一般社団法人ダム工学会
 
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行事報告

題名:「現地見学会全般にわたっての感想」

日本工営(株) ダム発電部 富田 志歩

1.はじめに
 ダム工学会主催の第47回ダム現地見学会が2024年11月6日〜7日の2日間にわたって開催された。
 今回の見学会は、ダムの総合土砂管理計画、再開発についての知識を深めることを目的に、天竜川における2ダム(佐久間ダム、船明ダム)を見学した。
 1日目の午後には浜松河川国道事務所の栗山康弘副所長により天竜川における総合土砂管理の取り組みについて、天竜川ダム再編工事事務所の山路哲副所長により天竜川ダム再編事業について、また電源開発(株)の奥村裕史様より天竜川における水力開発、保守、再開発についてご講演いただいた。
 また総合土砂管理に含まれる養浜事業が行われている天竜川右岸河口部を見学した。 本記事は、これらについて報告するものである。

2.講演会
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図-1 浜松河川国道事務所 栗山副所長のご講演

 天竜川水系では上流のダムの堆砂対策から下流の海岸の養浜事業まで広域で事業があり、また電力ダムを容量配分することが合意された数少ない事例である。
総合土砂管理計画や再編事業では国や電力会社など異なる事業者が参画するため、一方の効用が他方の効用につながるとは限らず、双方が納得できるように貯水池容量配分や堆砂対策など総合的に事業を進める必要があると感じた。
 天竜川水系の総合土砂管理計画や再編事業の合意形成に至るまでのプロセスは、他の水系の指標になるものであり、またコンサルタントとして水系ごとの特性や課題に応じて、事業者間の調整や解決策の検討にあたっていきたいと感じた。

3.天竜川河口右岸部
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図-2 遠州灘のCSG堰堤

 浜松市の遠州灘には、耐震性や浸透耐性などの特性からCSGによる防潮堤が設けられている。この防潮堤と馬込川水門により宅地浸水面積を約8割低減することができる。
 また天竜川下流河道は河川改修事業で13万m3毎年掘削する計画であり、一部を五島海岸の養浜事業に充てている。しかしこの海岸はウミガメの産卵場所であり、粒径の基準も厳しいことから、それ以外の土砂を置き土することなどを検討している。

4.佐久間ダム
 佐久間ダムは一級河川天竜川本流中流部に位置し、戦後復興に伴う電力需要ひっ迫を背景に、佐久間発電所の貯水池として1956年に電源開発(株)によって建設された。佐久間ダムの諸元を表-1に示す。

表―1 佐久間ダム
位置 静岡県浜松市天竜区佐久間町と
愛知県北設楽郡豊根村に跨る
竣工 1956年(昭和31年)
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 155.5m
堤頂長 293.5m
堤体積 1,120千m3
当初総貯水容量 326,848千m3

 日本第9位の高さと第9位の総貯水容量を有するダムであり、堤体積に対して貯水容量が大きいことが特徴である。狭隘な地形である分、建設当時は施工交通施設が未整備であり、台風などに見舞われながらも着工からわずか3年という短い期間で完成された。
 実際に見学して、堤高に対する堤体の薄さに驚くとともに、難しい地形で当時最大級のダムを建設した技術力の高さに感動した。

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図-3 佐久間ダム

 保守管理について、揚圧力は年に4回測定されており、当日は堤体に対して鉛直方向にも監査廊があるクロスギャラリーを通り、揚圧力計測機器を見学することができた。
 佐久間発電所の年間発生電力量は1400GWhで一般水力としては日本一であり、50Hzと60Hz両方の周波数での発電が可能であることが特徴である。第一発電所から第二発電所へは約50cmの水頭差を利用してサイフォンの原理によって導水されている。

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図-4 第一発電所から対岸の第二発電所をのぞむ

5.船明ダム
 船明ダムは天竜川の再下流に位置するダムであり、世界最大級のローラーゲートが特徴である。船明ダムの諸元を表-2に示す。

表―2 船明ダム
位置 静岡県浜松市天竜区船明
竣工 1977年
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 24.5m
堤頂長 221.0m
堤体積 54千m3
当初総貯水容量 10,900千m3

 2015年から2018年の間に設置された洗堀対策工のブロックや、右岸側からの放流による放流水の旋回の様子を見ることが出来た。一部堤体のスカートに破損している部分も見られたが修復計画中である。
 また船明ダムにはアユやウナギなどの水産資源の保護育成を目的として、総延長280mの階段式魚道が設けられている。定期的に通過魚類の種類や量が調査されている。

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図-5 船明ダム

6.おわりに
 当見学会の現場案内・質疑応答への対応をして頂いた佐久間ダム管理事務所、船明ダム管理事務所、総合土砂管理計画について講演いただいた浜松河川国道事務所の栗山様、ダム再編事業について講演いただいた天竜川ダム再編工事事務所の山路様、天竜川における水力開発について講演いただいた電源開発(株)の奥村様、ならびに見学会を企画して頂いたダム工学会現地見学会小委員会の皆様に対し厚くお礼申上げます。

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