一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

☆ 胆沢ダム見学記

 

 

1.はじめに
 ダム工学会主催の第30回現地見学会が6月7日〜8日の2日間にわたり開催されました。今回の現場は、胆沢ダム、玉川ダム、鎧畑ダムおよび森吉山ダムの4ダムでここでは、第1日目に見学した胆沢ダムについて報告します。


2.胆沢ダムの概要

 胆沢ダムは北上川流域において洪水調節、河川環境保全等のための流量確保、かんがい用水・水道用水の供給、発電を目的としています。我が国最大級のロックフィルダムで、完成されるとフィルダム堤体積が国内第3位、フィルダム堤高が国内第8位となります。
 胆沢ダム建設地の上流約1.8km地点に石淵ダムがあります。石淵ダムはロックフィルダムとしてはじめて建設に着手し、昭和28年に完成しました。今日まで地域の発展に大きな役割を果たしてきましたが、近年の相次ぐ洪水被害や水需要に応えきれなくなっています。そこで胆沢ダムが建設されることとなり、胆沢ダム完成後は湖面下に水没します。

 

表1 胆沢ダム、石淵ダムの緒元

 

 

胆沢ダム 石淵ダム 比較



形式 中央コア型ロックフィルダム 表面遮水型ロックフィルダム

   地質

石英安山岩類 石英粗面岩
堤頂標高   (EL.m) 364.0 323.0
堤高              (m) 132.0 53.0 2.5倍
堤頂長           (m) 723.0 345.0 2.1倍
堤体積         (m3) 13,500,000 442,100 30倍




流域面積      (m2) 185.0 154.0
湛水面積      (m2) 4.4 1.1 4倍
総貯水容量   (m3) 14,300万 1,615万 9倍
有効貯水容量(m3) 13,200万 1,196万 11倍
洪水調節容量(m3) 5,100万 560万 9倍
利水容量      (m3) 8,100万 636万 13倍

 

3.見学の内容

@胆沢ダム学習館での工事概要説明会
 「胆沢ダム建設事業費の現状」と題しまして、胆沢ダム工事概要説明会が行われました。胆沢ダムは平成17年10月より堤体盛立が開始され、盛立開始式には220名参加されたそうです。ロック材は大森原石山、コア材は慶存地区、フィルタ材は小松谷木地区、迎市野々地区などで採取しています。材料の運搬には90t(ロック材)、55t(コア・フィルタ材)のダンプトラックを使用しています。コア材は慶存地区で採取し、ベルトコンベアで小松木谷地区に運搬します。


写真-1 胆沢ダムサイト
(展望台より望む)

 

 平成15年2月より施工業務を分離発注するCM(コンストラクション・マネジメント)方式を採用しており、「確実な品質の保持」「徹底的なコスト縮減」「施工プロセスの透明性の向上」が図られています。
地域との関わりも深く、胆沢ダム学習館への来館者は現在で約8万人になるそうです。学習館の床、机、椅子はすべて木製で、木の温もりを感じる心地よい造りになっておりました。

 

A原石山
 ロック材の採取場である大森原石山を見学しました。原石山では6.5、12m3のバックホウによりダンプトラックへの積込み作業が行われていました。発破は1日に1〜2回で、ベンチ高は15mです。原石山のスケールの大きさから、近くで見ると大きいはずのバックホウ、クローラドリルが小さく見
えたのが大変印象に残っています。
 


写真-2 大森原石山ロック材積込み作業中


B石淵ダム
 石淵ダム上流側の谷子沢地区で胆沢ダム建設に伴い地すべりが懸念され、対策工として押さえ盛土が行われていました。盛土の材料は大森原石山で廃棄岩と判定された材料を使用しています。
私たちが立っていた石淵ダム上部付近より20〜30m高い地点に胆沢ダム完成後の常時満水位が記されており、現在まで役目を果たしてきた石淵ダムの哀愁を感じました。

Cダムサイト河床部
 最深部である河床部ではブランケットグラウチングが完了し、今年の4月よりコアの盛立が開始されました。現在の総盛立量は32万m3余りでまだ全盛立量の2%強です。
盛立に使用する重機械にはGPSを搭載し、3次元ナビゲーションシステムを活用したIT施工を行っており、施工の効率化・省力化を図っています。

D胆沢ダム学習館での質疑応答
 CM方式の利点や問題点などを中心に質疑応答が行われました。CM方式はコスト縮減や技術の向上など利点が多くありますが、工事を前後に分けると、前の工事に後の工事が制限を受けるなどの多少の問題があるそうです。工事の方式に対する現場での考えをお聞きできて大変参考になりました。

4.おわりに
 最後に本見学会で案内、説明および質疑応答に対応して頂いた胆沢ダム工事事務所、胆沢ダム建設共同企業体の関係各位および見学会を企画して頂きましたダム工学会現地見学小委員会の皆様に厚く御礼申し上げます。

[潟Aイ・エヌ・エー 保坂 幸一]

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