行事報告
1.はじめに
第39回現地見学会が2013年10月3〜4日の2日間にわたり、開催された。この見学会は、信濃川水系梓川に建設された東京電力所管の安曇3ダム(奈川渡、稲核、水殿)および上高地にある大正池を調整池とする霞沢発電所を見学し、アーチダムの維持管理、今後想定される課題と対応、および堆砂対策の現状についての学習を目的に実施された。
本稿は、1日目に見学した大正池を調整池とする霞沢発電所と毎年土砂浚渫を実施している大正池の概要について報告する。
2.霞沢発電所の概要
(1)発電所概要
霞沢発電所は、長野県松本市安曇に位置し、1928年11月に運転を開始した水力発電所である。発電出力は、最大使用水量10.57m3/s、有効落差453.65mを利用して、最大39,000kWの発電が可能である。
(2)見学概要
山裾に立てかけたような有効落差453.65mの2本の長い水圧鉄管は、迫力があるとともに建設当時の大変さを感じることができた。
また、発電所急停止時に使用される余水路出口を発電所上流から放水口の位置に変更する工事が施工されており、公衆災害防止に配慮した対策が行われていた。
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写真―1 霞沢発電所 |
写真―2 霞沢発電所内 |
3.大正池の概要
(1)大正池の概要
大正池は、1915年に焼岳が大噴火をおこし、その際に噴出した多量の泥流により梓川がせき止められてできた池である。大正池は霞沢発電所の調整池として使用されているが、上流からの土砂流入のため1977年以降、毎年土砂浚渫を行っている。
(2)浚渫工事の概要
大正池容量は1928年当初約710,000m3であったが、1976年には約80,000m3まで減少したため、1977年以降、毎年、年堆砂量と同等の約20,000m3の浚渫工事を実施している。
大正池は観光地ともなっているため観光シーズンを避け11月〜12月上旬に工事を実施している。土砂浚渫は浚渫船にて行い、濁水が発生しないよう送水管にて沈殿池へ放水し、上水を大正池内にある霞沢発電所取水口へ排水する工法を選定し、環境維持を考慮しているとのことであった。
また、大正池浚渫工事に関わる課題として、近傍に土砂置場が無く、遠隔地までの土砂運搬により工事費用の増大が懸念されている。そのため、工事費用削減に向け、堆積土砂の有効活用や河川還元といった方策の検討を行っているとのことであったが、実現にあたり、今後の課題の多さを実感した。
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写真―3 大正池 |
写真―4 大正池堰堤 |
4.おわりに
霞沢発電所では、50Hzと60Hzを切替可能な発電機を有しており、また、発電所周辺には中部電力および北陸電力の送変電設備が立地されているなど、北海道電力管内ではなかなか見ることが出来ない光景を見ることができ、大変有意義なものとなった。また、大正池浚渫工事については、施工期間外であったため、実際の施工状況を見ることが出来なかったが、浚渫工事にあたり苦慮している点や今後の方策等説明していただき、同じ電力会社社員として共感することが出来た。
最後にお忙しい中、見学会の案内をしていただいた東京電力株式会社松本電力所ならびに見学会を企画していただいた現地見学会小委員会の皆様に厚くお礼申し上げます。
[北海道電力株式会社 岩淵 達也]
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