,47名が本見学会に参加しました。第1日目に実施された摺上川ダムの見学記を以下に紹介します。
摺上川ダムは、福島駅より車で30〜40分の阿武隈川の左支川摺上川の上流福島市飯坂町茂庭地内に建設される中央コア型ロックフィルダムで、洪水調節、流水の正常な機能の維持、灌漑用水、上水、工業用水、発電目的とした多目的ダムです。
昭和48年度から予備調査に着手、平成4年10月に転流工に着工し、現在、堤体の盛立工事中で平成16年からの湛水開始を予定している。
<ダムの諸元>
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形 式 |
中央コア型ロックフィルダム |
地 質 |
火山礫凝灰岩と礫岩の互層 |
堤 高 |
105.0m |
堤 頂 長 |
718.6m |
堤 体 積 |
8,300,000m3 (フィル堤体) |
上流面勾配 |
1:2.65 |
下流面勾配 |
1:2.00 |
洪 水 調 節 |
自然調節方式 |
集 水 面 積 |
160km2 |
総貯水容量 |
153,000,000m3 |
有効貯水容量 |
148,000,000m3 |
左岸天端より全景
摺上川ダムでは、発注者と共同企業体でコスト縮減委員会を設置し,公共工事に望まれる縮減対策を積極的に実施されている。詳細に検討された項目としては、20項目を越えるが、以下にその一部を紹介します。
1. 掘削線の変更
部分的な先行掘削による掘削線の上位設定
(掘削・盛立量 100,000m3、洪水吐きコンクリート 4,000m3削減)
2. 掘削工
仕上掘削にツインヘッダーを用いた省人化。
コア細粒材を流用
3. 盛立工
コア、フィルター材の仕上り厚変更(コア20⇒30cm,フィルター40⇒60cm)
リップラップを捨石工とし機能を重視した
4. 原石山
1つの原石山から、コア、フィルター、ロック材及びコンクリート骨材を分別採取することで効率的な採取行う。
低品質材料を内部ロック材として800,000m3流用。
本体も含めて、捨土材を盛土材として流用し、橋梁部を盛土で対応した。
5. 取水放流設備
バルブに切欠きを設け小放流に対応し、放流設備を1門とした。
6. 洪水吐きコンクリート
移動式タワークレーンをクローラクレーン(200t)に変更
一部七ヶ宿ダムの固定式旋回スプレッダーを使用。
コア材盛立状況
洪水吐き(上流より)
以上のように、現場の実態にあった様々なコスト縮減案が提案されており、今後、計画・設計に反映させ得るものと実感いたしました。また、施工現場の実情を把握することで標準的な積算基準との差異を認識し、より効率的なダム計画の立案に努める必要性を感じました。
最後になりましたが、東北地方整備局
摺上川ダム・長井ダム工事務所、山形県綱木川ダム建設事務所並びに各共同企業体の皆様、また、下村コーディネーターをはじめダム見学会小委員会の皆様に深く感謝し御礼申し上げます。
[八千代エンジニヤリング(株) 鹿児島 猛]
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