一般社団法人ダム工学会
 
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☆ 小丸川発電所見学記(2) ☆

 

 ダム工学会主催第26回ダム現地見学会の第2日目(6月11日 金曜日)は、小丸川発電所の見学を行いました。

 見学当日の未明から早朝にかけて台風4号が接近し、見学会の実施が危ぶまれましたが、小丸川発電所に到着する頃には台風も通過し、予定通り見学を行うことができました。

 小丸川発電所は、宮崎県木城町を流れる一級河川小丸川の支川大瀬内谷川の最上流部(標高約800m)に上部調整池を、小丸川本川の中流部(標高約100m)に下部調整池を設け、この間を約2.8kmの水路で連結して最大出力120万kWの発電を行う純揚水式発電所です。ここでは、地下発電所及び下部ダムについて報告致します。

 

1.地下発電所

 地下発電所は、水路系のほぼ中央、地表から約400mの地下深部に位置します。地下発電所空洞は、概ねCH級の花崗閃緑岩体中に配置された、幅24m、高さ48m、長さ188m、掘削容積約16万m3の大規模地下空間で、大断面NATM工法が採用され、平成13年4月により約2年間をかけて掘削工事を終えています。見学時の工事進捗状況は約67%で、水車・発電機の基礎や制御装置等を設置するための構築工事が行われていました。

 空洞断面積は約1,000 m3で、通常の道路トンネルの10倍以上の規模と説明をおけましたが、間近にみた地下空洞の規模は、見学に訪れた我々を圧倒するものでした。

 

写真−1 地下発電所施工状況

 

2.下部ダム

 下部ダム(石河内ダム)は、堤高47.5m、堤頂長185.0m、堤体積(減勢工含む)約13.3万m3のコンクリート重力式ダムであり、見学時の工事進捗状況は約73%でした。ただし、見学当日は台風通過直後であったため、残念なことに本体打設は行われていませんでした。

 下部ダムの諸元上の特徴として、その流域面積が329km2と広く、設計洪水流量が4,400m3/sec.と非常に大きいことが挙げられます。このため、非常用洪水吐施設として国内有数の大型クレストゲート(高さ16m×幅10m)4門を有し、また減勢工の規模も幅50m、長さ87m、側壁高23mと非常に大きいことから、特徴的なダム形状であることが印象的でした。

 コンクリート打設は、放流設備の多いダム形状及び合理化施工を考慮して、レヤーブロック工法(2m/1リフト)で行われています。ダムサイトが南九州に位置し、リフト厚が若干厚めであることから、コンクリートの温度対策に関して多くの質問がありましたが、@コンクリート混和材としてフライアッシュを使用、A岩着部及び長期放置箇所のハーフリフト打設、B岩着部の夜間打設実施、C夏期日中の重要ブロック打設禁止等の対策が取られているとのことでした。

 コンクリート打設設備は、タワークレーン(16.5t×75m)+コンクリートバケット(4.5m3)で構成されています。堤体積規模に対してタワークレーンがオーバースペックである印象がありましたが、地下発電所空洞の掘削ズリを有効利用している骨材が非常に良質で、ダムコンクリートの単位体積重量が約2.53t/ m3もあるため、一般的な規模よりも大きなスペックを採用しているとのことでした。

 

 

写真−2 左岸側より下部ダムを望む

 

写真−3 減勢工より下部ダムを望む

 

 また、下部ダム地点の近傍にクマタカの営巣地が確認されていることから、対策として、仮設備の低明度・低彩度塗装やコンクリート構造物への低明度ネットの設置等が施されており、一見して視覚的に落ち着いた印象を受ける現場でした。

 

写真−4 低明度・低彩度塗装を施された基礎処理工中央プラント

 

 最後になりましたが、本見学会で案内・説明及び質疑応答に対応して頂いた九州電力鰹ャ丸川発電所ならびに企業体の皆様、また見学会を企画・開催して頂いたダム工学会現地見学会小委員会の皆様に厚く御礼申し上げます。

〔株式会社ニュージェック 岡ア 博〕

 

 

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