行事報告
1.はじめに
「ダム工学会第35回ダム現地見学会」の第1日目に見学した夕張シューパロダムについて報告します。
夕張シューパロダムは、夕張市南部の石狩川水系夕張川に建設中の重力式コンクリートダムで、下流域の洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の補給、水道用水の補給、および発電を目的とする多目的ダムです。
夕張シューパロダムは、昭和37年に建設された大夕張ダムの下流約150mに再開発事業として建設されるダムで、その規模は、ダム高110.6m、堤体積940,000m3、有効貯水容量367,000千m3であり、既存の大夕張ダムの有効貯水容量80,500千m3に対し、4.5倍以上のスケールを持つダムです。
ダム建設工事は、平成17年から開始され、基礎掘削が終り、本年度から堤内仮開水路に転流し、現在、本格的な本体コンクリート打設が行われています。見学会当日は、既に20万m3以上の本体コンクリートの打設が完了し、11月からの冬期打設休工に向けて急ピッチに施工が行われていました。
見学会では、現地のインフォメーションセンターにてダム事業や工事の進捗状況の説明を受けた後、ダム本体の施工箇所、骨材製造設備の見学を行い、その後、質疑応答を行いました。
写真-1 夕張シューパロダム全景
(左岸下流より撮影、右奥が大夕張ダム)
写真-2 堤体打設状況の見学
写真-3 堤体打設状況の見学
2.コスト縮減への取り組みと環境への配慮
夕張シューパロダムの原石山は、ダムサイト上流11kmの遠方にあり、採取する原石は、コンクリート骨材の原石として良好なものを原石T、若干劣るものを原石Uとしています。通常のダムであれば、原石Uは廃棄岩となりますが、原石Tと原石Uを混合して使用することで、廃棄岩の削減・コスト縮減が図られています。原石Tと原石Uの判別は、原石採取の効率が落ちるものの、原石採取時に目視や性状観察によって行われ、品質確保が図られています。また、原石T,Uの混合割合、転圧回数等は、事前の試験施工によって定めているとのことでした。
また、骨材製造設備は、ダムサイトと原石山の中間地点の移転した旧集落地にあり、騒音の少ない製砂設備の導入、濁水処理の脱水ケーキを付替道路の盛土材に利用するなど、周辺環境への配慮がなされていました。
写真-4 骨材製造設備の見学
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3.再開発事業の苦労
夕張シューパロダムは、既設の大夕張ダムの下流約150mの位置で施工が行われています。大夕張ダムは、夕張シューパロダムが完成するまでは通常の運用を行う必要があり、様々な苦労があったそうです。とりわけ、大夕張ダムの直下流に発電所があり、夕張シューパロダムと隣接することから、掘削時の振動には細心の注意を払ったとのことでした。
4.地域住民との関係
夕張シューパロダムは、下流域の治水・利水面で重要な役割を果たすダムで、早期完成に対する要望が強く、また、地元住民の皆さんとも良好な関係を築いているとのことでした。
また、インフォメーションセンターには、ダムの目的、施工方法、大夕張ダムと夕張シューパロダムの歴史などの説明が、非常に分りやすく展示・説明されており、学生さんなど、多くの見学者が訪れているそうです。
さらに、大夕張ダムの貯水池には、廃線となった炭鉱鉄道の橋梁が残されており、この橋梁は、夕張シューパロダムが完成すると水没しますが、その橋梁の一部を移転保存することが計画されているそうです。
5.おわりに
今回の現地見学会では、100mを超える大型なダムにおけるコンクリート打設の最盛期の状況を見ることができ、近年ではなかなか見ることが出ない、貴重な体験をさせて頂きました。
最後になりましたが、11月からの冬期打設休工前で非常にお忙しい中、貴重な時間を割いて本見学会の案内、説明、および質疑応答に対応して頂いた北海道開発局、ならびに各企業体の皆様に、また、見学会を企画・開催して頂いたダム工学現地見学会小委員会の皆様に、厚く御礼申し上げます。
[日本工営(株) 原 基樹]
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