一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

☆ 浅瀬石川ダム見学記 ☆

 

1.はじめに

 ダム工学会主催の第36回ダム現地見学会の1日目の、既設の浅瀬石川ダム、沖浦ダムの見学、講演について報告する。なお、日程は、以下のとおりである。 10月7日午後:浅瀬石川ダム、沖浦ダム見学、ダム工学会会長入江洋樹氏による講演

2.浅瀬石川ダム

2-1.概要
 浅瀬石川ダムは、洪水調節、流水の正常な機能の維持、上水道、発電を目的とした多目的ダムである。なお、浅瀬石川発電所は、青森県内の水力発電の中で十和田発電所についで第2位に位置する大きい発電所となっている。
 諸元は、堤高91.0m、堤頂長330.0m、堤体積700,000m3、流域面積225.5(km2、湛水面積2.2(km2、総貯水容量53,100千m3、有効貯水容量43,100千m3である。建設省東北地方建設局により発注され、熊谷組・竹中土木共同企業体によって施工された。再開発事業の先駆けのダムであり、スリーブ工法、連続地中壁の施工、ベルトコンベヤ打設工法など、当時としては新技術を採用し、昭和46年に着手し昭和63年に竣工した。

2-2.特徴
 浅瀬石川ダムは、浅瀬石川沿岸の水田に必要な水を補給する。主に農業用などの灌漑用水として、浅瀬石川下流の7,700haに用水を供給するだけでなく、水辺の景観や水生動物の生息場所の保持など、自然環境を維持する機能も備えている。また、堤頂のゲートハウスは、屋根を白色、壁をピンク色としている。これは、白が岩木山の冠雪、ピンクがリンゴと津軽乙女の情熱を表している。地域風土がダムのデザインに活かされており、強く印象に残るものだった。


図-1 浅瀬石川ダム全景(事務所配布資料)
 

図-2 浅瀬石川ダムの発電所
 

3.沖浦ダム

3-1.概要
 沖浦ダムは、貯砂ダムである。諸元は、堤高40.0m、堤頂長171.0m、堤体積81,000m3、総貯水量3,583千m3である。

3-2.特徴
 当初、浅瀬石川沿い21町村6,687haの灌漑用水補給、発電を目的とした国内初の多目的ダムであった。しかし、貯水容量が小さく、水需要に対する必要量を満たすまでには至らなかった。さらに、洪水調節の機能拡大の要求も高まったため、浅瀬石川ダムを建設することになり、水没することとなった。水没に伴い、堤体の一部を切り欠く改造を施すことにより、改造部を切欠き量水堰、非取壊し部を貯砂ダムとして再利用することとなった。



図-3 沖浦ダムの改造部分



図-4 沖浦ダムの堆砂状況

4.講演について

 ダム工学会会長入江洋樹氏により「21世紀のダムビジョン」と題し、講演が開かれた。講演では、
 @ ダムの果たしてきた役割
 A 現状のダムの抱える課題
 B 世界の水問題
 C ダムに求められる今後のニーズと方向性
 D 21世紀のダムビジョン〜ダムが語る1000年物語〜
  ・ダム再開発の今後の方向
を話され、以下のことに理解を深めることが出来た。

@ダムの果たしてきた役割については、ダムを建設しなかった場合、利水が不足することや、投資額約3.7兆円に対し、15年で被害軽減額約4.2兆円とダムに対する投資効果が実績としてあること。
A現状のダムの抱える課題については、環境対策を実施していることやアカウンタビリティを実行し、学識経験者、関係住民の意見を反映させるなどを行っていること。
B世界の水問題については、地球温暖化を1つの要因とし、世界的に洪水の発生回数の増加が著しいことから、ダムの必要性が高いこと。
Cダムに求められる今後のニーズと方向性では、我が国の食料自給率40%と低い事などから、農業用水を含んだダムが不可欠であること。
D21世紀のダムビジョンでは、既設ダムを有効利用すること、日本の高い技術力を世界で展開させること。また、「ダムの再開発の今後の方向」では、
 ・ダム再開発の必要性
  @ 機能の向上
  A 機能の長期化
  B 機能の回復
 ・ダム群の再編、連携  ・平衡堆砂
 ・超過洪水対策     ・再開発の技術開発
 ・危機対応ダム     ・日本のデフレ
 ・市場原理       ・「見えざる手」とは何か
 ・デフレに克つためには
を話された。優良なダムサイトが減少したことから既設ダムの貯水容量を拡大、有効活用、放水能力を向上させるなど、機能面を向上させることが課題であることがわかった。また、近年集中豪雨が多発していることから、超過洪水対策が必要となることがわかり、今後の課題の多さを実感した。さらに、技術を向上させることにより、国内だけでなく海外からも需要が増え、デフレに克つことが出来るのではないかと話されていた部分では、大いに賛同する事ができた。

5.1日の感想

 筆者は、ダムに関する経験、知識が浅いため、今回の現地見学会に参加し、沖浦ダムの堆砂状況、浅瀬石川ダムの堤体内を見学することが出来たことは、今後の業務の大きな力となると思う。特に、見学前まで理解しにくかったゲート関連を見ることが出来たため、理解が深まった。講演会についても多くの知識ある方の意見を聴くことで、今後どういったことを行うことがダム技術者として相応しいかが少し見えてきた気がする。

6.おわり

 最後に本見学会で案内、説明および質疑応答に対応して頂いた東北地方整備局浅瀬石川ダム管理所、津軽ダム工事事務所の関係各位および見学会を企画して頂きましたダム工学会現地見学小委員会の皆様に厚く御礼申し上 げます。

 [潟Nレアリア 事業本部 河川技術部 神田 貴行]

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