一般社団法人ダム工学会
 
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第23回現地見学会 船上山ダム、小田股ダム見学記

 

 ダム工学会主催の第23回ダム現地見学会が10月31日,11月1日の両日、ダム工学会会員(入会申請中を含む)総勢36名が参加して船上山ダム・小田股ダム(中国四国農政局)ならびに苫田ダム(中国地方整備局)で開催されました。

 ここでは、第1日目に実施された船上山ダム・小田股ダムについて以下に紹介します。

 船上山ダム・小田股ダムは、鳥取県中部の農業地域である東伯地区(大栄町,東伯町,赤碕町)の農業用水補給と畑地かんがいを目的とした東伯農業水利事業の一環として、大山を源に発し日本海に注ぐ勝田川,洗川水系倉坂川にそれぞれ建設中の中央コア型ロックフィルダムです。

 東伯農業水利事業は、船上山ダム・小田股ダムの他に、同じく大山を水源とする由良川水系西高尾川に西高尾ダムを建設し、さらに勝田川水系,由良川水系に頭首工を建設して、3ダム2頭首工を導水路で連結することにより有効な水資源開発を行い、農業生産基盤の整備に寄与するものです。

 事業の進捗状況は、西高尾ダムが既に完成しており、船上山ダムが本体盛立を完了して天端工や周辺工事を実施している段階であり、小田股ダムが基礎処理工を完了し、11月12日に定礎式を挙行し、平成15年度から本体盛立工が最盛期を迎えようとする段階です。なお、本事業は、平成18年度の小田股ダム完成をもって完了する予定で、総事業費1,030億円の巨大プロジェクトです。

 

 

写真−1 現地の状況

 

船上山ダム(左岸側から堤体下流面を望む)

 

小田股ダム(左岸側から本体堤敷部を望む)

 

船上山ダム・小田股ダムの特徴は次のとおりです。

 

(1) 設計上の特徴

1. 基礎地盤が第四紀の大山旧期火山岩屑物,新期火山噴出物から構成され、岩相変化,層厚変化に富む軟岩上に建設されるロックフィルダムである。【止水工に細心の配慮が必要】

 

2. 基礎の岩盤性状,透水特性を考慮して、図-1に示すように、遮水ゾーン(コア敷)が広く、貯水深と同程度である。【動水勾配の低減】

 

3. 基礎処理工には二重管ダブルパッカー工法を全面的に採用し、グラウト材には超微粒子セメントを採用している。【グラウチング改良効果の向上】

 

図−1 堤体標準断面図(3ダム)

 

 

(2) 施工上の特徴
1. 確実な基礎処理工を実施するために、現位置注入試験による注入仕様をトライアルし、基礎への適合性を確認して実施工へ反映させている。

 

2. 遮水材(ロームと凝灰岩のブレンド材)の含水比が高い上、山陰地方は降雨が多いため、含水比管理を工夫している。

 

・曝気効果の大きな凝灰岩(単独材)をスケルトンバケットで曝気。

・ドライショップ(コア材乾燥施設)の設置。(写真-2参照)

 

3. 監査廊の施工は、堤体沈下による変形に対応するために、スパン割を短くし(河床部L=3m)、継手の許容量(3cm)に対応した止水板を使用している。また、先行組立鉄筋を吊り込んで施工の合理化を図っている。

 

写真-2 ドライショップ(小田股ダム)

 

 以上のほかにも、第四紀の軟岩上に建設されるダムの止水面での課題に対して、国交省管轄ダムでは比較的馴染みの薄い二重管ダブルパッカー工法で対応された貴重な実績データを示していただき、大変勉強になりました。

 最後になりましたが、中国四国農政局東伯農業水利事務所ならびに船上山ダム,小田股ダムの共同企業体の皆様、本見学会を企画・開催していただいた現地見学会小委員会の皆様に深く感謝し御礼申し上げます。

[(株)建設技術研究所  山元 隆]

 

 

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