一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

☆ 清渓川(チョンゲチョン) 見学記 ☆

 

1.はじめに

 「ダム工学会第37回ダム現地見学会」の第1日目に見学した清渓川について報告します。
 ソウルの街中を流れる清渓川は、以前から周辺住民が生活排水を流入する下水道代わりの河川として利用されてきたが、梅雨時の大雨による家屋への浸水などにより汚染が進行し、伝染病の温床となっていた。そこでソウル市は周辺住民を強制移住させると共に、1958年から川に蓋をして道路が作られ、さらにその上に高架道路が作られて、清渓川は完全に暗渠となった。
 その後30年が経過し、老朽化した高架道路は度々改修されてきたが、李明博(イミョンバク)大統領が清渓川の復元を2002年4月のソウル市長選挙で公約に掲げ当選したことをきっかけに、計画から3年という異例のスピードと莫大な費用をかけて清渓川復元事業が施工されました。今回、清渓川の起点側から約1kmを散策した後、清渓川文化館に訪れました。


図-1 清渓川周辺位置図
 

2.清渓川復元事業概要

          表-1 復元事業概要と事業費

 復元事業は、高架橋を完全撤去し景観に配慮しつつ清渓川を清流に戻す事業であり、施工延長5.8kmを3工区に分割しターンキー方式で発注している。
 事業効果としては周辺地域開発が活性化され成長潜在力(ソウル自体のブランド力)も高まり、国際金融と北東アジアビジネスの中心地として国際的な競争力の向上が期待できるとしている。
 なお、清渓川は定常的な水量確保が難しいため、漢江原水と地下鉄から発生する地下水を主用水として、高度処理された下水を非常時の補助用水として活用している。


図-2 復元事業工程図
 

3.清渓川現地見学
 清渓川起点はソウル市街地道路の交差点にあり、巻貝のモニュメントから水が溢れ出すという都市型河川としての洗練したイメージを発揮している。河川を下流側に散策していくと、緑地及び淡水魚が出現し始め、次第に自然の豊かな河川へと移行していくように景観されている。また、河川内を仮蓋して広場をつくりイベントを実施したり、夜間はライトアップによる観光スポット化したりすることにより付加価値を創出している。
 なお、所要時間約1.5時間の清渓川バスツアーが、ソウル市により1日5 回運営されており、外国人はもとよりソウル郊外から来た韓国人に人気のスポットとなっている。


写真-1 清渓川起点側全景



写真-2 清渓川河道

4.清渓川文化館見学

 清渓川現地見学に引続き、清渓川の歴史と文化を一目で見られる清渓川文化館では、清渓川を介して見つめたソウルの歴史や河川再生事業について知ることができる施設である。
 受付にて日本語の館内パンフレットをもらい、再生事業の位置をジオラマ模型にて把握し、続いて朝鮮戦争前後に清渓川周辺に広がっていたバラック集落、清渓川復元前の暗渠内地下空間の体験施設、復元工事の過程をパネル・映像・模型を通じて見学した。
 また、文化館と道路を挟んで対岸に当時のバラック集落を復元した建物が立ち並んでおり、かつての日本と面影を重ね合わせた人もいたようです。

写真-2 清渓川流域

5.おわりに

 今回の現地見学会では、初めて海外が対象となり、大変貴重な体験をさせて頂きました。人口4800万人の韓国が強力なリーダーシップの元で勢いのある発展を遂げている様子を肌で感じることができました。
 最後になりましたが、貴重な時間を割いて本見学会の案内、説明、および質疑応答に対応して頂いたK-waterの皆様に、また、見学会を企画・開催して頂いたダム工学会・大ダム会議現地見学会事務局の皆様に、厚く御礼申し上げます。

 [鹿島建設(株) 松本 孝矢]

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