一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

立野ダム、白水堰堤、大分川ダム見学記

 

1.はじめに
 見学会1日目は熊本駅または熊本空港に集合して、立野ダム建設予定地、白水堰堤、大分川ダムを見学しました。以下に、詳細を報告します。
本稿は、1日目に見学した大正池を調整池とする霞沢発電所と毎年土砂浚渫を実施している大正池の概要について報告する。

2.立野ダム
 立野ダムは、熊本県白川流域の洪水被害を防ぐことを目的とした洪水調節専用ダムです。
熊本県にそびえる阿蘇山周辺に降った雨は、山の南側を流れる白川と北側を流れる黒川が阿蘇山の西側で合流し、熊本市を通って熊本港へと流れます。この白川流域は中流部の河床勾配が急なことから阿蘇地方に降った雨が下流部に向かって一気に流れていく特性があります。さらに、熊本市街において白川は天井川になっており、洪水時の水位は周辺の地盤より高い位置を流れるため、一度氾濫すると大きな洪水被害が発生する条件となっています。近年では平成24年7月に家屋の全半壊183戸、浸水家屋2800戸の洪水被害がありました。
このため、白川と黒川の合流地点より下流に立野ダムの建設が進められています。立野ダムの大きな特徴は、ゲート操作のない自然調節方式のダムということです。現在の河床とほぼ同じ高さに放流孔(幅約5m×高さ約5m、3門)を設けることで、普段はダムに水を貯めずに、普段の川と同じ状態となります。しかし一度大雨が降り、上流からの水の量が増えると、一時的に水を貯めて洪水を防ぎます。これにより、洪水流量の低減と洪水ピーク時間を遅らせることができ、被害の防止または低減および避難時間の確保が期待できます。
立野ダム建設予定地は阿蘇山の噴火による火山岩類で形成されています。地質調査や岩盤試験などによって十分な強度を有していることから、曲線重力式コンクリートダムとして計画されています。
これから工事に取り掛かる現場を見学し、今後の変化について想像しながら、また訪れてみたいと思いました。

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写真-1 立野ダム建設予定地

3.白水堰堤
白水堰堤は大分県竹田市と豊後大野市緒方町を流れる富士緒井路の水量不足を解消するために1938年(昭和13年)に農業向けの水利施設として完成しました。
白水堰堤建設から遡ること71年前1867年(慶応3年)の大干ばつをきっかけとして、大野川から水をひいて灌漑用水路(富士緒井路)が完成したのが1914年(大正3年)。豊富な水は周辺の土地に豊かな恵みをもたらしましたが、1924年(大正13年)に取水をめぐる争いからお小野側の上流に大谷貯水池の築造が計画され、更なる水量不足の対策として白水堰堤の築造が計画されました。
白水堰堤建設予定地は阿蘇溶岩からなり、多量の火山灰を含んだ脆い土壌だったため、難工事となったそうです。設計にあたった大分県土木技手の小野安夫氏は、軟弱な地盤に対して水圧をかけない構造にするため、壁面を滑らかな曲線とし、左岸部には半円状の小滝を階段状に幾重にも重ねることで水圧を分散し、更に堰堤全体の表面に目の粗い切石を用いて流れる水を水泡状にすることで減勢するという工夫を凝らしたそうです。
水は真っ白な泡となって堤を乗り越えて流れ、左右両岸の異なる流れはとても美しく、景観と建設背景とが相まって、今なお訪れる人を魅了し続けていることを容易に理解することができました。また、建設後76年を経た今もほぼ当時の姿で活躍している様からは先人の巧みな土木技術と人々の生活への想いを感じることができました。

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写真-2 白水堰堤遠景

4.大分川ダム
大分川ダムは、洪水調節、河川環境の保全、水道用水の確保を目的とした多目的ダムです。 大分川流域では台風や大雨による洪水被害と共に、下流域の人口の増加等による水道用水の需要が伸びており、平成23年にも大分市水道局が渇水対策本部を設置しています。さらにダムによる安定した水の供給により、河川の環境安定による保全も期待できます。 平成20年11月に仮排水路トンネルが完成し、平成25年11月に七瀬川の流水の転流が行われ、平成26年2月にダム本体建設工事の起工式が執り行われました。現在は主にダム堤体の基礎掘削工事を施工しているところです。 当日は、工事事務所での説明の後、ダム建設予定地と原石山を一望できる所へ案内していただきました。さらに、基礎掘削現場に案内いただき、大型重機によって掘削が行われている現場を間近で見学させていただくことができました。自然を相手にする現場の厳しさとそれによってもたらされる生活の豊かさに思いをはせました。

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写真-3 大分川ダム建設現場

5.おわりに
見学会に参加させていただき、貴重な現場と歴史的な堰堤を見ることができ、大変よい経験をさせていただきました。関係者のみな様に心から御礼申し上げます。

 [柴崎 佳苗]

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