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ダム現地見学会報告(雨竜第一、新桂沢ダム)


㈱開発設計コンサルタント 土木事業本部 水力・河川部
田嶋蓮

1.はじめに
 今般、2019年10月17日~18日の2日間実施された「第45回ダム現地見学会」(一般社団法人日本大ダム会議・一般社団法人ダム工学会共催)に参加した。本見学会は、近年重要とされている「ダム再生」をテーマに、雨竜川第一ダムおよび新桂沢ダムを見学するものであった。本稿では、雨竜第1ダムおよび新桂沢ダムの見学について報告する。

2.雨竜第一ダム
 雨竜川第1ダムは、朱鞠内道立自然公園内に位置し、雨竜発電所の貯水池として設けられた北海道電力㈱が管理する発電専用ダムである。雨竜第1ダムの諸元を表-1に示す。

表-1 雨竜第一ダム諸元

 雨竜第1ダム貯水池(朱鞠内湖)の脇には、連絡水路で結ばれた雨竜第2ダム貯水池(宇津内湖)があり、第1ダム貯水池へ水を供給している。2貯水池合わせた有効貯水容量は、1.83億m3であり、これは建設当時「東洋一の貯水量」と呼ばれていた。調査時、雨竜川上流広域は未開の原生林だったにも関わらず、地形に着目しダムサイトを選定できたことに驚いた。
 雨竜川ダム再生事業は、戦後最大規模の降雨により発生する洪水流量流下時の被害軽減を図ることを目標とする国交省の事業である。雨竜第1ダム、第2ダムにおいては、利水容量のうち予備放流水位以上の容量を洪水調節容量に振り替えるとともに、雨竜第2ダムの嵩上と合わせて約2,500万m3の洪水調節容量を確保する計画である。

実際に見学してみての雨竜第1ダムは、湖に浮かぶ島々や原生林といった自然景観(写真-1)、釣りやキャンプといったレジャーなど、地域の観光資源としての印象的を強く受けた。治水・利水だけではない、地域に寄り添うダムの素晴らしさが感じられた。


 
写真-1 朱鞠内湖(ダム天端より望む)

 話は少しそれてしまうが、シュマリナイ(朱鞠内)は、アイヌ語で狐の川という意味らしい。シュマリは狐、ナイは川を指し、当時の周辺には多くの狐が生息していたそうだ。朱鞠内は当て字ということだが素晴らしいネーミングセンスである。また、これを書くにあたって、他にもアイヌ語由来の地名について調べてみた。するとわかったのが、ベツ(別)も川という意味だそうだ。ベツとナイの違いは何なのだろうか。これについては諸説あったため、気になった方はインターネットで調べてほしい。

3.新桂沢ダム
 新桂沢ダムは、幾春別川総合開発事業の一環で、昭和32年に完成した桂沢ダムを嵩上げして建設が進められている、国交省北海道開発局が管理する多目的ダムである。新桂沢ダムの諸元を表-2に示す。
 
表-2 新桂沢ダム諸元
 幾春別川総合開発事業は、流域における治水・利水の機能向上を目的とした事業である。新桂沢ダムでは、既往の桂沢ダムを約1.2倍に嵩上げすることで、総貯水容量を1.6倍に増大させて機能向上を図っている。
 見学に先立って実際に設計・施工に携わった設計者・施工者の方から実務にあたって苦労した点などの説明を受け、さらに見学団団長のダム技術センター元顧問 藤澤様より総括としてダム設計・再生に関するご講演を賜った。
 設計・施工の説明は、課題に対してどのような考えで対策を行ったかといった内容であった。既設ダムを運用しつつ施工するという複雑な現場条件下で、安全かつ確実に工事を遂行するために、完成までのプロセスを明確にして、課題を抽出し対策していることが説明から理解できた。
 講演の中では、「ダムの再開発は前例がなく、一から全て考えねばならない。」という言葉が印象に残った。新桂沢ダムもまた、国直轄のダムとして全国初となる、同軸嵩上方式を採用している。この同軸嵩上方式を採用するに至るにも、かなりの経験や知見が必要であることは容易に想像できた。また、「設計」「施工計画」「計画(機能)」「管理(運用)」に至っても同様で、当人の力量が試される内容となっていることは理解できた。ダム再開発事業を行う人材は、ダム新設の設計・施工計画に携わった経験があることが最低条件である。と説明の中にあったのも納得できた。
 私事になるが、現職に配属される前は九州で保守業務に携わっており、鶴田ダム再開発事業も間近に見る機会があった。見学会で新桂沢ダム(写真-2)を見た時も思ったが、やはり大きい現場は格好いい。私自身、シビルエンジニアになったからには、形になるモノをつくりたいという強い思いがある。今回の見学会では、自身の思いを成しえるためには、今後どのような経験を積めばよいか、改めて確認することができた。

 
写真-2 見学時の状況(左岸下流より望む)

4.おわりに

 今後の重要テーマであるダム再生について、既設ダムの大規模改修工事の現場従事者の声を直接聞き、貴重な施工現場を見学させていただき、大変勉強になりました。特に設計と施工計画を一体とする考え方は今後の業務にも参考になるものでした。
 最後に、お忙しい中ご対応いただいた北海道開発局、北海道電力㈱の関係者の皆様、見学会を主催していただいた(一社)日本大ダム会議、(一社)ダム工学会の関係者の皆様に心から御礼申し上げます。

 
ダム現地見学会報告(雨竜第一、新桂沢ダム)


 

 
   
 
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