高瀬川・黒部川の堆砂と対策
潟tジタ土木本部土木統括部ダム部 根岸善徳
黒部川と千曲川水系高瀬川の水源となる北アルプスの山々は、第三紀以降に断層活動を伴って急激に隆起したもので侵食が著しい特徴があり、保水能力の低い花崗岩類でできているため、豪雨時には大規模な崩壊地から多量の土砂がダム湖に流れ込む問題をかかえている。
北アルプスの裏銀座コースの玄関口である高瀬ダム左岸の不動沢、濁沢上流には、大規模な崩壊地があり、ダムの堆砂実績は約63万m3/年と計画の約1.7倍の速度で堆砂が進んでいる。一方、北アルプスの鷲羽岳を源とする黒部川流域には年平均4,000mmもの降水量があり、上流部の7,000箇所もの崩壊地から平均勾配約1/40の急流河川を通じて、年間約140万m3もの土砂が黒部ダム〜出し平ダム〜宇奈月ダムに流入している状況である。
ダムの堆砂は、発電電力量及び洪水調節機能の減少、ダム上流での河床上昇、ダム下流域の河床低下や海岸侵食に繋がり、様々な不具合が生じる恐れがある。このため高瀬ダムでは、沢部の堆積土砂をダンプトラックで下流に搬出し、埋戻し材等として有効利用しているが、これには多額の費用が要され、抜本的な解決策がない問題を抱えている。
また、黒部川では出し平ダムと宇奈月ダムに排砂ゲートを備え、河川の自然の洪水を利用した連携排砂・通砂が行われている。これはこれまでの様々な協議と技術の積み重ねの元に実施されており、現在も数多くの調査結果を綿密に分析し運転管理されているご苦労が伺えた。
今回、幾多の困難を克服して建設されたダム群を見学させていただき、先人の苦闘と心意気、また現在もダムの運用管理において、様々な自然環境に配慮されながらご苦労されているダム技術者に改めて敬服した見学会であった。
|