行事報告
ダム工学会主催の第20回ダム現地見学会が7月12日、13日にかけて開催されました。第2日目に見学した綱木川ダム・長井ダムについて報告します。
前日の雨も上がり、小野川温泉を出発し綱木川ダムに向かいました。綱木川ダムは鬼面川総合開発事業の一環として、最上川水系鬼面川の支流綱木川に山形県が建設中の多目的ダムです。
綱木川ダムの諸元 |
型 式 |
中央コア型ロックフィルダム |
堤 高 |
74m |
堤頂長 |
367.5m |
勾 配 |
上流勾配1:3.0、下流勾配1:2.1 |
堤体積 |
216万m3 |
掘削量 |
104万m3 |
総貯水量 |
955万m3 |
ダムの特徴は、1.堤体積に対して洪水吐の規模(15.8万m3)が大きい。2.盛立工において、コア材は堤体基礎掘削材を流用して使用するということです。フィルター材は骨材プラントで粒径別コンクリート用骨材として製造されたものを混合して使用するということです。事務所で上記のような説明を受けた後、右岸天端に行きました。そこでは、タワーベルコンによる洪水吐のコンクリート打設が行われていました。特徴は、1.横移動にベルトコンベヤ、縦移動に2列のバケットを設置し、供給均合を持たせることにより連続大量運搬を可能にしている。2.多軸回転式のブームは、ロボットの制御技術を導入することで狭小部においても能力が劣ることなく自動運転が可能である。3.縦シュート部にMY-BOXを使用し、骨材分離を防止しています。実際の打設もスムーズに行われていました。次に骨材製造ヤードに行きました。ここでは、MY-BOXに分級骨材を投入することにより、フィルター材の製造が行われています。当日はコンクリート打設のため製造状況が見れず残念でした。堤体では盛立が盛んに行われていました。平成11年7月の盛立開始からの進捗率は約15%だそうです。
最後に下流より監査廊内部に入りました。フィル部監査廊では脱型不要のプレキャスト埋設型枠(底面開放型の逆U字型部材(t=80mm)を使用していました。仕上りは大変綺麗でした。セントル解体作業もなく安全で、かつ工期も短縮できたとのことです。ダムを見学した印象は整理整頓が行き届き、気持ちの良い現場でした。また、数多くの合理化施工技術開発に取り組まれ、成果を上げているのを知り、大いに啓発されました。
タワーベルコンによる洪水吐打設
フィルター材製造プラント
綱木川ダムを後にし長井ダムへ向かうと雨がポツリポツリ、昼食の間も止まず、さらに雨脚が強くなり、好天に恵まれたのもここまでかと思っていると、長井ダム工事事務所に着く頃には薄日が差し始めました。これはきっと普段の行いの賜でしょう。長井ダムは「最上川水系工事実施基本計画」に基づき、国土交通省が山形県長井市の最上川水系置賜野川に建設中の多目的ダムです。
長井ダムの諸元 |
型 式 |
重力式のコンクリートダム |
堤 高 |
125.5m |
堤頂長 |
381m |
堤体積 |
約120万m3 |
総貯水量 |
5、100万m3 |
平成14年秋の打設開始を目指し、現在、基礎掘削、法面保護工、仮設備基礎等が、盛んに行われています。基礎掘削量はPCアンカーを施工することにより、当初計画の200万m3から140万m3に低減されたそうです。堤体打設はテルハ式クレーン(32t級、9m3)と20tダンプで運搬するRCD工法により行われる予定です。さらに撒き出し厚さ40cmでグリーンカットを行わない新RCD工法の導入も検討しているそうです。原石山は最盛期に向けての準備工が行われていました。時間の関係で質疑応答も慌しくバスに乗り、帰路に着きましたが、来年の打設開始以降、是非もう一度訪れたいと感じる雄大な現場でした。
右岸掘削状況
PCアンカー及び人工岩盤施工状況
この初参加の見学会で感じたこと、良かったこと。
1) 3つの違ったタイプのダムが見られたこと。
2) 案内をしていただいた各現場の方々が細かい心配りされていたこと。
3) 懇親会にて、現場の所長さんを含む各界各社の方々と忌憚なく意見を述べ合えたこと。
4) 私事で申し訳けありませんが、綱木川と長井ダムで旧友と再会し、解散後、米沢市内に宿って一献かたむけたこと。
最後になりましたが、各ダムで親切にご説明していただいた国土交通省、山形県、JVの関係各位と、現地見学会を企画していただいた幹事の皆様に深くお礼を申し上げます。
[鹿島建設(株) 福井直之]
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