一般社団法人ダム工学会
 
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第19回現地見学会 九谷ダム見学記

 

 ダム工学会主催の第19回ダム現地見学会が11月1日、2日にかけて北陸の九谷ダム、永平寺川ダム、桝谷ダムで開催されました。竹林征三 富士常葉大学環境防災学部教授をコーディネータとし、総勢、約31名が本見学会に参加しました。本見学会は2日間の予定のうち、初日が九谷ダム、第2日目が永平寺川ダム、桝谷ダムと分けて実施されましたが、そのうちの第1日目、九谷ダムの見学記を以下に紹介します。

 

ダ ム の 諸 元

型   式 重力式コンクリートダム
地   質 安山岩
堤   高 75.8m
堤 頂 長 280.0m
堤 体 積 364,000m3
集 水 面 積 71.0km2
総貯水容量 24,900,000m3
有効貯水容量 22,400,000m3

 

 

 我々参加者はそれぞれ陸路、空路を利用してJR北陸本線、加賀温泉駅に13:00に集合、そこから2台のバスに分乗し、早速、九谷ダムへ向かいました。九谷ダムは、石川県が二級河川大聖寺川の上流、古九谷の里に建設中の曲線重力式コンクリートダムであり、大聖寺川総合開発計画の一環をなすもので、洪水調節、水道用水の供給、および発電を目的とした多目的ダムです。ダム本体はRCD工法により施工中で、本年10月18日には定礎式を挙行し、現在の打設進捗率は約30%とこれから最盛期に入ろうとしているところです。

 九谷ダムでまず何より特筆すべきは、半径400mで堤体が円弧を描いているということと思います。この円弧は地質的な条件に基づいたもので、これに景観上の配慮が加わったものとのことでした。この点について竹林コーディネータは「機能を備えれば美は備わる」いったコメントをされ、私もダム工事に従事する技術者として、構造物の美しさに対する認識、景観に対する配慮は非常に重要であることをあたらめて痛感しました。また、施工面でも堤体がなめらかな曲線を描くように、上下流面のスライドフォームの改造等、随所に工夫を凝らされている様子でした。

 一方、原石山では、当初、岩掘削の約60〜90%を採取するという計画であったにもかかわらず、採取量は、実績として予定骨材採取量の半分程度にとどまっているとのことでした。私も以前勤務していたダム現場において計画掘削量では、原石の供給が不足することとなり、掘削計画盤をさげた経験があります。最近のダム建設において良質な原石山を確保するのが困難な状況では、さらに同様な事例が増えると思われます。そのための研究開発も進んでいるようですが、今後のダム建設においては、良質な骨材の確保のほかに低品質骨材等、骨材の有効利用が大きな課題となってくると感じました。

 また、九谷ダムでは合理化施工の一環としてプレキャスト通廊と高流動コンクリートの採用や、リサイクルプラントを設けて骨材プラントから発生する脱水ケーキを有効利用するなど、ダム工事における新しい技術への取り組みも盛んに行われていました。

 見学会当日は、あいにく雨のため堤体コンクリートは打設されておらず、打設状況が見学できなかったのは残念でしたが、九谷ダム建設の経緯から現場での施工技術や問題点に対する取り組みを紹介していただき、大変勉強になりました。また、竹林コーディネータからは、風土工学に関する講義があり、そのなかでもダム建設に携わる技術者として関連の深いもの、「ゲート五訓」、「土工五訓」、「堰堤づくり五訓」を紹介していただきました。内容は極めて基本的かつ重要なことですが、ダム建設に従事する一技術者として忘れてはならないことと感じました。

 最後になりましたが、石川県九谷ダム建設事務所、JVの関係者各位、竹林コーディネータはじめ、当見学会を企画、案内いただきましたダム現地見学会小委員会の皆様に深くお礼を申し上げます。

[日本国土開発(株) 田中正和]
 

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