行事報告
ダム工学会主催の第22回ダム現地見学会が7月18日、19日にかけて胆沢ダム・鷹生ダム・二ツ石ダムで開催されました。八戸工業高等専門学校の柳澤
栄司校長をコーディネータとし、総勢40名が本見学会に参加されました。第1日目に実施された胆沢ダムおよび鷹生ダムの見学について下記のとおり報告します。
胆沢ダムは、岩手県北上川右支川胆沢川の上流部で建設が進められているもので、洪水調整、河川環境保全等のための流量の確保、かんがい用水、水道用水の供給、発電を目的としています。型式は、中央コア型ロックフィルダムで堤高132m、堤頂長745m、上流勾配1:3.0、下流勾配1:2.9、堤体積15,000千m3、総貯水量143,000千m3
です。現在、転流工工事、付替国道工事に着手し、平成25年完成予定です。
ダム上流2kmの位置には、我が国初のロックフィルダムである石淵ダム(昭和28年完成)があり、胆沢扇状地は昔より安定した水の確保が必要な土地であることが推測できます。ダム工事のコスト縮減対策として、盛土材料のc,φを見直して堤体の勾配を立て堤体積を減らす検討も行っているそうです。
13年4月に開館した胆沢ダム学習館には当年10月に来館者1万人を達成し、地域住民の関心も非常に高いそうです。学習館にはダムを作る必要性、目的等が一般の人たちにもわかりやすく説明されていて、「説明して理解してもらう」ということの必要性を感じました。
下流より望む胆沢ダム建設予定地全景
鷹生ダムは、岩手県大船渡市に位置する盛川水系鷹生川で、洪水調節、既得取水の安定化、河川環境の保全及び水道用水の供給を目的に建設が進められています。型式は重力式コンクリートダムで堤高77m、堤頂長309m、上流勾配鉛直、下流勾配1:0.75、堤体積319千m3
、総貯水量9,680千m3
です。現在、本体コンクリート施工中であり、進捗率はコンクリート体積で47.5%で、平成18年度完成予定です。
鷹生ダムの特徴としては、大型ダム用のコンクリート運搬設備に新しいシステム「ライジングタワー」を取り入れたことだと思います。このシステムは自然景観とイヌワシ等に対する影響を低減し、しかも性能・安全性・経済性が確保できる新しいコンクリート運搬設備として技術開発を行ったそうです。設備の概要は、バンカー線上のトランスファーカーからコンクリートを
4.5m3バケットで受けて堤体上まで運びます。巻上装置のモーターは運搬量90m3/hの巻上げ能力を持っているそうです。ジブは全長28.1mの固定式で、延長方向の両外側に横行トロリー用のレールが装着されていました。タワーマストの1ブッロクは鋼材を高さ6.0mに組立てたもので、汎用性の高い製品であり、建築現場から転用したそうです。これを継ぎ足しながらクライミングを繰り返し、最大12ブロックを積み重ね頂部に達するそうです。運搬設備としては、低標高部ではダンプトラック、高標高部では360°自由に回転できるクローラーダンプを採用するそうです。
このシステムの効果としては、ケーブルクレーンの場合に比べ地山掘削量を減らすことによる周辺自然環境への負荷の低減、猛禽類への影響の低減、効果的なコンクリートの運搬作業、安全性の向上ができたそうです。説明を聞き、すでに確立しつつあるダム技術の中で、新しい技術開発への取組みそして技術を確立させる姿勢には感心しました。
ライジングタワーによる打設状況
最後になりましたが、案内、説明していただいた国土交通省東北地方整備局胆沢ダム工事事務所、岩手県大船渡地方振興局鷹生ダム建設事務所並びに各共同企業体の皆様、また柳澤先生をはじめダム見学小委員会の皆様に深く感謝し御礼申し上げます。
[前田建設工業(株) 古川雅宣]
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