発足趣意書
ダム工学会発足趣意書
ダムは、治水・利水に亘り、人間の社会的・経済的活動を支える重要な社会基盤施設であるとともに、美しい水辺環境を創出し、人々の心に安らぎを与えるという機能を兼ね備えている。ダムの歴史は、古く紀元前2900年頃、第一エジプト王朝の創始者であるMenes王がナイル川にダムを築造した時をもって始まりとされている。以来、幾多のダムが築造されてきたが、特に今世紀に入ってからの人間活動の飛躍的拡大の中で、地形・地質面で困難なサイトにおいても多くのダムが築造されるようになってきた。これに伴って、ダムの設計・施工・管理についての技術の発展が必要とされた。ダム工学は、このような諸問題に対処するために必要なダム建設の諸過程を考察し、ダム技術の発展を期して形成された学問である。これをより拡大、深化させ、ダムの設計・施工・管理のあり方を探るダム工学研究の育成、発展が熱望されている。
従来、ダム工学は、総合工学と呼ばれてきたように、関係する各学問分野の総合技術として研究が進められてきた。すなわち、応用力学、構造工学、鋼構造学、耐震工学、水理学、水文学、河川工学、発電水力学、衛生工学、土質工学、基礎工学、岩盤力学、計画工学、土木材料学、コンクリート工学、農業土木学、応用地質学、機械工学、電気通信工学等の総合工学として発展してきたわけである。しかしながら、最近、個々の分野での研究は著しく進歩し、それらの研究成果をダム工学に十分に取り入れきれない事態も生じてきている。さらに、ダム工学が、現在直面している数多くの課題は、当然のことながら関係する一研究分野では対応が難しい学際領域に属するものである。これらの研究のより効率的な推進及び総合化を図るためには、各分野の成果を従来にもまして糾合し、ダム工学研究を取り扱う共通の場の設定が必要である。これにより、極めて多様な要素が複合するダム技術を有機的に結合する新しい学問体系をより一層発展・充実させなければならない。
そこで、ここに、前述の各学問分野で発展してきた体系を縦糸とし、横断的な研究組織として「ダム工学研究会」の創設を企画する。
なお、平成5年9月10日付けで、日本学術会議法に基づく学術研究団体に認められ、平成6年5月10日の通常総会をもって、本会の名称をダム工学会と改めた。
この新しい学会は、国内における関連学協会はもとより、国際的な学協会及び研究機構との連携を図り、国際的な研究交流と協力においても先導的役割を果たすとともに、学者、研究者のみならず官界、民間の技術者にも広く参加・協力を求め、技術現場からの研究課題の発掘と研究成果の社会への速やかな還元を目指す。
以上の趣旨に基づき、本学会は、
1.学際的かつ総合的研究を重視する。
2.新技術の開発・応用など、創造的、先導的な研究を重視する。
3.学際問題への適用を図るために、学、官、民の研究者、技術者の交流を促進する。
4.国際的な交流と協力を積極的に図る。
を4つの柱として、ダム工学研究の向上発達を図ることを目的とする。
具体的には、次のような活動を予定している。
1.学術講演会、シンポジウム、現地見学会などの実施
2.学会誌「ダム工学」の発行
3.ダム工学に関連する国内外の研究活動、会議等に関する情報の収集と伝達
4.特定研究テーマに関する研究部会活動
(いくつかの研究部会を設け、横断的研究ならびに学、官、民の交流を推進する。)
|