行事報告
ダム工学会主催「第30回ダム現場見学会」の2日目に見学した玉川ダムと鎧畑ダムについて報告いたします。
玉川ダムと鎧畑ダムは、秋田県仙北郡田沢湖町の雄物川水系玉川に建設されたダムです。
玉川は雄物川の最大支川で、田沢湖町の大深岳(標高1,541m)を源とし、途中渋黒川、生保内川、桧木内川などを合わせ、大曲市花館で雄物川に注いでいます。
図−1 流域概要図
1.玉川ダム
玉川ダムは、洪水調節、河川環境保全等のための流量確保、農業用水の補給や都市用水の供給、水力エネルギーの開発と多岐にわたる目的を有しており、秋田県地方の生活基盤・産業基盤を築くうえで大きな役割を担っています。
事業は昭和46年予備調査に始まり、昭和53年補償基準妥結、昭和55年には水没関係者移転完了、同年本体工事に着手して昭和62年に本体コンクリート打設を完了しています。
このように極めて異例なスピードで順調に事業が進展したことは、地域における玉川ダムへの期待の大きさと事業関係者の並々ならぬ努力によるものと思います。 |
写真−1 玉川ダム全景
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玉川ダムの第1の特徴は、100mクラスのダムで始めてRCD工法を適合して完成させたということです。
施工に当たっては、品質の向上と施工速度の増進を図るため、RCD工法として初めて最大骨材寸法150mm材を用い、100cmリフトによる施工を実現させ、さらにインクライン設備を初導入して実質工期26ケ月間で115万m3の打設を達成するなど、様々な創意工夫を図り、RCD工法の発展に寄与したダムの一つと言えます。
第2の特徴は、ダム事業の一環として玉川の酸性水対策が施されています。
玉川上流の渋黒沢源流域には硫酸・塩酸分を含む玉川温泉が湧出しており、強酸性の玉川の流れは長い間、下流農民を苦しめてきました。
そのため、河川水の中性化と田沢湖の蘇生を目的とする中和処理施設が上流に整備・運用されています。
中和処理は粒状の石灰石が大量に詰まった中和反応槽に酸性水を流入させて中和させる方法を採用しています。
今回、技術力の英知を結集させて築造し、また地域に大きな効用をもたらし愛されている玉川ダムを見学でき、ダム屋の一人として感激したとともに、建設に携わった関係者に深く敬意を表します。
2.鎧畑ダム
鎧畑ダムは、玉川ダム下流7km地点に位置し、洪水調節と発電を目的とする重力式コンクリートダムです。
雄物川4大支川の第1号ダムとして国土交通省が事業を開始して昭和27年に本体工事を着手、昭和32年に完成、翌年管理・運営が秋田県に移行されています。
ダムは堤高58.5m、堤体積19万m3と中規模でありますが、標準断面図には傾斜継目が見受けられます。
酸性水対策としては、本体コンクリートに高炉セメントを使用、将来取替え不可能な止水板は、ステンレス鋼板・アスファルトシール・銅板の3重構造にするなど工夫がされています。 |
写真−2 鎧畑ダム全景
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また、玉川ダムの利水放流計画から、下流に位置する鎧畑ダムでも最大69.1m3/sの放流が必要となり、平成元年に利水放流設備の新設工事が実施されています。
この利水放流設備の工事は、玉川ダム建設工事の一環として行われ、φ3200mmの放流管を既設堤体内に設置したものです。
堤体コンクリートの削孔は、衝撃・振動の影響が小さいトンネル用自由断面掘進機を用いて施工されています。
図−2 利水放流設備一般図
(クリックで拡大表示します)
最後に、多忙な折り、ご説明とご案内を頂いた国土交通省東北地方整備局玉川ダム管理所、秋田県鎧畑ダム管理事務所の皆様、城島団長、当見学会を企画案内頂いた現地見学会小委員会の各位に深く感謝いたします。
[株式会社 ドーコン 板東 格哉]
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