写真-3 越流部詳細図(現地案内板より)
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2.郡南ダム建設の目的
臨津江では、過去に度々洪水が発生しており、1990年代に発生した3つの大洪水では、1兆ウォン(約728億円)の財産被害と、128人の命を奪うという、甚大な被害をもたらした。これら洪水による被害を防ぐ目的で計画された郡南ダムであるが、もうひとつ日本では考えられない目的がある。
2009年6月15日、臨津江上流、北朝鮮の黄江(ファンガン)ダムからの放流が原因とみられる河川の増水により、韓国側でキャンプをしていた6人が亡くなるという、衝撃的な事件が起こった。くしくも、現場は当時建設中であった郡南ダムのすぐ下流であったそうだ。その後、北朝鮮からの公式謝罪により、事前の放流通知に関する取り決めが成されたが、この件により、当初工期2011年8月の完成を、14ヶ月も短縮して2010年6月の完成へと繰り上げている。
このように、郡南ダムは、上流の北朝鮮が有するダムに起因する洪水被害・干ばつ被害を防ぐという目的を併せ持っているのである。干ばつ被害への対策というのは、上流のダムにより、水が流れてこなくなることに起因する水不足への備えである。そのため、一定量の水を貯めておくことも必要であり、本来ならば、もっと貯水容量を増やしたいところであるが、これ以上ダム高を上げると、湛水域が北朝鮮にまで拡がってしまうため、これ以上ダム高をあげることができない。日本は島国であるため、河川そのものが日本の領土である。しかしながら、大陸続きの海外に目を向けてみると、当然ながら他の国を通過してくる河川が多くあり、このような河川の管理の難しさを、改めて感じた。国内でも、水利権に関する問題は難しい課題であるが、地球環境問題が取沙汰され、水不足が問題となっている近年では、隣国との水に関する問題は、より厳しいものになっていくのではないかと感じた。
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3.自然環境への取り組み
郡南ダムの両側は、緩い丘と丘、といった感じで周囲の視界がとても広く、ダムというより河川堰のような印象を受けた。長い堤頂長を持つ堤体の下流右岸側には広大な敷地があり、まるで自然公園のように整備された、大規模な魚道に驚かされた。これは、環境保全に熱心な地元地域の要望に応えたものであり、ダム周辺は、ウナギの名産地であるそうだ。 |
写真-4 魚道全景(現地案内板より)
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郡南ダムの魚道は、魚・カニ・ウナギなどを対象に考えられているとの事である。導流壁の高さに変化をつける等、水の量や流速を同じにしないことで、どんな魚にも対応できるようになっていた。また、魚道内に水草や小石を配置し、より自然の小川に近づけることで、魚が通過するだけでなく、休憩しやすい工夫もされていて、魚への愛情を感じた。周囲にも植生を施すなど、非常によく考えてつくられていることに、ただただ関心するばかりであった。 |
写真-5 魚道
写真-6 堤体から魚道への入口 |
また、魚だけでなく、世界的にも貴重種となっているツルの飛来地を確保するための湿地も整備されており、多数のツルが舞い込んで来た、というお話を伺った。 |
4.おわりに
今回の韓国ダム見学会は、私にとって念願であった初の海外ダム見学であり、大変貴重な経験をさせていただきました。また、参加者の皆様との交流は、今後の財産です。
このような機会を設けて下さいました実行委員の皆様、貴重なお時間を割いて説明をして下さったK-waterの皆様、また、見学会への参加に際しまして、お力添えをいただきました皆様、本報告作成へのご教授をいただきました皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。 |