一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

☆ 当別ダム見学記 ☆

 

1.はじめに

 第35回ダム現地見学会は、平成21年10月15、16日の両日、建設中の夕張シューパロダム(施主:北海道開発局)と当別ダム(施主:北海道)で開催された。今回は(社)日本大ダム会議とダム工学会との共催として開催され、当日の参加者は、建設会社、建設コンサルタント、ダム事業者、電力会社などからの36名であった。ここでは当別ダムについて報告する。
 第2日は、鹿島・竹中土木・岩倉共同企業体事務所において、北海道札幌土木現業所当別ダム建設事務所上野所長より当別ダム事業概要の説明を頂き、その後、同中瀬第一技術係長より工事の概要、特徴及び工事進捗についての説明を受けた。その後下流展望台に移動し、堤体工事の説明を受けた上で、CSG製造設備、堤体打設現場の順路で、絶好の天候にも恵まれて、現地でCSG機械設備が稼働している状況を見学できた。

2.当別ダム

 当別ダムは、石狩川水系当別川の北海道石狩郡当別町字青山十万坪地先に建設する多目的ダムである。同ダムは、台形CSGダム型式をダム本体に日本で初めて採用した高さ52m、堤頂長432m、堤体積81.3万m3のダムである。
 台形CSGダムの特徴は、ダム建設工事の設計・材料・施工の合理化を同時に達成することが可能で、コスト縮減と環境保全の効果が期待できるとされ、同ダムでも堤体材料には基礎掘削により発生する河床砂礫を有効利用して高速施工を追求している。


図-1当別ダムの位置(パンフレットより)
 

(1)当別ダムの計画及び工事概要(4)現場
 当別ダムの標準断面図を図−2に、ダムの諸元を表−1に示す。ダムの目的は、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水、水道用水の供給である。当ダムは台形CSGダムに平成17年構造変更し、平成20年度から本体工事に着手しており、平成24年度の完成を予定している。
 平成21年10月末現在の進捗率は、堤高で20m、堤体積約342,000m3で進捗率48%、全体で51%(事業費ベース)である。


図-2 ダム標準断面図及び諸元


写真-1 ダム施工全景

(2)当別ダムの地質
 当別ダムの地質は新第三紀の望来層(シルト、砂岩)を基盤として、これを覆って段丘堆積物、崖錐堆積物が分布している。

図-3 当別ダムの地質
(3)台形CSGの施工
 1) CSG材製造
 CSG材は、基礎掘削に伴い発生する20m程度の厚さで堆積する河床砂礫を母材としている。これにより、基礎掘削工事と材料採取工事を兼ねることができ、大きなコスト縮減が図られている。また、材料採取に係わる残土処理も少なくなり、環境への影響を低減できる。
 また、上流締切を当初計画より上流へ移動する計画上の配慮により母材採取量を確保して、設計の合理化を図っていた。
 CSG材製造時の粒度管理では、−80mmが3%と、母材である河床砂礫は細粒分が多いことから、グリズリなどによるオーバーサイズの除去は原則行っていない。
 また、単位水量管理では、母材の自然状態の単位水量170kg/m3に対して、3ヶ月程度仮置きすることでCSG単位水量100〜140kg/m3まで低減できる。
 CSG材の貯蔵は、一次ストックを3日分27,000m3、二次ストック1日分9,000m3を確保し、高速連続施工に対応している。

 2) CSGの製造
 CSGの製造は、製造能力250m3/hを有するSPミキサを2基配置しており、高速連続製造による工程短縮を図っている。
 製造管理では、打設開始から3ヶ月までは、1時間に1回の粒度試験と大型供試体試験を実施していたが、データ蓄積により、現在では試験頻度を減らしている。

写真-2 CSG製造設備(SPミキサ)


写真-3 CSG大型供試体

3) CSG運搬、打設
 CSGは、55tダンプにより堤体へ直送しており、CSGの打設は、敷き均しを28tブルドーザ、転圧は11t振動ローラにより行っていた。
 現在までの打設実績は、日平均4,000m3/日、日最大8,000m3/日であり、月最大は117,800m3(今年11月)を予定している。

写真-4 CSG運搬状況


写真-5 CSG敷き均し状況

 細部施工では、台形CSGダムの特徴である保護コンクリートに施工するCSG法肩締固めの施工、プレキャスト施工が行われており、高速施工に対応した機械配置や施工が行われていた。また、先進的なIT技術を取り入れ、CSG敷き均し、転圧では厚さや転圧回数をGPSにより総合的に管理していた。
 現在、最大打設月相当で最盛期にあたり、CSGは機械施工が主体となっており、コンクリート工事との工程上の調整(マッチング)が現場施工で苦労している点であることを企業体の方より説明を頂いた。

写真-6 プレキャスト型枠設置状況


写真-7 CSG施工状況
(4)現場での質疑応答
 現場では、前例のない高速施工が求められており、従前の品質確認方法とは相違がある場合、その調整に発注者、施工者ともに苦労されている点の説明を受けた。
 また、個別の細部施工技術では、先進的な技術を取り入れており、現場で創意工夫を積極的に実施している点について活発な意見交換が行われた。

写真-8 現場事務所での概要説明及び質疑

3.おわりに

 ダムの建設事業が縮小する中、新しい型式の台形CSGダムで建設される当別ダム見学させていただき、また具体的な現場での創意工夫や苦労話を伺い、意見交換ができたことは大変有意義でありました。
 とくに、CSGの理念である設計、材料、施工の合理化を具現化している現場の最盛期を見学できたことは、大きな財産になったと思います。
 今回の見学会にあたっては、建設工事が最盛期の中、北海道札幌土木現業所当別ダム建設事務所の皆様、鹿島・竹中土木・岩倉企業体の皆様をはじめ関係各位に深く感謝申し上げるとともに、見学会開催にご尽力頂きました、社団法人日本大ダム会議、ダム工学会の関係各位に御礼申し上げます。

 [前田建設工業梶@上馬場 靖]

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