一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

第47回ダム現地見学会報告書

北陸電力梶@馬場 蓮温

 

1.はじめに
 「第47回ダム現地見学会」が(一社)日本大ダム会議・(一社)ダム工学会共催で,2024年11月6日(水)〜11月7日(木)の2日間にわたり開催された。今回の見学会は,1日目に国土交通省中部地方整備局が進める天竜川ダム再編事業について講義を受け,2日目には佐久間ダムおよび船明ダムの運用・管理状況を見学させていただいた。
 本稿では,上記の見学会の内容について報告する。

2.天竜川ダム再編事業
 天竜川は八ヶ岳を源流とした大小30あまりの河川が諏訪湖に流水を集めたあと,天竜川として長野県南部,愛知県東部,静岡県西部を流下し太平洋に注ぐ,幹川流路延長約213q,流域面積5,090q2の1級河川である。

 近年,頻発する異常気象に対応するため,既設ダムの有効活用が全国で進められており,天竜川においても佐久間ダムを有効活用することで洪水調節機能を確保し,さらに佐久間ダムの恒久的な堆砂対策を実施することで,貯水池の保全および海岸浸食の抑制等を図るための天竜川ダム再編事業を計画している。

 天竜川流域の課題として,過去より大きな洪水被害を受けており,近年も河岸の決壊や家屋の浸水等が生じている。再編事業として,放流設備を増設し,洪水調節容量5,400万m3を確保することにより,下流河川への放流量を低減し,浸水被害を解消する計画である。放流設備の増設方法として,@堤体削孔放流管増設,A堤頂放流設備(オリフィス),Bトンネル式洪水吐きの3つの案にて比較検討を行い,設計を進めている段階である。

 また,天竜川においては大量の土砂が流出するが,その大半がダム貯水池内に堆積し,山から海までの土砂移動が妨げられている。佐久間ダムにおいても,貯水池内に土砂が堆積しており,貯水容量の減少が発生している。再編事業として,ベトコンベヤトンネルを建設し,貯水池内の堆積土砂を浚渫し,一部湖外への搬出と合わせ下流河川へ土砂を還元する方法を検討している。

 1日目の夕方には天竜川河口部の現地見学を行った。天竜川河口においては,土砂の流出がないことにより過去から海岸汀線が約100m後退しており,生物環境への影響および防潮機能の低下が懸念されている。(写真−1)。そのため,天竜川流域全体としての総合的な河川整備計画を策定し,中長期的な土砂管理を実施している。

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写真−1 天竜川河口部

3.佐久間ダム現場見学
 2日目には佐久間ダムの現地見学を行った。建設時の記録や現在の保守管理状況の概要説明を受けた。佐久間ダムおよび佐久間発電所の諸元を表−1,表−2に示す。

表―1 佐久間ダム諸元
位置     【右岸】愛知県北設楽郡豊根村
    【左岸】静岡県浜松市
竣工 1956年
ダム型式 コンクリート重力式
堤高 155.5m
堤頂長 293.5m
堤体積 1,120千m3
当初総貯水容量 326,848千m3
集水面積 4,157q

 

 表―2 佐久間発電所諸元
運転開始 1956年4月
最大出力 350,000kW
最大使用水量 306m3/s
最大有効落差 133.49m

 現地見学ではダム堤体上よりダム湖内および取水塔を,ダム下流側よりダム全景を確認した(写真−2)。

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写真―2 佐久間ダム全景(下流より望む)

 佐久間ダムは非常に狭隘な地形に位置しており,そのような場所に大規模なダムを建設した当時の技術力に驚いた。また,当時の日本では初めての大型機械化施工によるダム建設が行われたことから,このプロジェクトが土木技術の発展に大いに寄与したことがうかがえる。

4. おわりに
 本見学会を通じて,天竜川流域の課題から今後の再編事業および佐久間ダムの保守運用状況について学ぶことができ,技術者として非常に知見を広めることができた見学会であった。
 最後に,お忙しい中ご対応いただいた国土交通省中部地方整備局および電源開発株式会社中部支店の皆様ならびに見学会を企画していただいたダム工学会および日本大ダム会議の関係者の皆様に対し,厚く御礼申し上げます。

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