行事報告
ダム工学会主催の第21回ダム現地見学会が、11月8日〜9日に岐阜県の徳山ダム(水資源開発公団)、横山ダム(国土交通省)で開催されました。ここでは、第1日目に見学した徳山ダムについて報告します。
徳山ダムは、揖斐川河口から約90km上流の岐阜県揖斐郡藤橋村に建設される、中央遮水壁型ロックフィルダムで、洪水調節、流水の正常な機能の維持、異常渇水時における緊急水の補給、新規利水、発電を目的とした多目的ダムです。
ダムの諸元
型 式 |
中央遮水壁型ロックフィルダム |
堤 高 |
161.0m |
堤 頂 長 |
415.0m |
堤頂標高 |
406.0m |
堤 体 積 |
約13,900,000m3 |
集水面積 |
約254.5km2 |
総貯水容量 |
約660,000,000m3 |
有効貯水容量 |
約351,400,000m3 |
ダム現地はJR岐阜羽島駅より車で約2時間の距離にあります。
揖斐川右岸堤防の道路を走行して、揖斐川が天井川であることがよくわかりました。まず揖斐川町にある水資源開発公団徳山ダム建設所を訪問し、山口温朗所長から徳山ダムの治水上の役割と効果など事業目的と建設所の取り組みについて説明を受け、いよいよダム現場見学に出発しました。途中、再開発事業のため水位を下げた横山ダム湖畔をとおって紅葉真っ盛りの揖斐川を遡行し、約1時間後、徳山ダムに到着しました。
最初の見学地、右岸天端ダム軸付近からダム本体掘削の様子を一望することができました。平成13年11月1日現在で、本体掘削の進捗率は72.1%に達し、左岸の掘削は大型重機がめまぐるしく稼働しており、まさに急ピッチといった感じです。
写真−1 右岸からダム本体掘削状況と上流2次締切堤を望む
次に犬谷展望台から原石山、堤体上流を一望した後、上流2次締切へ行きました。2次締切はCFRD(コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム)による試験施工で行われており、現在フィル部分の盛立が終わり、フェイススラブ(スタータースラブ)の施工を行っているところです。フィル堤体は本体掘削からでた掘削ズリと下流横山ダム貯水池内に堆積した土砂(河床砂礫)を盛立材料とし、堤体積380,000m3のフィル部を原石山無しに施工することができたそうです。その後、プラントヤードにてコンクリート製造設備の設置状況を見学し、ダムサイト近傍の藤橋城近くにある徳山ダム建設所工事課の会議室において山口所長、佐藤副所長はじめ徳山ダム建設所から10数名が出席して、見学の質疑応答が行われました。質疑はCFRDの施工に関して中心に行われ、1日目が終了しました。
写真-2 上流から2次締切と本体掘削状況を望む
写真-3 CFRD堤体法面保護用仮設遮水シートとスタータースラブ
工事概要説明ならびに現場見学から徳山ダムは、下記の様な創意工夫を行い、環境に対する変化を最小限に抑える工夫として、
1.下流横山ダム貯水池内に堆積した土砂をフィルター材、コンクリート骨材に再利用することで、新たな環境改変面積を小さくする。
2.付替道路のトンネル区間を増やすことで地形改変を抑える。
3.猛禽類等動物を刺激しないよう、重機やプラントの塗装を淡色にする。
4.騒音、粉塵源に覆いや消音設備等の処置をする。
などを行っており、自然重視としたダムであると感じました。そのほかにも様々な環境を守るための活動が実施されていました。
ダム建設においては、その大規模かつ長期間にわたる工事や広範囲な区域の水没など、自然環境への影響は避け難いものがあります。そのため徳山ダムのような自然に対する最大限の配慮がダム事業の実施には必要であり、ダム以外の土木工事についても、環境への対応は今後とも大きな課題であるとあらためて感じました。また、徳山ダムでの実績が今後のダム事業のあり方について、一つの指針を示すものと期待します。
最後になりましたが、見学会にあたり、終始熱心で親切・丁寧なご説明とご案内をいただいた水資源開発公団徳山ダム建設所、国土交通省横山ダム工事事務所並びに各共同企業体の皆様、また、水野コーディネータをはじめダム見学会小委員会の皆様に深く感謝し御礼申し上げます。
[前田建設工業株式会社 中山 元悦]
|