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会長挨拶
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平成26年度
一般社団法人ダム工学会 会長
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岡本 政明 (おかもと まさあき)
株式会社ニュージェック 特別顧問
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会長あいさつ
この度、理事会において一般社団法人ダム工学会の第21代会長に選任いただき、身に余る光栄と存じますと共にその責任の重さを痛感しております。
ダムの世界に身を置くものにとって、失われた3年数ヶ月。この長いトンネルを抜け出ると、突如目もくらむほどの明るい日差しに各職域にいらっしゃる会員の皆様方は、ある種の戸惑いを覚えているのではないかと思います。
ダム工学会は、このような時代にあって、各職域の会員が相互に協働して、ダムの計画、設計、建設、維持管理に持てる力を存分に発揮していかなければなりません。また、いかに担い手を確保・育成していくかが喫緊の課題であります。
これまで、ダム工学会では、調査研究委員会が中心になって様々な研究活動を行い、数々の目覚ましい成果をあげて参りました。一昨年に発刊された『総説 岩盤の地質調査と評価〜現場技術者必携〜ボーリング調査技術の体系と展開』は、岩盤の地質調査、ダムの地質調査、堤体材料調査、斜面の地質調査、及びボーリングの調査技術と保管・保存についてきめ細かく述べられており、まさに現場技術者必携の書といえます。また、官学民連携によりダム工学の発展普及を図る近畿・中部ブロック会員の専門家チーム20人の共著『ダムの科学』は、一般の中高生を対象に、わかりやすくダム工学全般を解説した書で、4月末現在の実売冊数は、8,250冊と聞いております。さらに、最近では「ダムの変形計測に関するGPSマニュアル」がとりまとめられ、近々印刷される運びとなっております。
これらの成果は様々な職域の会員からなるダム工学会ならではの成果であり、ダム工学の発展に大きく寄与するものであり、研究に携わられた会員の方々のご努力に対し、心より感謝申し上げます。
ダム工学会は、これからも、研究活動等を継続していくは勿論ですが、今年度は、特に次の3点に力を入れていきたいと考えております。
■1つ目は、大学研究者との共同研究です。
昨年、前大町会長が先頭に立って検討を進められてきましたが、今年度は、大学との共同研究について具体に行動を起こすことを考えております。ダムの設計・建設に関する課題を抽出し、研究テーマとして取り組んでいただける大学研究者を募り、研究する場としてのダム建設現場やデータを用意し、共同研究者として建設会社・コンサルタントを紹介するというものです。こうした活動によってダム工学会と大学との間に密接な関係が築きあげられれば、担い手の確保にも繋がっていくものと期待されます。
そのため、調査研究委員会に「学民交流検討部会」(仮称)を設置し、検討を進めたいと思います。
■2つ目は、戦略的な広報活動です。
数年前「コンクリートから人へ」とか「できるだけダムに頼らない治水」といったキャッチコピーや、『ダムが国を滅ぼす』という本も出版され、土木全体やダムに対して、ネガティブキャンペーンが張られました。これらの論調の中には根拠の曖昧なものや、不正確な情報に基づいたものがありますが、正しい認識を持ってもらうための努力が不足していたのではないかとの反省もあります。土木学会では、昨年『土木広報アクションプラン〜「伝える」から「伝わる」へ』を取り纏められました。その中で、土木界における広報の成功要因・失敗要因をまとめた部分があり、市民意識の部分で『・ダム分野では「脱ダム宣言」を契機に、議論の前提となる詳細な情報をWEBサイトから提供。・ダムマニアの活動をサポート』と、成功要因として紹介されています。
これまで、ダム工学会では活性化推進小委員会が中心となって、一般の方々を対象にしたwith Dam☆Nihgt の開催や、「ダム何でも相談室」、「ダムe図鑑」の企画運営、学生を対象とした若手の会の開催などを行い、一定の成果を上げてきたと思います。中でも、昨年度開催された「ダムを知るための若手技術者勉強会」を契機に、学生会員の大幅な増を記録するなど、喜ばしい結果を残しました。
今後、できるならば、ダム関係の諸団体と連携して、一丸となって一般の方々へのダムの役割の正しい理解を促す活動を展開していきたいと考えております。
■3つ目は、中長期の学会のあり方です。
来年、平成27年にはダム工学会は、創立25周年を迎えます。これまで、10周年、15周年、20周年には、記念行事を行ってきましたので、25周年も有意義な企画を考えたいと思います。また、4半世紀を経過しようとする今、これからの学会のあり方、進むべき方向を検討すべき時ではないかと思います。現行の規定では、会長の任期は、1年と定められておりますが、年度にまたがる行動をするには短い感があります。任期を2年とすることも考えられますが、たとえば土木学会のように、前年度に次期会長を定め、会長を補佐し翌年会長になるという方法もあろうかと思います。こうした学会のあり方などについて、会長を経験された方々で構成される顧問会でのお知恵をいただきながら検討して参りたいと考えております。
以上申しました3点は、ダム工学会が安定的に継続していくための、担い手の確保とも密接に関連しております。ダム工学会の発展のため微力ではありますが、こうした課題に全力で取り組んでいきたいと思っておりますので、会員の皆様の格別のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げ、会長就任の挨拶といたします。
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