会長挨拶
|
|
平成21年度 ダム工学会 会長
|
|
阪田 憲次 (さかた けんじ)
岡山大学 名誉教授
|
会長あいさつ
この度、通常総会におきまして、ダム工学会の第16代会長に推挙いただき、身に余る光栄と存じますとともに、その重大な使命と責任を痛感し、緊張いたしております。
ダム工学会は、平成2年9月のダム工学研究会の発足をその創めと定めています。したがいまして、平成22年度、すなわち、来年度には、創立20周年を迎えることになります。また、ダム工学会は、現在の任意団体から、一般社団法人への移行を予定しており、ダム工学会創立20周年は、新たな体制の下における出発の年になります。
さて、ダムを取り巻く環境は、きわめて厳しいものであります。マスメディアにおいては、ダム建設は無駄な公共事業であると論評され、それに対する反論は全くありません。ダム工学会およびそこに所属するわれわれの営為が、いつも善であるとは言えないことはよく承知しています。しかし、税金の無駄遣いの代表のように言われる謂れはないと思います。
2007年に開催されたIPCC総会において承認された統合報告書によれば、地球温暖化は極めて深刻な状況にあることがうかがわれます。ダム事業および土木事業は、地球温暖化の原因および解決と深い係わりがあり、それに対する緩和策および適応策において、社会に貢献すべきでありますし、その力量を備えていると確信します。とくに、地球温暖化に起因する異常気象への適応策としてのダム建設および再開発は、国民の安全・安心を担保するために成すべき喫緊の課題であると思います。また、地球温暖化によって、北極圏の氷や氷河の融解および降雪量の減少が、21世紀における世界の深刻な水問題に拍車をかけています。水資源の確保、防災の両面から、ダムの必要性は明らかであります。また、国際協力の一環として、わが国の最先端のダム技術を、世界の水問題解決のために活かすべきときでもあります。
ダム工学は、土木工学のほとんどすべての分野に関係するのみならず、環境学、景観工学、生物学等をも含む、総合工学であります。また、会員も、官、民、学で構成されております。会員数は、現在、正会員1162名、学生会員3名、賛助会員54社であり、年々少しずつ減少しております。会員の、分野別および年齢別バランスにも、問題があります。すなわち、官および学の会員が少ないこと、若い世代の会員が、きわめて少ないことが問題です。原因の究明と具体的な増強策を講じなければなりません。退会の理由として学会員であることにメリットがないと言われることがあります。学会員のメリットとは、本来、ダム工学の振興、発展のために、会員として貢献するという大きな目的に誇りを持つことであると思われます。とは言うものの、会員が学会員であることにメリットを感じるためには、学会活動の充実が必須であると思います。
学会活動として、5つの研究部会、学会誌「ダム工学」の発刊、研究発表会、講習会および現地見学会等、多様な事業を行っています。最近、地域活動として、その地域のダムの見学会および講演会の開催、若手の会の活動としての見学会、語り部の会等が、活発に行われています。これらの諸活動を有機的に結びつけることによって、学会活動の活性化を図る必要があると思います。
ダム工学会の発展の為に微力を尽くしたいと存じます。会員の皆様方の格別のご支援、ご協力をお願い申し上げ、会長就任挨拶と致します。
■歴代会長挨拶
|