行事報告
1.はじめに
ダム工学会主催の第30回現地見学会が7月6日〜7日の2日間にわたり開催されました。今回の現地見学会は東北地方の胆沢ダム、玉川ダム、鎧畑ダム、森吉山ダムの各ダムで、胆沢ダム,森吉山ダムの両ダムは日本を代表する大規模ロックフィルダムでCM方式を活用した施工をしており、玉川ダムはRCD工法の先駆的なダム、また鎧畑ダムは利水放流管を増設するために堤体削孔を行ったダムとそれぞれ特徴のあるダムです。ここでは第2日目に見学した森吉山ダムについて報告致します。
2.胆沢ダムの概要
森吉山ダムは、秋田県の北部に位置し、一級河川米代川水系阿仁川右支川小又川に国土交通省東北地方整備局が建設中の中央コア型ロックフィルダムで、洪水調節,流水の正常な機能の維持,かんがい用水の供給,水道用水の供給および発電を目的とした多目的ダムです。ダムの諸元は堤高89.9m、堤頂長786m、堤体積585万m3で、平成15年10月からロック材の盛立を開始し現在まで約430万m3を盛立てており、平成19年6月に盛立完了を予定しています。 |
写真―1 森吉山ダム(上流から望む) |
洪水吐は総コンクリート量14.4万m3のうち、13.8万m3の打設を完了しており、今年9月の打設完了を目指しています。
3.ダムサイトの地質とスレーキング対策
ダムサイトの地質は新第三紀中新世のグリーンタフに属しており、泥岩、安山岩質火山レキ凝灰岩、軽石凝灰岩、石英安山岩質細粒凝灰岩、玄武岩〜安山岩、粗粒玄武岩などが分布しています。火山レキ凝灰岩のうち、チョコレート色の火山レキ凝灰岩〜凝灰岩はモンモリロナイトを含み、スレーキング特性があることからチョコタフとして区分しています。基礎掘削時のスレーキング対策としてチョコタフや泥岩などではフレッシュな岩盤を出した上で、24時間以内に5cmのモルタル吹付けを行っています。
4.堤体工、洪水吐工
原石山は堤体の上流約7kmに位置し、ロック材、粗粒コア材、コンクリート骨材を採取しています。フィルター材は湛水池内の段丘堆積物を採取しています。気象条件が厳しく工事期間は4月から12月初旬までで、特にコアの盛立施工可能日数は88日と他ダムに比較して少ないことが特徴です。そのような条件のもと、コアの撒出し厚さを当初の20pから30pに変更し、10t振動ローラで転圧することで合理化を進めています。またフィルター材の撒出し厚さも40pから60pに変更しています。
洪水吐は堤体左岸側の地山部に設置されており、コンクリート打設にはクローラクレーン(150〜200t)を使用し、3箇所に分けて施工しています。夏期はコンクリート温度の上昇を抑えるため、夜間打設に切り替えるとのことでした。
現場全体の感想としては大型重機土工が中心でありながら、整然と施工が進められており、安全面,環境面ついても細かい配慮がなされていると感じました。
写真―2 原石山
写真―3 洪水吐
5.分離発注とマネジメント技術活用
森吉山ダム本体工事は第1工事(盛立,洪水吐他)と第2工事(原石採取,骨材製造)に分離発注されたフィルダムでは初めてのケースであり、両工事の施工調整など発注者側に立った監理業務を民間委託するマネジメント技術活用(CM)方式が導入されています。CM方式を活用することで品質の保持、コスト縮減、コスト構造の明確化、施工全体の透明性の向上、確実な現場管理の推進などの効果を上げています。 |
図―1 施工管理システム |
6.おわりに
最後に今回の見学会に際し、大変お忙しいところを御説明、御案内頂きました東北地方整備局森吉山ダム工事事務所ならびに本体工事の各共同企業体、監理業務共同企業体の関係各位、そして今回の見学会のコーディネーターを務め頂いた城島団長を初めダム工学会現地見学会小委員会の皆様に厚く御礼申し上げます。
[滑ヤ組 石井 治男]
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