一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

☆ 尾原ダム見学記 ☆

 

 

1.概 要
(1) 計画概要
 斐伊川・神戸川の治水計画は、斐伊川上流の尾原ダム、神戸川上流の志津見ダムの「2ダム」、中流に設ける「斐伊川放水路と神戸川の改修」、下流の宍道湖と中海を結ぶ「大橋川の改修」で策定されており、上流〜下流の流域全体で治水機能を分担する、「3点セット」で計画されている。
 尾原ダムは堤高90m、堤体積661千m3の重力式コンクリートダムで、洪水調節、河川環境の保全、水道用水の供給を目的とする多目的ダムである。
(2) 施工計画概要
 平成17年度より転流工工事に着手し、平成18年7月に堤体基礎掘削、コンクリート打設は平成19年7月〜平成22年3月末とし、平成22年度内に試験湛水を完了させ、平成23年度より供用開始する計画である。
 河床部より高さ32mまではダンプ直送によるRCD工法、その上部37mは21t級タワークレーンと13.5t級のライジングタワーを使用したRCD工法、その上部21mは拡張レヤ工法によ る打設工法が計画されている。


2.現地の状況

 ダムサイトは、堤体基礎の粗掘削が概ね終了し、減勢工コンクリートの一部が打設されている状況にある。まさに、ダムサイトで実施された地質調査の妥当性の審判を受ける時といえる。
ダムサイト上流の左には支川があり地形が大きく広がり、貯水池容量確保の点で有利なサイトと思われる。この支川と斐伊川本川との間の比高20〜30m程度を掘削した平坦部に骨材製造プラントがコンパクトに配置されている。
ダムサイトの河床幅は30m程度と狭く、右岸斜面は比較的急勾配であるが、左岸斜面はやせ尾根の地形となっている。左岸アバット部は、花崗岩のマサ化により、現掘削よりさらに地山方向に70m程度掘削を追い込み、掘削量700,000m3、堤体コンクリートが約30,000m3増加する計画とのことである。当初設計では、掘削除去し堤敷全体をCL級とする計画であったが、コスト縮減のためマサ化している部分のD級地盤内のCL級を基礎にするとの見解で、現掘削線に変更したようである(写真-2参照)。


写真-1ダムサイト右岸展望台より上流を撮影
 
 
写真-2ダムサイト右岸展望台より左岸を撮影
 
 しかしながら、高位標高のため打設までに時間がかかり、風化によりCL級岩盤もマサ化する可能性があることから、当初設計に戻すとのことである。調査時に把握していたことであり、コスト縮減の難しさを痛感する次第である。マサ化した基礎のグラウチング工事の難しさを考えると、掘削線を追い込むことは、適切な判断ではないかと個人的には感じる。
 下流を見渡すと数件の民家が見える。ダムサイトの諸工事では、騒音・振動の計測を行い、住民に対する配慮が十分に行われているようである。利水放流バルブ等も水中減勢工方式とし、宇奈月ダムなどで指摘された低周波対策を講じた結果とのことである。
 原石山、ダムサイトの基礎岩盤は、ともに、白亜紀〜古第三紀の花崗岩、閃緑岩である。原石山は、表土除去をしている段階とのことで、直接、河床部で工事状況を見学することとなった。昨年7月上旬に堤外仮排水路トンネルの流下能力360m3/sを超える推定750m3/sの洪水により、上流仮締切堤の越水があったようだが、発注者、施工者共同企業体の努力によって約1週間程度で復旧できたとのことであり、現場内で当時の被害状況を伺わせるものはなかった。
 
写真-3右岸展望台よりダムサイト河床部を撮影


3.おわりに
 中国地方のダム建設現場を見る機会は少なく、貴重な体験ができたと関係者にお礼を申し上げます。これからの現場という印象であり、事業者、施工業者の方々によって、素晴らしいダムが建設されることを期待しております。

[日本工営梶@札幌支店 越智法義]

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