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行事報告

第21回現地見学会

根尾谷断層・横山ダム見学記及び現地講演会を聞いて

 

 第2日目に行われた根尾谷断層、国土交通省横山ダムの見学会及び水資源開発公団徳山ダム建設所で開かれた講演会について報告します。

 前夜の懇親会の余韻がさめやらぬまま、私たちは朝一番に根尾谷地震断層観察館に向かいました。

 根尾谷断層は1891年に東海地方を襲った濃尾地震の震源となった断層であり、100年以上経った今でもその大きな爪跡が残っていることに驚きました。観察館内で6.0mにもおよぶ地層のずれを目の当たりにした時、推定マグニチュード8.0という大地震のパワーに恐怖さえ感じました。

 

写真-1 根尾谷断層(震災当時)

 

 根尾谷断層を後にした私たちは、前日に引き続き徳山ダム建設所に向かい、現地見学会の企画として今回初めて開催された講演会に参加しました。

 講演会ではまず、前日見学した徳山ダムの上流二次締切に用いているCFRDを実際に海外(インドネシア・チラタダム;ダム高126m)で施工された大成建設株式会社国際土木部中村隆部長より当時の施工状況写真を見ながら建設時の状況を講演していただきました。

 

図-1 チラタダムのトウスラブ

 

CFRDの施工上の特徴は、

 

1.一般的なゾーン型フィルダムとは違い堤体盛立材料が主にロック材であるため、コア材のように施工が気象条件や品質管理等に影響されることが少なく、施工管理が容易であり盛立工期も短いこと。

 

2.流面のフェイススラブはバラ型枠ではなくスリップフォームと呼ばれるスライド式型枠を用いて2.0m/h程度の速度で連続打設を行うこと。

 

などです。法面勾配が1:1.5と比較的急であったことから、コンクリートは天端からのシュート打設で施工され、シュート長さは最大で200m以上もあったそうです。また、現地では人件費が安かったことから、フェイススラブ面全体に配置する鉄筋は作業員がその場で配筋し、スリップフォームの次レーンへの横移動も人力で押して移動するといった人海戦術を行ったそうです。

 続いて、徳山ダム建設事務所の柳川晃副所長と嶋田啓一環境課長より、徳山ダムにおける環境対策と情報公開について講演していただきました。徳山ダムでは貯水池周辺の環境保全対策として、動植物や水質などの自然環境を調査しており、中でも生物の生態系については、生物そのものを細かく調査することは種が多く困難であることから、生物が生存する場所はどのような環境であるかという見方をし、建設工事によって生じた代採地域などを毎年調査しているとのことです。

 そして、それらの調査結果を、ホームページやパンフレットに載せると共に学識経験者を招いての学習会を開いたり、各委員会を公開するなどすべての人々が情報を得られるよう努力されています。積極的に情報を公開することで、これまでは個別に対応しなければならなかった環境に対する外部からの質問が減ったそうです。

 

また環境保全のために施工計画等も変更されており、主なものでは

 

1.徳山ダムの下流にある国土交通省横山ダムの浚渫発生土をトランジシヨンやコア材の一部として使用することにより、原石山やコア山の掘削数量を減少させ、より多くの自然を残す。

2.湖周道路の計画を変更し、トンネルや橋梁にして法面の発生をおさえる。

3.低振動、低騒音型施工機械を用いるとともに、機械の塗装も色彩を考慮する。

4.終日施工の範囲を縮小する。

 

などを実施されています。

 また、貴重植物や魚類などの移植も行っており、徳山ダムの環境保全に対する取り組みはこれからのダム事業のありかたを改めて考えさせられるものでした。

 講演会終了後、今日の見学会の最終目的地である国土交通省横山ダムに向かいました。横山ダムは昭和39年に完成した高さ80.8mの中空重力式コンクリートダムであり、現在はダム再開発の一環として貯水池内土砂の浚渫工事を行っている最中でした。私は中空重力式コンクリートダムの中に入るのは初めての経験でしたが、ダムの中の空洞内を歩いていると、とても新鮮な感覚を覚えました。

 今回初めて参加させていただいたこの見学会で得た情報は、今後我々が進むべき方向を見い出すための生きた資料であり、これから私がたずさわる業務において大いに参考となることでしょう。

 

写真-2 地域の人々への説明

 

写真-3横山ダムにて

 

 この2日間、私たちに多くの資料提供やご説明、ご講演をいただいた水資源開発公団、国土交通省、徳山ダムJVの方々と、現地見学会を企画していただいた幹事の皆様に深く感謝の意を表します。

〔(株)ニュージェック 山崎義人〕

 

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