行事報告
ダム工学会主催の第26回ダム現地見学会の第二日目に見学した小丸川発電所建設工事のうち、上部ダムと骨材・コンクリート製造設備について報告いたします。
小丸川発電所は、宮崎県の木城町を流れる小丸川の支川大瀬内谷川の最上流部に上部ダム(ロックフィルダム)を上部調整池とし、小丸川中流部に下部ダム(重力式コンクリートダム)を下部調整池としています。この間の有効落差約646mを約2.8kmの水路で連結し222m3/sの水を流下させ、地下発電所で最大出力120万kWの発電を行う純揚水式発電所です。平成4年度の事務所設置以来、平成11年2月建設工事着手、平成19年7月の一部運転開始に向けて工事が進められており、総合進捗率は約50%です。
(1)上部ダム
上部調整池の基礎地盤は、新生代古第三紀始新世〜漸新世の四万十累層群の日向層群であり、砂岩と頁岩の互層からなっています。上部調整池は当初、主・副ダムとも中央遮水壁型で、遮水方法はグラウチング工法としていました。しかし、地質調査により地山の高透水性状が明らかになったため、全面表面遮水型に変更されました。遮水材料はアスファルトが選定され、遮水壁の舗装面積は約30万m2で、国内最大の全面表面遮水壁型です。
写真−1 上部調整池全景
当調整池では国内では初めて、遮水壁底面部において厚層舗装工法が採用されています。(上部遮水層100mm)厚層舗装化により@コストダウンが図れ、A層間ブルスタリングの発生を回避できるそうです。
遮水壁の施工は各層毎に、アスファルトコンクリートの製造・運搬・敷均し・一次転圧・二次転圧の順に施工されます。このうち、斜面部の施工は、ウインチポータ、ダンパー車、斜面用アスファルトフィニッシャ、斜面用振動ローラ機等の専用機械が用いられています。また、国内のアスファルト遮水壁としては初めて舗装幅5mのアスファルトフィニッシャが用いられているそうです。現在は1日2レーンで施工されているそうですが、今後1日3レーンを目指しているとのことでした。
工事の概要パンフレットより引用
また、上部調整池の土工については、掘削量670万m3、盛立量450万m3の大規模土工事であることから、土工管理の省力化・的確化のため、3Dスキャン測量システムやGPS等のITを用いた施工管理を行っているそうです。
見学当日は雨天のため施工状況を見学することができず非常に残念でした。
(2)骨材・コンクリート製造設備
小丸川発電所建設工事に必要なコンクリート量は全体で約46万m3であり、このうち76%に当たる約35万m3を、@コンクリート供給コストの低減、A現地発生土の有効活用、B周辺住民の生活環境に対する配慮、C周辺市街地からの生コン車交通量軽減を目的として、当設備で製造、供給することとしているそうです。現地プラントの位置は、コンクリート供給先の位置等を考慮し、下部ダム近傍に配置されています。
設 備 能 力
主要設備 |
設備最大能力 |
骨材製造設備 |
160t/h |
コンクリート製造設備 |
(上部ダム他):80m3/h
(下部ダム) :90m3/h |
濁水処理設備 |
500t/h |
写真−2 コンクリート製造設備
本製造設備の特徴は次のとおりです。
@掘削ズリの有効利用
発電所、水路工事から発生する掘削ズリが、コンクリート用骨材として使用可能であることから、掘削ズリの一部をコンクリート用骨材として有効利用している。
Aフライアッシュの有効利用
発電所から排出されるフライアッシュを当プラントで製造するコンクリートに混入量30%で有効利用している。
B脱水ケーキのリサイクル
濁水処理プラントから排出される脱水後の脱水ケーキに高炉セメントを添加(添加量50kg/m3)し、造成盛土材としてリサイクルを図っている。
当現場の上部ダムでは最新技術のIT施工を積極的に導入し合理化を図りながら、骨材・コンクリート製造設備では「脱水ケーキのリサイクル」において建設副産物リサイクルモデル工事認定、リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞受賞など、環境に配慮した計画、施工を徹底して実践されていることには大変感心しました。また、通常のダム遮水工法とは異なるアスファルト表面遮水壁型について、聞き慣れない言葉が出てきて戸惑いましたが、実際に説明を受けて現場を見ることで大変勉強になりました。
最後になりましたが、台風対策でお忙しい中、懇切丁寧に説明して頂きました九州電力株式会社小丸川発電所建設所ならびに小丸川発電所新設工事の各現場の企業体の皆様、山口団長をはじめ現場見学を企画して頂きましたダム工学会現地見学会小委員会の皆様に深く感謝し御礼申し上げます。
( 八千代エンジニヤリング株式会社 片山善郎 )
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