一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

琴川ダム見学記

 

 ダム工学会主催第25回現地見学会の第2日目(11月11日 火曜日),琴川ダムの見学について報告します。
 琴川は山梨県を南北に流れる富士川水系笛吹川の支流で,流域面積約34km2,流路延長約11kmの一級河川です。ダム地点は,昨日見学した滝沢ダムと秩父山地を挟んで反対(南)側に位置し,北に西沢渓谷,南に昇仙峡と,紅葉のこの時期に観光客で賑わう渓谷の近傍にあります。ダム地点までの交通のアクセスはJR塩山駅から車で約45分,または中央自動車道勝沼インターより1時間余りです。
 琴川ダムは,琴川および笛吹川流域の水害防除,琴川沿川の既得用水の安定化および河川環境の保全のための流量確保,山梨県峡東地域への新規水道用水の供給および発電を目的とした多目的ダムです。

 

表−1 琴川ダム諸元

位   置

山梨県東山梨郡牧丘町柳平地内

型   式

重力式コンクリートダム

堤   高

64.0 m

堤 頂 長

262.0 m

堤 体 積

207,000 m3

洪水吐き型式および規模

 常用洪水吐き:スリットによる自然調節

       (H=6.5m, B=2.5m, 1門)

非常用洪水吐き:クレスト自由越流

       (H=2.0m, B=12.5m, 4門)

集 水 面 積

10.0 km2

湛 水 面 積

0.3 km2

総貯水容量

5,150,000 m3

有効貯水容量

4,750,000 m3

 

 琴川ダムは,平成13年10月に本体工事が着工され,平成14年3月堤体基礎掘削開始,平成15年7月から堤体コンクリート打設が開始され,現在(平成15年11月)の進捗率は約32%です。
 当日は,山梨県琴川ダム現場事務所会議室において,工事概要および現在の進捗状況の説明後,原石山から現場見学をスタートしました。
 原石山は堤体から下流に4km程度離れた場所にあり,岩種は凝灰角礫岩です。原石の運搬はダンプトラックで,堤体上流の骨材製造ヤードまで運ばれていました。現在,頂部から6段目のベンチ(1ベンチ=8m)を施工中で,原石採取総量約19万m3のうち約2万m3を採取完了したところでした。また,写真−1に見るとおり,原石山の施工状況は,地山法面が急であること及び表土が薄いことにより,取付道路の位置や勾配に苦労の跡が感じられました。

 

写真−1 原石山掘削状況

 

 次に,堤体上流の仮設備ヤードを見学し,堤体上流および堤体上から本体コンクリート打設状況を見学しました。当日の天候は小雨でしたが,打設が実施されていました。当ダムの打設工法はELCMです。しかし,河流処理方式に仮排水路開渠方式を採用しているため,現在は堤体11BLに二次転流後の仮排水路がある状況で,拡張レヤ打設ではありませんでした(写真−2参照)。

 

写真-2 コンクリート打設状況

 

写真−3 21tタワークレーン

 

 打設設備は21tタワークレーン1基(写真−3参照)で,6m3バケットでの直打設を行っていました。
 堤体周辺の作業状況を見学しての感想ですが,比較的狭い敷地内で施工が行われているにもかかわらず,設備の配置および資機材並び等が整然としていて,スッキリした印象を受けました。
 見学後の説明では,コスト縮減への取り組みおよび環境への配慮についても説明がありました。
 コスト縮減では,堤体基礎掘削ズリ(花崗閃緑岩)のうち5,500 m3程度を流用骨材として使用する計画であること。また,当初,打設設備は打設初年度から13.5tタワークレーン×2基を使用する計画でしたが,打設初年度は21tタワークレーン1基のみ,2年目以降は21tタワークレーン1基および13.5tタワークレーン1基の計2基に変更し,機械費のコスト縮減を行っているとのことでした。
 環境面では,国指定天然記念物および準絶滅危惧種である「ヤマネ」や食中植物の「モウセンゴケ」に対して,樹林伐採時期等の配慮や工事用道路の粉塵発生・飛散対策等を行い,また定期的に生育確認調査を実施し,生育を確認しているとのことでした。
 最後になりましたが,本見学会で案内・説明および質疑応答に対応して頂いた山梨県広瀬・琴川ダム事務所ならびに琴川ダム共同企業体の皆様,また当見学会を企画・開催して頂いたダム工学会現地見学会小委員会の皆様に厚く御礼申し上げます。

                              〔(株)間組  川本 卓〕

 

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